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珍事件の裏でかく冷や汗

 一歩間違えたら自分だったかもしれない。そう思った経験はございませんか。何らかの事故や事件とニアミスし、背筋に寒いものを感じる人もいらっしゃるでしょう。鬱屈した日々を送った経験がある方ならば、何かのきっかけで自分がやけになって犯罪に手を染めていたかもしれないと、あとになって気づくことだってあるかもしれません。でも、どういうわけか自分ではなかった。どうして自分は無事で済んだのか、考えてもなかなか分からない。偶然の不思議を痛感させられます。

 こういう事件事故は基本的には悲劇と隣り合わせではありますが、中には悲劇とガッツリ距離を置くどころか、世の常識からも相当な距離を置いた事件事故というものもひっそりと起きているものです。

その事件が起きたのは2009年のようですが、表札を盗んだ男が逮捕されました。盗んだ数はザッと290枚、全て珍しい名字のものだったそうです。何しろ10年以上前の事件です。ネットの記事は削除されているのか見つかりませんでしたが、事件をいじっているページはいくつか見つかりました。

 電話帳で珍しい名字を探して現地へ行き、盗んで帰ってくる。売り払うとかではなく、完全に自分の楽しみのための窃盗です。しかも、珍名収集というかなり特殊な趣味です。事件を知った人の圧倒的大多数は「世の中いろんな人がいるんだなあ」と思うだけですぐに忘れてしまい、せいぜいごく一部の人が上記のようにネットでいじる程度でしょう。そんなごく一部の人だって、事件から10年以上経ってしまえばいじったことも覚えていないに違いない。

 しかし、私はnoteでも変わった名前の高校とか、そういうものを集めて載せるような人間です。

 その昔、暇でしょうがなかった時期には変わった名前の高校を見に行って正門の写真を撮ったりもしていたんです。忙しくなった今では全くやらなくなりましたが、それでもめぐった都道府県は16に及びます。珍名表札連続窃盗事件を知った時はもちろん思いました。一歩間違えたら自分がああだったかもしれないと。写真じゃ我慢できず、怪しい工具を取り出して高校の表札をカリカリ削り出そうとしたんじゃないかと。

 私、事件のあまりの衝撃に、それからもたびたび思い出しては事件について検索していました。もちろん、いくら珍しい事件とは言えこんな小さな出来事の続報なんて出るわけがありません。そう思っていたら、5年以上たってその事件に触れているブログが見つかりました。そのブログの作者は事件が起きた後、いろんな友人から「あの泥棒、お前かと思った」と言われたそうです。調べたら、更新は止まっていたものの、ブログ自体はまだ残っていました。

 私の珍名好きなんかまだまだだと思い知ったものです。そして、確信しました。珍しい事件が起こると、それに近い趣味の人が冷や汗をかくものなんだと。これからは変な事件が起きるたび、それを知って冷や汗をかく人たちに想いを馳せたいと思います。

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