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見果てぬ元素

 元素なんて化学の基礎ですから、散々ネタにされているわけです。それでもやっぱり改めてツッコみたくなる魅力的な名前の元素があるんです。

 ニオブ(Nb)はいかにもにおいそうな名前ですがにおいません。ギリシャ神話に出てくる女性、ニオベーが由来なのですから当たり前なんですが、日本語圏の人から見れば看板に偽りありです。悪臭でもいいからにおえよニオブ、とつい思ってしまいます。

 プラセオジム(Pr)とネオジム(Nd)は新しいジムにしか見えません。ゴールドジムの姉妹店みたいです。ゴールドが元素のひとつだけに、なおさら姉妹店に見えます。

 ドブニウム(Db)はドブにありませんし、イッテルビウム(Yb)はどこにも行ってません。というか、どっちも地名由来なのが信じられません。裏で日本人がふざけて名付けたという可能性に一縷の望みを託したくてたまらない私です。

 ちなみに、未発見のものを含め、名前が決まってない元素には、仮でこのような名前をつけましょう、というルールがあります。国際純正・応用化学連合(IUPAC)という、物質の命名法などを定める国際的組織が決めたルールです。

 元素の仮名の付け方は、原子番号に基づきます。原子番号の百の位、十の位、一の位をそれぞれ次の言葉に変換したら完成です。

0 ニル(一の位以外) ニリウム(一の位の場合)
1 ウン(一の位以外) ウニウム(一の位の場合)
2 ビ(一の位以外) ビウム(一の位の場合)
3 トリ(一の位以外) トリウム(一の位の場合)
4 クアド(一の位以外) クアジウム(一の位の場合)
5 ペント(一の位以外) ペンチウム(一の位の場合)
6 ヘキス(一の位以外) ヘキシウム(一の位の場合)
7 セプト(一の位以外) セプチウム(一の位の場合)
8 オクト(一の位以外) オクチウム(一の位の場合)
9 エン(一の位以外) エンニウム(一の位の場合)

 例えば、前出のドブニウムは原子番号が105だったため、ウンニルペンチウムという仮の名前で呼ばれていたことがあります。

 これまでに正式な名前がつけられたのは原子番号118のオガネソンまでです。つまり、原子番号119以降は今も仮名のままです。

 仮名状態の元素では、個人的には原子番号222のビビビウムが一番グッとくるんですがいかがでしょうか。この名前で痺れなかったら嘘です。ニオブ以来の看板に偽りあり案件です。

 ただし、一説には原子番号173のウンセプトトリウムが理論上、存在しうる最後の元素とされているそうです。まだ200もいかないうちから、何たる体たらくですか。いや、所詮は人の予想です。人の限界を乗り越えるのもまた人の使命、人類はいつかビビビウムを発見できるに違いない。ただし、実験はお金がかかります。夢のまた夢の元素を発見するには、きっと莫大な資金が必要になる。

 世界一シャレの分かる大金持ちを探す旅に出たくてたまらなくなって参りました。

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