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「脱竹」みたいな言葉を知人と考えたんです

 比較的最近になってお笑い関係で「脱竹(だっちく)」という言葉が使われ始めました。お笑い芸人を多数抱える芸能事務所「松竹芸能」から出ていく行為を指すようです。「松芸能をする」というわけで脱竹なんですね。

 脱竹と聞くと思い出す出来事があるんです。私の知人にブラックな会社に勤めていた人がいて、特に上司の北川さんだか北村さんだか、そんな名前の人からの圧力が強くてよく私に愚痴メールを送ってきた人がいたんですけれども、いよいよそのブラック企業を辞める報告メールを私に送った際、タイトルが「脱北」になってたんです。北岡さんだか北枕さんだかから脱するというわけですね。脱竹の考え方も大体同じだと思います。恐らく言葉の由来は北朝鮮からの脱出を意味する「脱北」なんでしょう。

 なんと脱竹は今やウィキペディアに単独の項目ができておりまして、必ずしも正確な情報が書かれているわけではありませんが、誰が言い出したのか、どうして脱竹という現象が起きたのか、脱竹した方々「脱竹組」が誰なのか、など、興味深い情報がまとめられています。

 私には澤田さん(仮名)というお笑いの話をする唯一の知人がいますが、先日、澤田さんと脱竹の話になったんです。澤田さんは早速、脱竹に関してひとつの疑問を呈しました。

「別に芸人が辞める事務所は松竹だけじゃないでしょう?」
「まあ、そうですけど」
「吉本だって辞める人がいるでしょう。松竹が脱竹なら、吉本はそうですね、『脱本(だっぽん)』です」

 だっぽん。なんかうんこをもらしたみたいに聞こえます。でも、脱糞程度で澤田さんの疑問は止まりません。

「マセキなら『脱マ』ですよ。『つけま』みたいな感じで」
「じゃあ、ナベプロは『脱ナベ』ですか」
「そこは『ナベ抜け』でしょう。『なべなべそこぬけ』のナベ抜けです」

 何でも脱をつければいいわけじゃない。どうも澤田さんには澤田さんの基準があるようです。

「となるとホリプロは『ホリ抜け』か『脱ホリ』か。いや、『脱ポリ(だっぽり)』?」
「そこは『掘削』ですよ、星野さん」
「『ホリ』の字が違うんですが」

 「堀」と「掘」の差なんてどうでもいいらしい。澤田ルールの理解にはどうも時間がかかりそうです。澤田さんは脱竹スイッチが入ったのか、新しいルール策定が止まりません。

「人力舎は『クラッシュ』です。人力車だけに」
「それも字が違いますよ」
「(事務所名が)人力車とかけてるんだからいいんですよ」
「グレープカンパニーは『脱グレ』か」
「まだそんな発想ですか。グレープを足蹴にするんだから『ワイン』ですよ」
「じゃあ、ソニーは?」
「『パナソニック』です」
「転職じゃん」
「事務所を変えるのだって同じことですよ」

 私、なぜか知りませんが、澤田さんに言いくるめられています。それから澤田さんは「サンミュージックはもう決めてますよ。『ダットサン』です」と日産が開発した往年の名車になぞらえるなど、よく分からない方向に才能を発揮していました。

 相変わらず「脱〇〇」の呪縛から逃れられない私は、タイタンを辞めた芸人に「脱タン(だったん)」という、読めないし書けない文字でお馴染み「韃靼」にかけた言葉を生み出すのがせいぜいでした。皆さんも宜しければいろいろ考えてみてください。

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