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「受験英語」の位置

今回は英語学習全体を俯瞰し、いわゆる「受験英語」がそのなかでどういう位置づけなのかを明らかにします。

外国語の学習では、文法や語彙などの言語知識を意識的に学ぶことと、実際に目標言語(例えば英語)を使う練習をすることのふたつが必要です。最近は後者だけが重視される傾向がありますが、特に日本語を母語とする人が英語を学ぶ場合のように、母語からの隔たりが大きい言語を学ぶ場合はこのふたつを並行させていくことが必要です。フランス語を母語とする人が英語を学ぶ場合とは違うのです。受験英語というのは、このうち前者の言語知識を意識的に学ぶことを集中して行う機会と捉えることができます。

言語知識を意識的に学ぶときには一般的には徹底的な理解が求められます。そして母語と目標言語との違い、いわば距離感をつかむために「翻訳」を学習活動の中心に据えます。同時にこうして得た知識を実際に使っていけるようにするために「声出し」と「筆写」を重視します。これが私がnoteで提案している文レベル学習から文章レベル学習へといたる、数か月かけて行う「受験英語の基礎」です。

もともと英文和訳や和文英訳が大学入試で出題されることが多かったため、従来から訳読中心の受験勉強が広く行われています。意味を考えない訳読だけではあまり有意義な学習とは言えませんが、文法や語彙をしっかり学び、英文の意味を追求しながらその意味を適切な日本語で表現したり、日本語の文章を味読してその内容を過不足なく反映できるような英語表現を考えていく営みは英語の発想に迫っていく有効な学習法です。これによって自信を持って英語が使えるようになっていきます。

「コミュニケーション」の概念を狭く取って受験の英語をコミュニケーションのための英語の外に位置づけたり、手段と目的を混同して訳読式の学習の必要性を否定する動きがあります。いまの日本では受験勉強以外で翻訳式の学習をすることは通訳者や翻訳者になるための訓練を受けるのでもない限り多くはありません。ですから大学受験の時期を、日英語の比較対照を通じて英語のしくみを(そして日本語のしくみも)意識的に学ぶ貴重な機会として捉えて欲しいと思うのです。もちろん、持田も受験の時以外にもこうした学びが提供できるように努めてまいります。

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