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事務所別M-1グランプリ2022予選通過具合一覧

 何となくネットでニュースを見ていたら、こんな記事がありました。

 昨年のM-1グランプリでタイタンが出場したのはわずか6組にもかかわらず、2組が決勝に進出し、優勝者まで出してしまった。あまりにもすごすぎる快挙ゆえに、記事のタイトルにもなったのだと思われます。

 そう言えばタイタンは他に誰が出場してたんだっけ、と思って、M-1の公式サイトで調べたんです。そうしたら、タイタン所属の芸人は30組近く確認できました。恐らく本所属でない、いわゆる「預かり契約」という立場の方も含まれているのだと思います。それでも少数精鋭ですし、優勝者を出しているのは快挙に違いありません。

 そこでふと気になりました。昨年のM-1グランプリではどの事務所がどれだけ勝ち上がったのかと。というわけで、調べてみました。個人で調査したので数値に多少のズレはあるかもしれませんが、大体の結果は出ていると思うので、気軽にご覧くださればと存じます。

 まずは実際に勝ち上がった組数を一覧にしました。異なる事務所同士で組んだユニットの場合は、それぞれ1ずつカウントしました。つまり、吉本興業とワタナベエンターテインメントの芸人が組んだユニットの場合は、吉本興業とワタナベエンターテインメントにそれぞれ1組ずつカウントしますし、フリーとアマチュアの芸人が組んだユニットの場合はフリーとアマチュアに1組ずつカウントする形になっています。

 また同じ事務所所属だけど表記が異なる「表記ぶれ」がいくつかございました。この場合は正式な表記と思われるものにデータをまとめました。例えば、「TWIN PLANET」は「ツインプラネット」という表記も見られましたが、いずれも「TWIN PLANET」としてデータをまとめました。

 全ての事務所を載せたら表がものすごいことになったので、参加組数が10以下の事務所はひとつにまとめました。

 そんな一覧が以下の通りです。参加組数の多い順に並べました。当然ながら、昨年の準決勝進出者は2回戦からカウントされています。個人でカウントしているため、多少のずれはあるでしょうが、大体の傾向はとらえきれていると思います。

各事務所芸人による各予選の参加組数一覧(主に参加組数10以上の事務所)

 吉本興業の芸人が多いのは何となく分かっていましたが、それにしてもアマチュアの多さです。M-1はアマチュアも大会に大きく関わっているのだと再確認させる事実です。

 もちろん、吉本興業の多さは特筆すべき点です。他の事務所と桁が1~2も違う。圧倒的な物量です。お笑い芸人の層の厚さは、芸人数の多さがあってこそなのだと痛感させられます。

 それから意外と多いのが事務所に所属していないフリーの芸人で、500組を軽く超えています。これだけの芸人がフリーランスで漫才をしているのが現在のお笑い業界なんですね。

 より状況を分かりやすくするために、各事務所の1回戦参加数をそれぞれ100%として、各予選に進出したのが何パーセントかを一覧にしてみました。

赤い数字は2回戦~準々決勝が上位5事務所、準決勝が上位3事務所、決勝が最も多い事務所
(単位は全て%)

 こうやってみますと、アマチュアやフリーは参加数こそ多いものの、勝ち上がる組は本当に少ないことが分かります。吉本興業もまた同じような傾向が見られまして、一見すると準決勝や決勝にも多くの芸人を送り込んでいるように見えますが、参加組数から考えると非常に少なく、本当にごく一部の芸人しか勝ち上がっていないことがこの一覧から分かります。

 アマチュアやフリー、吉本興業ほどではなくても、100組以上の芸人を送り込んでいる事務所もそれに近い傾向にあります。

 比較的、少数精鋭の傾向があるのは参加組数が20~50の事務所で、具体的にはケイダッシュステージやマセキ芸能社、グレープカンパニーなどがそれにあたります。もちろん、タイタンも含まれます。預かり契約を含めても、決勝進出率が約7%というのは驚異的な数字です。また、準々決勝までですとマセキ芸能社が常にハイスコアを叩き出しており、安定して面白い漫才ができる芸人を揃えている事務所なのかなと推測してしまいます。

 ちなみに、参加組数が10以下の事務所で特筆すべきなのはASH&Dコーポレーションです。参加組数は2組だけですが、そのうちの1組が阿佐ヶ谷姉妹のため、準々決勝進出率は驚異の50%を叩き出しています。また、もう1組の十九人も3回戦まで進出しており、全体では3回戦進出率が5%を切っている中、ASH&Dコーポレーションは2組以上参加している事務所では唯一、進出率100%を誇っています(1組で3回戦進出率100%ですと、「エイベックスマネジメント」「毎日放送」「オフィスまめかな」があります)。

 これだけでも満足したんですが、もう少しだけ踏み込んで考えてみました。事務所設立時期との関連づけです。出典がウィキペディア等なので微妙なところもありますが、一覧を作ってみました。参加組数が多い事務所ほど一覧の上になっています。

各事務所設立年またはお笑い部門創設年の一覧

 こうやって見ると、大まかに3つの種類にわけられそうです。1980年以前に設立した「老舗」、1990年代から2000年代前半に設立した「中堅」、2010年頃から以降に設立した「新興」です。上の表の事務所を3つの種類の分けるとこんな感じです。

老舗:吉本興業、松竹芸能、太田プロダクション、プロダクション人力舎、ワタナベエンターテインメント、浅井企画、マセキ芸能社
中堅:SMA、サンミュージックプロダクション、ホリプロコム、タイタン、ケイダッシュステージ、ニュースタッフプロダクション
新興:K-PRO、ラフィーネプロモーション、ライジング・アップ、TWIN PLANET、グレープカンパニー、ビクターミュージックアーツ、スパンキープロダクション、SHUプロモーション

 ビクターミュージックアーツのお笑い部門創設時期がネットで軽く調べた程度では分かりませんでしたが、芸人の所属時期などから推測して「新興」に入れてあります。

 所属芸人の多い事務所は老舗の傾向が強いことが分かります。芸人育成のノウハウがあり、資本もあることで多くの芸人を抱えやすいのかもしれません。一方で、各予選の通過率は低くなっています。

 老舗でありながら少数精鋭という戦略を取っている事務所もございまして、マセキ芸能社や浅井企画がそれにあたります。特にマセキ芸能社は準々決勝までの進出率が軒並みトップで、漫才の実力者を揃え、育てていることが数字からうかがえます。

 中堅の事務所からは概ね数十組がM-1に出場しています。2組の決勝進出者を出し、そのうち1組が優勝したタイタンもここに入ります。数字を見たところ、一部老舗に比べて少数精鋭の戦略をとっているようで、タイタンの他にサンミュージックプロダクションやケイダッシュステージは準決勝までの各予選通過割合が高くなっています。ちなみに、先ほど触れたASH&Dコーポレーションは1991年設立で中堅に含まれます。

 例外はSMAで、昨年のM-1でも150組近い芸人が出場しています。M-1に参加する芸人だけでこれなので、実際はもっと多くの芸人が所属していることになります。これは吉本興業に次ぐ多さです。

 とにかく多くの芸人を所属させるというのはSMA独自の戦略で、設立当初は売れない芸人をかき集めたように見えたことから「芸人の墓場」と揶揄されていましたが、現在ではM-1、R-1、キングオブコントで優勝者を出す事務所となり、売れっ子芸人も輩出しています。その手の記事は軽く検索するといろいろ出てきまして、例えば以下のような記事がございます。

 新興の事務所は文字通りまだまだこれからといったところですが、その中で異彩を放っているのがグレープカンパニーです。ご存じサンドウィッチマンとその担当マネージャーがフラットファイヴから独立した事務所ですね。フラットファイヴ所属芸人の多くがグレープカンパニーに移籍したという経緯もあってか、サンドウィッチマン以降も賞レースで結果を出すなどして売れる芸人を安定して輩出しています。

 数値だけからでも何となく事務所の方針などが分かって面白いなあと思いました。今回は以上となります。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。


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