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よりによってアメリカントランクス


 トーストを落とせば、バターを塗ったほうが下になる。敷いている絨毯が高いほどそうなる。

 いわゆるマーフィーの法則というものです。ジョークの類ですね。「いつでも最悪を想定せよ」という教訓と捉えられる場合もあるようです。

 起こって欲しくない時に起こった。よりによって。そんな嫌な出来事は心に残りやすいものです。だからこそ、マーフィーの法則が生まれたのかもしれません。

 私にも経験があります。ズボンのチャックを上げ忘れてその辺をうろついてしまうことは多くの人がやらかす失敗でしょう。どういうわけか私は派手な下着をはいている時にやらかす可能性が極めて高いのです。中でも全体に星条旗をあしらったアメリカンなトランクスの時は特に酷い有様でした。あまりに股間からアメリカンが見えるものですから、一度知らない女性に「開いてますよ」と指摘されたこともあります。思春期の少年だったら1週間は凹める案件です。

 私は露出狂の気がないどころか、人前で裸になるのも遠慮したいくらいの人間なのに、これは一体どういうことでしょうか。心の中のアメリカンが暴走し、アメリカンを見せつけようとしているのでしょうか。いや、そうではありません。よくよく調べた結果、私のズボンのチャックは、ちゃんと上げたとしても一定の確率で下がってしまうシステムになっていました。つまり、心の中の暴走していないし、そもそも心の中はアメリカンではありません。

 いや、何でそんなズボンをはいているのか。本当はアメリカンを見せつけたかったのか。無意識がそんなズボンをはかせているのか。あれこれ無意味に悩みましたが、アメリカンなトランクスはそのうちゴムが伸びきってしまい廃棄処分に。困ったチャックのズボンも同様に廃棄し、私はアメリカに悩まされることがなくなりました。平和っていいですね。


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