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全自動難易度調整ジョギングコース

 ゲームを作る上で大変なもののひとつに難易度調整があると勝手に決めつけています。極端に難しかったり簡単だったりするのは楽なんです。大変なのは「ちょうどいい難易度」、これです。簡単ではないけれど、頑張れば何とかなる。そこを狙うのが一苦労なんです。遊ぶ人を想定し、その能力に合わせて難易度を調整しなければならない。ゲーム内の課題が、プレイヤー自信で解決できるものなのか、ヒントなどでサポートをする必要があるのか、どう頑張ってもクリアできない無理難題なのか、いちいち考える必要があるんです。

 ひとりの人間の能力に合わせた難易度でも大変ですから、全てのユーザーを考慮に入れるとなると、これはもう想像を絶する大変さです。初心者に合わせては歯応えがなくなる。でも、熟練者に合わせては敷居が高くなる。ですから、プレイヤー自身が難易度調整をできるようにするなど、昔から様々な対策が考えられてきました。

 さて、話を急に変えてみますが、街中をジョギングをするとどうしても信号に引っ掛かるものです。かといって信号を無理に避けるルートですと、桁違いに遠回りな道を走ったり、やけに暗くて狭くてジメジメした路地裏を通ったりしなければならなくなる。じゃあ、待つほうがいいやということで、ちょこちょこ信号ストップを余儀なくされるジョギングをしているんです。

 信号に足止めされるジョギングはベストとは言えません。しかし、これよりベターなコースがあるとも思えない。ならば、考え方を変えようと決心しました。私のジョギングコースは赤信号でちょこちょこ止められるのではなく、自動的に小休止ができる、無理のないルートなのだと。

 更に私は考えました。どうせ自動的に小休止ができるコースです。いつもより早いペースで走っても、すぐ休めるから問題ないに違いない。むしろそっちのほうがちょうどいいかもしれない。

 早速、私はいつもより早いペースでジョギングをしてみました。異変にはすぐに気づきました。全然信号に引っ掛からないんです。遠くで赤く光っていても、近づくと絶妙なタイミングで青に変わる。横断歩道を渡り終えた瞬間、赤に変わった時もありました。

 小休止が大量にあると思ったからハイペースで走っていたのに、これはどういうことですか。予想外の出来事にしっかり体力を削られた私、当然ながら走るペースは落ちて参ります。フラフラ走る私にようやく赤信号が微笑み、初めての小休止となりました。

 そこで思い出したんです。テレビゲームには、プレイヤーの行動で難易度が変わるものがあったなと。ビギナーがやりがちな動きをすると難易度が下がり、玄人しかやらないような動きをすると難易度が上がる。例えば、レーシングゲームでいいタイムを出せば次のレースは難しくなり、ゆっくりなタイムならば易しくなる、みたいな感じです。

 なぜかは知りませんが、私のジョギングコースもそうなっているんです。ペースがゆっくりな人の場合は小休止をたくさんプレゼントし、早い人は休憩なしにする。偶然か意図的か。とにかくジョギングコースの信号機はそうなっている。

 プレイヤーの行動でゲーム難易度が変わるシステムを初めて知った時は「すげえシステムだ」と感動したものですが、割とこういうことから思いついたのかもしれません。何なら同じコースを走っていたとしても驚かない自信があります。

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