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リメイク安岡力也

 このnoteで書かれている文章は、もちろん新たに作られたネタもございますけれども、これまでブログやらSNSやらで書いてきたネタをリメイクして載せている場合もあるわけです。場合によっては、20年以上前に書いたネタを何の恥じらいもなくリメイクして堂々と載せてたりする。そんな新品と骨董品が入り混じる場所がここでございます。何卒よろしくお願い申し上げます。

 そうは言うものの、過去に書いてきたものを何でもかんでもリメイクして載せているわけではございません。何らかの理由で「これはリメイクできないな」と判断しているネタもございます。理由は様々です。リメイクのしようもないほどつまらないものが大半で、あとは登場人物の個人情報をバリバリさらしてしまう危険のあるネタとか、時代が変わってしまって楽しめなくなったネタとかもございます。

 時代が変わったがゆえに楽しめなくなったネタとはどういうことか。例えば、もうだいぶ昔の話ですけれども、私がとある大型スーパーでアルバイトをしていた時のことです。私が働いていた場所は「笑いを取れる人が実はかしこい」という偏見がそこはかとなく漂う、よく分からない土地柄でございました。ですから、陽気なお姉さんからおとなしいおじさんまで、隙あれば笑いを取ろうとする癖が多かれ少なかれございまして、よそ者の私は随分と面食らった記憶がございます。上司がボケたのにぼんやりしてると「ちゃんとツッコまんと」とマジで言われたこともありました。

 繰り返しになりますが、よそに比べてちょっとだけみんな笑いに貪欲な土地柄でございます。ですから、お客さんがウケを狙ってくる場合もあるんです。

 中には館内放送でウケを狙うお客さんがいらっしゃいました。「〇〇市からお越しのマルコメ様、お連れ様がお待ちです」なんて館内放送が本当に流れたりする。それを聞いた上司は別に憤るわけでもなく、「珍しい名前の人もいたもんだな」とか訳の分からないことを言う。笑いを取りたがる土地柄にもう慣れていた私も「放送のお姉さんも笑いこらえてましたね」なんてのんきな発言をしていました。

 人間の発想とはどうしても似通ってくるもので、館内放送でウケを狙おうと考えるのもひとりではないようです。ですから、滅多にあるものではないにしても、年に一度のペースで現れる。そういう職場でした。

 ある日の館内放送はこうでした。「××市からお越しの安岡力也様、お連れ様がお待ちです」。隣にいた上司はすかさず私に「おい、力也が呼ばれたぞ」と半笑いで言ってきました。

 安岡力也さんは役者や歌手として活動されていた方でございまして、祖父と父がシチリアンマフィアだったこともあってか、いかつい外見とドスの効いた声がトレードマークでございました。有名になってくると自身のキャラクターを活用し、ドッキリで「怖い人」役になって数々の芸能人を震え上がらせたり、ホタテマンというキャラクターでバラエティの現場を沸かせたりしていました。

 安岡さんがご活躍していた当時だったら、この館内放送の面白さを多くの人が理解できたと思うんです。しかし、安岡力也さんが亡くなられてから10年以上経っている現在では、その面白さをどれだけの方が理解できるか分からない。そんなわけで、リメイクを見送っていたんですが、「リメイクできないことをネタにすればいいんじゃないか」という姑息な手段を思いついてしまったので、こうやって書いてみた次第です。

 ちなみに安岡力也さんは怖い外見なのに「黒飴マン」としてCMに出たりもしています。実はシャレの利いた方だったんだなと今になって思います。

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