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笑いに関する名言集――笑いで人格はバレるのか
名言は辞典ができるほどたくさんありますし、興味を持つ人も多いんです。
でも、笑いに特化した名言集はほとんどありません。なかったら作るしかないので、こうやってちょこちょこ集めている次第です。
ここでは笑いの名言を以下のみっつのどれかに当てはまるものとしました。
・笑いに関係する言葉が入っている名言
・笑いに関係する仕事をした人の名言
・笑う余地がある名言
今回は人格に関係する名言をいくつかご紹介いたします。例えば、こんな感じです。
何を笑うかによって、その人柄がわかる。
マルセル・パニョル(1895-1974)、「笑いについて」
パニョルはフランスの小説家であり、劇作家としても知られます。
幼少期から文字を読みまくっておりましたが、その様子を見た母親が「脳味噌が爆発するかもしれない」と恐怖し、6歳まで本を読ませなかったようです。
それはともかく、笑いという感情は制御できるようでできないものでございます。笑ってるフリはできるけれども、笑いを我慢するのはなかなか難しい。いつ何がツボに入るか分かりませんし、一旦ツボに入れば抑えるのは大変です。だから、その昔、年末の風物詩になっていたバラエティ番組「笑ってはいけない」シリーズが成り立つわけです。
上記名言は要するに「ツボがバレる」わけですね。普段は上品で真面目な話ばかりしているのに、出合い頭に下ネタが飛んできて爆笑した日には、事実がどうなのかはともかく、「そういうの結構好きなんじゃん」と思われてしまう。これを防ぎきるのはなかなか大変です。
似たような名言は他にもあります。
人は自分の笑い方にはくれぐれも注意すべきである。というのは、笑う時には、人間の欠点というものがすべてあらわにでてしまうからである。
ラルフ・ワルド・エマーソン(1803-1882)
エマーソンはアメリカの思想家・哲学者であり、作家や詩人、エッセイストとしても知られます。主な功績として主観を重要視する「超絶主義」を先導した点が挙げられます。
西洋哲学の分野では著名な方なんですが、イマイチ日本語表記が定まらない方でもありまして、ミドルネームの「ワルド」は他にも「ウォルド―」「ウォルドウ」「ウォルド」、ラストネームのエマーソンも「エマソン」「エマスン」などがあるようです。ここまで来たらファーストネームの「ラルフ」も「ルァルフュ」みたいな表記ブレを起こしてくれると一貫性が出てくるんですけれども、さすがにラルフはそんなことないようです。
エマーソンは「欠点」なんて表現をしていますけれども、つまりは普段隠していたものが一気に表へ出てしまうということなんでしょう。虫も殺さないような人かと思ったら、顔面をザリガニに挟まれてもだえ苦しむ芸人で腹を抱えて笑っている。周囲の友人知人は印象が激変するでしょう。
こんなビックネームも似たような名言を残しています。
人の性格が一番よく現れるのは、人が見たり、聞いたりして笑うものの内容によってである。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)
何をやった人か知らなくても名前は聞いたことがある、ドイツ文学のビッグネームでございます。何をやったか知らない理由のひとつは功績が多すぎる点でございまして、文学はもちろん、哲学、科学、政治や法律の世界でも活動しております。無茶苦茶です。
ゲーテも数多くの日本語表記がある人物として知られ、ウィキペディアによりますと、以下の45通りが確認できたようです。
ヴィテー,ヴーテー,ギェーテ,ギオーテ,ギューテ,ギュエテ,ギョウテ,ギョエテ,ギョーツ,ギョーテ(ギョーテー),ギョオテ,ギョート,ギョテ(ギョテー),ギョテーイ,ギョヲテ,グウイーテ,グーテ,ゲイテ,ゲエテ,ゲーテ,ケーテー,ゲエテー,ゲーテー,ゲォエテ,ゲテ,ゲョーテ,ゲョテー,ゲヱテー,ゴアタ,ゴイセ,ゴエテ(ゴヱテ),ふをぬ、げえて,及義的,歌徳,俄以得,俄義的,葛徳,驚天,暁蛙亭,芸陽亭,芸亭,芸天,就是葛徳,倪提以,哥徳
ふざけて作ったものも混ざってそうな、圧倒的な多彩さです。とりあえず、「ふをぬ」表記にした人はあらゆる降霊術を駆使してでも理由を聞きたい、そんな魅力が詰まっています。どれがマジで、どれが半笑いで作られた日本語表記か、予想して分類してみると面白いかもしれません。
そんな話じゃないんです。笑いと人格なんです。ゲーテもまた、何に笑うかで人の本質を見抜けると踏んだようなんです。どうも賢くて観察眼があって笑いに興味を持ってる人は、一定の確率で上記名言のような結論に至るようです。つまり、かぶる。
ロシアにもかぶった偉人がいらっしゃいます。
人は笑い方によって、その人の本性が自ずと分かるものである。ある人について何かを知る以前に、そのある人の笑い方が気に入った場合には、我々はその人は善良な人間であると、自信をもって判断して、ほぼ間違いないであろう。
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー(1821-1881)
ロシア文学の巨人、ドストエフスキーでございます。19世紀ロシア文学を代表する人物のひとりで、「罪と罰」「悪霊」「カラマーゾフの兄弟」など世界的に有名な作品をいくつも残しています。
一応、表記ブレを確認したところ、「姓は訳者によって『ドストエフスキイ』『ドストエーフスキイ』『ドストイェーフスキイ』などと表記されることもある。」とのことでした。
上記名言も内容は大体同じなんですが、表現がポジティブです。現代風に意訳すると「笑いのツボが合う人はたぶん気も合うよ」でございまして、確かにそういう面はあるかもしれないと納得する次第です。
しかし、「何で笑うか」で人格を判断する方法も万能ではありません。あくまで「笑いのツボ」というただ1点から、この人がどういう人かを判断するわけですから、当然ながら正確性に欠けるでしょうし、「何でこんなもんで爆笑するのか分からない」という状態もございます。
だから、こういう名言も残っているわけです。
笑う者は測る可(べ)からず。
欧陽脩(1007-1072)、「唐書」
欧陽脩は中国の北宋で活躍した人物でございます。
彼が編纂に関わった唐書とは唐の歴史をまとめたものでございまして、別の人が編纂した「旧唐書」と区別すために「新唐書」と呼ぶこともございますけれども、単に「唐書」と言えばこちらのようです。
そして、上記名言の日本語訳は「笑う人間は真意がわからず恐ろしい」でございます。先ほども少し書きましたけれども、笑いにはマジ笑いとウソ笑いがあるわけです。
ふたつの差がよく出てる人もいるでしょうし、ふたつの笑いを見抜くのが得意な人もいるとは思うんです。ただ、本当にマジとウソを判断する方法があるのでしょうか。ウソっぽいマジだったり、マジっぽいウソだったり、ウソっぽいマジかと思ったらやっぱりウソだったり、いろんな可能性を検討し始めたらキリがありません。結局、「本人しか知らない」との結論になりかねない。
最後に、こんな名言をご紹介いたします。
生娘の一番いけないところは、鼠にはキャッと悲鳴をあげるくせに、狼には笑いかけたりすることなんですよ。
井上ひさし(1934-2010)
井上ひさしは小説家、劇作家、放送作家としての活動でも知られています。
井上ひさしがどのようなつもりで上記のようなことを言ったのかも人によって予想が異なると思いますが、狼に笑いかける生娘の心理に至ってはもっと違ってくると思います。
あの人はどうして笑っているのか。それを正確に判断できる者は、少なくとも人間にはいないような気がしてきました。
◆ 今回の名言が載っていた書籍
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