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バカじゃない欲望と闘う人生

 こんな動物がいます。

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© 2012 MVHS-CR. Licensed under CC BY-SA 3.0

 見た目から何となくお察しの通り、哺乳類です。もうちょっと詳しい人ならば齧歯類かなと推測できる。日本じゃ見ない種だから海外の動物だろうなと考える人もいるでしょう。どれも正解です。中南米に生息する動物で、体長は60~80センチメートル、木の生い茂った水辺に生息し、草食で夜行性、昼間は地面にできた穴に潜んでいます。

 広く分布し、それなりに大きいこともあってか、人類にはかなり前から認識されていた生物のようで、1種は命名者が「分類学の父」とも呼ばれるリンネです。つまり、生物の分類表の中では相当の古株なわけです。

 しかし、名前が「パカ」なんです。動物園にもいたりするわけですが、試しに私がパカの檻の前で立っていると、「バカ?ああ、パカか」と言って立ち去る客が本当にちょいちょいいるんです。何人にひとりの割合でパカをバカと呼ぶのか、開園から閉園まで居座って統計を取ってみたいという欲望と闘った時期も正直言って何度もあります。何なら、これを書いている今だってちょっとヤバいくらいです。

 ちなみに、パカにはローランドパカとマウンテンパカの2種類がいるのですが、名前を知った今となってはローランドパカはどこぞのローランドさんへの悪口にしか聞こえませんし、マウンテンパカと聞いても尻と耳毛だけ使って登山をしようと試みる人を指しているかのようです。

 リンネだって日本でいじられるために命名したわけじゃないでしょうけれども、自国の言語では問題なくともよその言語ではおかしく聞こえるという、外国語あるあるの犠牲にパカを差し出す羽目になってしまいました。ちなみに、前出のパカをバカと呼ぶ人の統計を取りたくなる欲望は年に3回のペースで襲って来ます。今回も見事打ち勝とうと思います。

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