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M-1グランプリの準々決勝進出組は翌年以降にどれくらい成績を維持できるのか
M-1グランプリは予選が何段階にも設けられています。具体的には1回戦・2回戦・3回戦・準々決勝・準決勝ですね。2020年はコロナの問題もあり3回戦がありませんでしたが、2010年開催の第10回以降は基本的にこの形を続けています。
同じ予選でも、どうやら準々決勝から会場の空気が変わって来るようです。例えば、本日に決勝で登場するモグライダーの芝さんが、飛石連休の藤井ペイジさんとの会話でその件について言及しています。3分27秒辺りから該当の話題に入ります。
考えてみれば、「準々決勝」という単語も決勝をバリバリ意識したものですから、会場の空気激変もやむを得ないのでしょう。そして、個人的にも準々決勝まで勝ち上がる組は漫才のガチ勢が大半を占めている印象です。
そこまで勝ち上がるのはどれだけ大変なのでしょうか。実際、毎年当たり前のように準々決勝まで勝ち上がる組がある一方で、成績が維持できない組も存在する。この辺をハッキリと数値化してみたいなと思いまして、調べてみました。
今回は現在と同様の予選方式が用いられている2015年以降のみに絞って調査しました。では参ります。
1.そもそも準々決勝進出者はどれくらいいるのか
まずは準々決勝の進出がどれくらい難しいのか軽く数字で表してみます。難易度を分かりやすくするため、パーセンテージも併記しました。
2015年 3472組中 86組(2.48%)
2016年 3503組中 97組(2.77%)
2017年 4094組中105組(2.56%)
2018年 4640組中101組(2.18%)
2019年 5040組中106組(2.10%)
2020年 5081組中114組(2.24%)
2021年 6017組中127組(2.11%)
7年合計 31847組中736組(2.31%)
これだけでも、相当な狭き門であると分かります。比較として適切かどうかは微妙ですが、より大変さが分かるよう、難関資格の合格率をいくつか並べてみます。カッコ内はどの年の合格率かを示しています。
税理士 18.8%(2021年)
弁理士 9.7%(2020年)
公認会計士 9.6%(2021年)
国家公務員総合職 大卒程度 6.94%(2021年)
司法書士 5.14%(2021年)
参考
https://www.jmsc.co.jp/knowhow/topics/11990.html
https://www.jpo.go.jp/news/benrishi/shiken-kekka/2020.html
https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/ronbungoukaku_r03/01.pdf
https://resemom.jp/article/2021/12/10/64788.html
https://studying.jp/shoshi/about-more/result-publication-2021.html
アマチュアの参加も認められているとはいえ、到達の難しさがよく分かりますね。
2.翌年も準々決勝に行ける組はどれくらいか
一旦は準々決勝に行けたとは言え、優勝するか、規定条件を満たさなくなるか、解散をするかしない限り、大半の芸人は翌年もまたM-1に参加します。では、翌年も準々決勝に到達できる組はどれくらいなのでしょうか。
調べたのは2015-2016、2016-2017、2017-2018、2018-2019、2019-2020、2020-2021の計6シーズンです。全ての準々決勝進出者のうち、翌年も準々決勝に到達した組の割合を「維持率」として各シーズンごとに計算し、まとめました。まず、翌年も準々決勝に残れた組を「維持」、残れなかった組を「脱落」、翌年に参加しなかったり解散した組をまとめて「不参加・解散」とすると、6シーズンの合計は次の通りです
維持:389組
脱落:143組
不参加・解散:43組
ここまでくれば維持率の算出は単純な計算をすればいいだけです。
維持率:67.7%
かなりの高水準です。上で示した通り、準々決勝に勝ち上がる組の割合はここ7年で2.31%です。これは言い換えると、漫才ではなく完全なくじ引きで勝ち負けを決めると、準々決勝に行ける確率が2.31%ということであり、この数値と比較しても、M-1準々決勝は一部の実力者が大半を占めているという結果が導き出されそうです。
3.結成年と維持率は関係があるのか
結成から年数が経っている、いわゆるベテラン漫才師のほうが勝ち上がりには有利そうに感じられますが、実際のところはどうなのでしょうか。せっかくなので調べてみました。
結成 0年目→結成 1年目 維持3 脱落4 不参加・解散3 維持率30.0%
結成 1年目→結成 2年目 維持19 脱落6 不参加・解散3 維持率67.9%
結成 2年目→結成 3年目 維持18 脱落11 不参加・解散2 維持率58.1%
結成 3年目→結成 4年目 維持30 脱落7 不参加・解散4 維持率73.2%
結成 4年目→結成 5年目 維持23 脱落15 不参加・解散4 維持率54.8%
結成 5年目→結成 6年目 維持24 脱落13 不参加・解散2 維持率61.5%
結成 6年目→結成 7年目 維持25 脱落11 不参加・解散2 維持率65.8%
結成 7年目→結成 8年目 維持29 脱落11 不参加・解散2 維持率69.0%
結成 8年目→結成 9年目 維持42 脱落10 不参加・解散3 維持率76.4%
結成 9年目→結成10年目 維持42 脱落9 不参加・解散3 維持率77.8%
結成10年目→結成11年目 維持35 脱落17 不参加・解散1 維持率66.0%
結成11年目→結成12年目 維持33 脱落7 不参加・解散3 維持率76.7%
結成12年目→結成13年目 維持29 脱落7 不参加・解散5 維持率70.7%
結成13年目→結成14年目 維持19 脱落9 不参加・解散3 維持率61.3%
結成14年目→結成15年目 維持18 脱落6 不参加・解散3 維持率66.7%
結成してからの期間が長ければ長いほど成績が上がるのかと思いきや、そんなこともないようです。結成0年目から1年目にかけての維持率が低いですが、これはコンビ歴が浅いのも原因として考えられます。ただし、そもそも結成0年で準々決勝に行く組が少ないため、正確な維持率に近いかどうかは不明瞭です。
結成年と維持率に傾向が見られないのは、芸歴と関係ない点が考えられます。芸歴1年目同士が結成しても芸歴20年同士が結成しても同じ結成0年からのスタートになりますが、コンビの実力としては当然ながら差が出てくるでしょう。決勝初の50代芸人となった長谷川雅紀さんは錦鯉結成時点で41歳のベテランでした。同期はタカアンドトシ、野生爆弾、アンタッチャブルです。
また、ベテランコンビにベテラン芸人が加入するというパターンもチラホラ見受けられるようになりました。結成3年目に初めて準々決勝した三日月ヶ浜は2002年結成の三日月マンハッタンに芸歴18年の浜村凡平太さんが加入したトリオですし、今年に初出場で準々決勝に進出した人人は2003年結成のしゃもじに芸歴25年目の与座よしあきさんが加入したトリオです。
同じ組を長く続けても成績の維持がしやすいとは限らない。そんな結果が出たのは意外であり、M-1の厳しさを更にひとつ思い知らされた気分です。
4.準々決勝から脱落した組はどれくらいの割合で復帰できるのか
維持率が67.7%ということは、32.3%の確率で翌年に3回戦以下で敗退するということでもあります。ですが、当然ながら翌々年に再び準々決勝まで勝ち上がる場合もあるでしょう。もしくは翌々年が駄目でも翌々々年は準々決勝に復帰できるかもしれない。
では、準々決勝から脱落した組はどのくらいで復帰できたのか、あるいはできなかったのか。最後にそれを調べてみました。
基本的なルールは次のように定めました。
1年で復帰:2015年 準々決勝 → 2016年 3回戦 → 2017年 準々決勝
2年で復帰:2015年 準々決勝 → 2016年 2回戦 → 2017年 3回戦 → 2018年 準決勝
4年未復帰:2015年 準々決勝 → 2016年 2回戦 → 2017年 3回戦 → 2018年 2回戦 → 2019年 3回戦
見やすくするため、復帰した組と未復帰の組を分けました。では、まずは復帰した組から紹介します。
1年で復帰 36組
2年で復帰 8組
3年で復帰 4組
4年で復帰 2組
5年で復帰 0組
6年で復帰 0組
1年で復帰する組が圧倒的に多いですが、4年の時を経て再び準々決勝に復帰する組も多少はあるようです。5年以上の時間をかけて復帰した組は今のところありません。
続いて、現在も復帰していない組です。解散や結成年オーバーにより出場できなくなった組数も括弧書きで記しました。
1年未復帰 33組(7組は出場不可)
2年未復帰 22組(8組は出場不可)
3年未復帰 12組(5組は出場不可)
4年未復帰 9組(1組は出場不可)
5年未復帰 5組(出場不可の組はなし)
6年未復帰 3組(出場不可の組はなし)
復帰した組に比べて数の多さが目立ちます。一度準々決勝から脱落すると復帰が難しい大会なのではないかと思わせる結果になりました。
また、準々決勝から脱落して解散というパターンも見られ、いろいろ考えてしまいます。ただし、解散後に別の組でM-1に出場して再び準々決勝まで勝ち上がってくる人もいますし、準々決勝まで勝ち上がっていたのに解散をしてしまう組も存在します。
5.終わりに
いかがでしたでしょうか。個人でカウントしたデータなので細かなミスはあるかもしれませんが、おおよその数値は出せたと思います。
今回の調査で分かったことを簡単にまとめますと、準々決勝まで行ける芸人はかなり固定化しており、翌年も準々決勝に行ける可能性はかなり高いようです。また、結成年と準々決勝に留まり続ける確率には特に関係はないようです。そして、一度準々決勝から脱落しても復帰できる組は比較的早く復帰でき、そうでない組はなかなか復帰できない傾向があるようです。
個人的にはこれだけ知れただけでも満足です。それでは今回はこんなところで。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
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