題名読書感想文:05 国名を略するのもなかなか難題のようです
人は効率化を図ります。面倒くさがり屋と言えるかもしれません。とにかく、数々の効率化が図られて現在に至るわけです。
略語も効率化の一環として生まれたのだと私は勝手に思っています。何度も同じ単語をダラダラ書くのはだるい。でも、書かないといけない。じゃあ、略してしまおう。みんなに伝われば問題ない。きっとそんな感じで略語は生まれた。ウィキペディアの「略語」の項目では「類似する概念に、省略語(しょうりゃくご)・短縮語(たんしゅくご)がある」とあります。
ひょっとすると「略語」はもともと「省略語」だったのかもしれない。つまり、略語自体も略語、名が体を表しているかもしれないわけです。さすがです。
よく使う言葉ほど略語になるでしょうし、省略具合も半端なくなるのが自然です。その典型が国名です。例えば、「日本国とアメリカ合衆国」なんて何度も書いていられない。「日本とアメリカ」でもまだだるい、疲れる。そこで使われるようになったのが「日米」だと思われます。アメリカの漢字表記「亜米利加」から「米」を選抜したのは周知のとおりです。というか、亜米利加と書かねばならなかった時代は更に手間だったでしょう。そりゃあ、米にもしたくなります。
日常的によく使われる国名に、この極端な略語が使われます。具体的には近隣の国です。そして、近隣国には今でも漢字表記の国が多い。大韓民国はともかく、中華人民共和国や朝鮮民主主義人民共和国を何度も書いていてはあまりにもしんどい。キーボードでも結構な手間ですから、ペンで何度も書いた日には疲労の蓄積で手が使い物にならなくなるかもしれない。だから、韓国・中国・北朝鮮という略語があり、更に日本との関係を表す言葉として日韓・日中・日朝なんて略語が用いられるに至ったのでしょう。
世界には200近い国がございまして、どれも多かれ少なかれ日本と関係があるはずです。当然、日本との関係を表現する言葉は「日米」みたいな表記になる。しかし、多くは近隣諸国ほど使われない。だから、いざパッと見た時、どこの国なのか分からなくなるわけです。例えばこの本、「日モ関係の歴史、現状と展望」です。
「日モ」。相手国はカタカナのまま略されているため、日常ではなかなか見ない不思議な単語になっています。恐らく、モから始まる国なのでしょうけれども、調べたところモーリシャス、モーリタニア、モロッコ、モンゴルの4か国が該当します。書籍のサイトを確認したところ、モンゴルでした。
モンゴルには「蒙古」という漢字表記があり、「蒙」という略語も存在しています。恐らく、日本ではまだまだ馴染みの薄い表記だから「日蒙」では「何かそういう単語があるのか」と誤解されかねない。だから、「日モ」表記にし、副題の「21世紀東アジア新秩序の構築にむけて」でフォローしたのだと思います。モから始まる国でアジアに位置するのはモンゴルだけなので、副題を見れば「『モ』はモンゴルの『モ』か」と分かる仕組みです。
カタカナ国名のまま省略して「日」とくっつける。この方式を他の国名にも当てはめたらどんな感じになるのでしょう。簡単に調べてみました。まずは、こちらの一群です。
「都ファ」の略語でお馴染み、「都民ファースト」と似たような形の略語です。「日フィ」に関しては声に出して読むと予想以上にミッフィーです。ゆるキャラ誕生の日がグッと近づいてきた気がしますが、錯覚かもしれません。
ちなみに、それぞれの国名を感じで表記すると「牙買加」「惹爾日亜」「捷克」「在得」「突尼斯」「新西蘭」「斐濟」です。ただし、表記法が複数ある国がございます。いずれにしろ、仏教用語かはたまた三国志の武将みたいに見えます。
先ほど、日本の周辺には漢字表記の国が多いと書きましたけれども、漢字が混ざっている国でしたらまだまだあります。
「日赤」は日本赤十字社と表記が丸被りです。かと言って、「ギニア」単独の国名も存在する。日本と赤道ギニアの関係が今よりも更に接近した際には、「日米」みたいな表記をどうするのかマスコミ各社の会議室で議論が繰り広げられそうです。
「日東」ですと、有名どころでは日東工業株式会社が存在します。電気機器の会社で、1948年設立、2022年3月末日現在で売上高は連結で1327億3500万円、従業員数は連結で4120人です。日本と東ティモールの関係が更に熱くなると、日東工業の会議室でも議題に上がるかもしれません。
「日北」で検索すると「日北自動車工業」という、札幌市の会社がヒットしました。そもそも「日」自体がよく使われる文字ということもあり、企業名にも採用されやすいのかもしれません。
「日南」という企業名ももちろん存在します。
また、自治体名でもございます。宮崎県に存在する市ですね。
このような団体に、北マケドニア、南アフリカ、南スーダンが虎視眈々と知名度トップを狙ってる構図になっているわけですね。すいません、勢いで「狙ってる」とか書きました。
さて、問題は「日中」です。ご存じの通り、現在のところ「日中」と言えば日本と中国、またはその関係を指す言葉として定着しています。距離が近い国同士ということもあり、日本と中国の関係性は伝統的に深く、互いに影響し合っている。また中国は大国でございますから、このままだと中央アフリカの方が略語の変更を迫られそうです。ただ、時代が中央アフリカに微笑みまくったらチャンスがあるとは思います。
ここまで東南北中が出てきましたが、「西」はもちろんスペイン(西班牙)が担当しています。ちなみに、漢字表記ですとギニアは「幾内亜」、ティモールは「的木児」、マケドニアは「馬其頓」、アフリカは「阿弗利加」、スーダンは「蘇丹」などがあります。
最後に、個人的に気になったものをいくつかご紹介します。まずはこちら。
常識に凝り固まった私にはもう日清ラ王にしか見えません。というか、中国はその昔、清と呼ばれていたわけで、何なら日本と「日清戦争」なる戦争をしています。ただし、日清食品の社名は創業者であります安藤百福の「日々清らかに豊かな味をつくる」からきています。
そして、ラオスは老檛、ラトビアは良都美野です。
続いてはこちら。
「日」の形をした物体が飛んでいるように見えます。ちなみにミクロネシアは蜜克羅尼西亜です。
「日ヨΞ=‐」と並べると、なんか「日」がだんだん消えていってるように見えるなと思って、つい選んでしまいました。ヨルダンの漢字は約但です。
最後は反則気味ですけど、アラブ首長国連邦はUAEという略称がよく用いられるので、試しにUAEと日本との関係を省略してみました。さすがにここまで来ると、何が何だかよく分からないですね。アラブ首長国連邦は漢字だと亜剌比亜首長国連邦となるようです。漢字表記にするとアラブではなくアラビアになるんですね。
今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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