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歩行者が虐げられる地域で生まれ育ったのか

 地域性というものがあるらしいとは聞いていたんです。この地方の人はせっかちだとか、あの県の人は明るいとか、そういうやつですね。そういう本も読んだことがあります。ただ、実感したことはなかったんです。そもそも、人と会って話しても、相手の言動が地域性によるものか個人の特徴なのか区別がつかない。私はこのまま地域性とやらを実感せずに生きてゆくのだと何となく思っていました。

 しかし、最近になって初めて地域性らしきものを見かけたんです。それは道路の横断です。横断歩道がない場所でも横断する歩行者はたまに見かけますけれども、いま住んでいるところは異様に見かけるんです。ちょっと散歩に出かければ2~3人は簡単に見かける。片道2車線の道路でもたまに見かけるくらいです。前回に住んでいた街では滅多に見かけなかったので、より違いが分かったのだと思います。

 当然、歩行者の道路横断は道路交通法的に良くない場合が多いです。横断中に事故ると、人対車でも歩行者に過失がドンと乗る形になるとか。だから衝撃だったんです。怖くないのかと。

 あまりに衝撃だったので、近所に住む知人へ「この辺り、道路を横断する人が多くない?」と聞いてしまいました。すると知人は当然と言いたげな表情で「この辺の人は生まれた時からいつでも道路を横断できるよう仕込まれるんですよ」と、本当か嘘か分からないことを言うんです。

 歩行者がこんなノリだからなのかは知りませんが、逆に自動車がすごく歩行者優先で動いてくれるんです。信号のない横断歩道で待っていても、私は自動車が止まってくれるなんて思っていませんから、「あの車が通りすぎたら渡るか」なんて考える習慣が染みついていたんです。でも、いま住んでいるところは高確率で自動車が止まってくれる。信号のある交差点でちょっとでも渡ろうとする素振りを見せれば、車はすぐ止まってくれます。

 当たり前だと思う方はそういう地方に住んでいるからかもしれません。何しろ私は「信号のない横断歩道で車が止まるわけがない」と思っている地方で生まれ育ってきました。だから、今の歩行者優先地域のノリで地元の交差点を渡ったら普通にひかれかけたりするんです。それでいて歩道が整備されていない幹線道路がそこそこある。

 どうも我が故郷は歩行者が虐げられている危険地帯だったようです。というのは冗談にしても、地域によって歩行者はもちろん、ドライバーの傾向が異なるらしいんです。これが私にとっては初めて感じた、地域性らしきものでございます。

 さて、そんな地域性を感じ取った私、都内某所を歩いていました。そこは片道4車線のかなり太い道路です。それだけ太い道路が必要になる場所ですから、交通量は多い。自動車はガンガン通ります。

 しかし、その片道4車線の道路をひとりの女性が堂々と横断していたんです。見ず知らずの他人とは言え、事故らないかという不安はもちろん、道路交通法上問題ない行為なのかなど、いろいろ心配になるような行為でございました。幸いにも女性は何事もなく向こう側へ到達しました。

 彼女の地元は、歩行者はどんな太い道もゴリゴリ横断し、逆に自動車はそれを譲りまくっているんでしょうか。それとも彼女だけが桁外れに豪快だっただけなんでしょうか。今となっては調べようがありません。残念です。

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