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ポテトの王、国民を喰らう

 ジャガイモが好きなんです。炊飯器に米と一緒に入れて炊いて食うなんて日常茶飯事です。その話を聞いた友人は私を「ポテ王」とか「ジャガイモを食べる人」とか言うんです。

 「ポテ王」はもちろん「ポテトの王」のことです。なぜリア王っぽく略しているのかは分かりません。仮に私がポテ王だったとすると、国民であるポテトを文字通り食い物にしている、とんでもない王様になるわけなんですが、当然ながらそれも考慮に入れての命名だと思います。

 「ジャガイモを食べる人」は、ゴッホの作品がもとになっているようです。

「ジャガイモを食べる人々」フィンセント・ファン・ゴッホ(ウィキペディアより)

 なんか見た感じ、ゆでたジャガイモをそのまま食って、あとはお茶でどうにかしようとしている食事風景なんですが、当時はそんなもんだったんでしょうか。よく分かりません。

 そうやって私をジャガイモ方面でいじっていた友人ですが、夏の暑さもようやく和らいできたある日、「すごくうまいジャガイモを見つけた」と言ってきました。話を聞くと北海道産の某品種がマジでおいしいらしく、今なら今年収穫した分をネットで注文できるとのこと。

 友人に言われた通り、某通販サイトで購入手続きを済ませたんですが、人気商品らしく届くまでしばらく時間がかかるとのこと。まあ、ジャガイモに飢えるほど困窮もしていませんし気長に待とう。そうこうしているうちに注文したことも忘れていました。

 ジャガイモが届いたのは本当に突然でした。自宅にて、出したばかりのコタツで暖まっていますと、インターホンが鳴ったんです。出てみますと、宅配業者さんが、ドアにギリギリ通るレベルのでかい段ボール箱を持っています。しかも重い。何だこれは、不発弾でも入ってんのか。そう思いながら荷物を開けますと、中につまっていたのは箱いっぱいのジャガイモでした。同封された領収書を見ると、2品種のジャガイモがそれぞれ15キロずつ、合計30キロあるとのこと。

 そこで初めて私、量を確認せずに買ってしまったのだと気づいたんです。届くまでは「カレーを2~3回作って終わりかな」くらいに考えていたのですが、これじゃ炊き出しができてしまいます。早速、友人に電話しました。

「ジャガイモ来たんだけど」
「おお、来たか国民が」
「部屋が狭くなるくらいの箱で来た」
「みんなポテ王を慕ってんだ、迎えてやれ」
「こんなに食べきれるかな」
「春までもつから大丈夫だよ。長期的視点でいけ」

 それから毎日のようにジャガイモを、すなわち国民を消費し続け、春を迎えるまでに30キロ全て食べ尽くしました。友人は「さすがポテ王だ」と畏敬の念を示し、私をより一層ポテ王と呼ぶようになりました。確かに、ひと冬でジャガイモ30キロを食い切れたならばポテ王を名乗ってもいい気がしています。誰にも名乗ったことありませんが。

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