見出し画像

今やらかしてる失敗をしているのは自分だけじゃないかもしれない

 自分だけかと思っていたら意外と他の人もやってた、みたいなことがあるわけです。「すごいアイデアを思いついた」と思ってネットで検索してみたらもう思いついていた先人がたっぷりいた、なんてこともあるでしょう。オリジナリティを出すって大変だな、と痛感してしまう。ただ、「自分だけかと思ったらそうでなかった」が自分にとってつらい方向に影響するとは限らないわけです。

 例えば、私は無意識に自分の顔を触る癖が昔からずっと気になっていました。目とか鼻とか口周りとか、気づくと触ってしまう。そのまま他の何かに触ったり、他の何かを触った手でまた顔を触る。時にはその手で誰かと握手したりするわけです。清潔とは言えませんから、「よくないよなあ」と思いつつも、気づけば触ってしまうこの謎の力に抗えずにいました。

 その癖に対する考え方がちょっと変わったのは、みんな揃ってマスクをつける生活を始めた頃でした。例の病気になる原因のひとつとして、顔を触った手で食事などをする行為があげられていたんです。ご存じの通り、例の病気は世界中で広く流行しています。病気の原因が顔ペタペタだけとは限らないとはいえ、私は「あ、割とみんなペタペタしてたんだ」と思いました。安心したと書くと語弊がありますけれども、自分だけがペタペタしているものだと思っていた私は、ちょっとだけ気が楽になったのは確かです。まあ、時代が時代ですから、以前より念入りに手を洗うようにはなりましたが。

 こんなこともあります。頭で言葉を思い浮かべ、それを相手に言おうとするんですが、言おうとしたものと全然違う言葉を口にしてしまう。例えば、「爆弾魔」と言おうとして「横恋慕」と言ってしまったりするんです。意味が全然違いますから、話し相手は当然ながら首をかしげる。そして、「またやってしまった」と思うわけです。

 だから、話し相手が同じような事態に陥ると安心します。先日も、「冷蔵庫」と言うにはおかしな機能ばかりついているなあと思っていたら、実は「洗濯機」と言ってるつもりだった方がいらっしゃいました。きっと、頭ではちゃんと洗濯機を思い浮かべていたはずです。でも、なぜか「冷蔵庫」と言ってしまい、言ってる本人が間違いに気づかない。気持ちはよく分かります。

 こういう例もあります。私は他人と話をするのがあまり得意ではありません。更に、ひとりでぼんやりしている時が多い。ぼんやり中、不意に話しかけられると、たまに訳の分からないことを言ってしまうんです。どの言語にも存在しない単語だとしてもおかしくないくらい、本当に意味不明な返事をしてしまう。言っている本人も分からない言葉を他人に投げかけるくらい恥ずかしいことはなかなかありません。だから、こういう癖は直したいと思っているんですが、なかなか会話は上達しませんし、油断するとすぐボーっとしてしまう。そして、不意に話しかけられ、謎の返事をする。

 でも、社会人になり、職場ですれ違う人に挨拶をするようになって考えは変わりました。職場内で出会った人へ誰彼構わず挨拶をしていると、まあ皆さん社会人ですから多くの人は挨拶を返してくれます。その中に、たまにではありますが、半分崩壊した挨拶をしたり、「あぁえぇーっしゅ」みたいに挨拶っぽいことを言おうとしたんだろうけど言葉になってない挨拶をする人もいるんです。中には「あ、いま変なこと言っちゃった」などと、追及してないのに自白を始める正直者もいらっしゃいます。

 最近はもう、挨拶の失敗作を収集するために、みんなに挨拶をしている気にもなってきました。「挨拶をミスるのは自分だけじゃないんだ」と安心するための挨拶ですね。挨拶の意図が明らかにおかしくなっています。誰か助けてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?