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お笑い芸人の棲み分け現象

 似た者同士は往々にして争いが起きるようです。イチゴが好きがふたりいるのに、お皿にイチゴがひとつしかない。争い勃発やむなしの状態と言えます。

 皆さんもそれを人生で早かれ遅かれ悟るんです。だから、対処法が古くから確立されています。そして、その対処法を活用しているのは人だけに留まらないことが知られており、例えば「棲み分け」なんて名前で呼ばれている手段が存在しています。

 棲み分けを簡単に説明すると、「よく似た相手とちょっと変える」ことだと思います。同じような餌を食べる生き物が同じ場所に住んでいると、餌を巡って争いが起きてしまう。「じゃあ、互いに住むところをずらしましょう」ですとか、「そっちが昼に活動するなら自分らは夜行性になるんで」ですとか、特徴を変化させて争いを避ける。冒頭のイチゴの話ですと、「まあ、俺は桃も好きだし」「なんならこっちはリンゴとかいけるし」とイチゴ以外もおいしく食べられることで、イチゴを巡る争いを回避できるパターンもある。

 もちろん、人間にも棲み分けの発想はそこらじゅうに根づいています。例えば、お笑い芸人はその典型です。他人と同じことをする行為は「かぶる」と呼ばれ、仕事を取り合ったりネタのウケが悪くなったりするため、ごく一部の例外を除き、伝統的にあまり好まれておりません。

 例えば、空気階段がキングオブコントを優勝した際の特別授業では、作ったネタが他とかぶっていたら基本は捨てているとおっしゃってました。

※該当箇所は12分32秒くらいから

 大型賞レースのチャンピオンでも、地位を築くために棲み分け的な戦略を活用してきたと言えます。

 とは言え、どうしてもやりたいことが人と似かよってしまう場合がございます。そんな時でも小さな棲み分けを活用し、少しでも互いに差異を出して争いを避けようとする動きが見られます。

 例えば、アントニオ猪木さんのモノマネ芸人です。猪木さんのように著名かつ特徴だらけの方ですと、どうしてもモノマネをする方が多くなる。猪木さんは人気もございましたから、モノマネをしたい人は本当にしたい。棲み分け活用は自然の動きと言えましょう。その独特な現象は、アントニオ小猪木さんのウィキペディアからうかがえます。

 アントニオ猪木さんのモノマネ芸人としては他にも春一番さん、アントキの猪木さんなど、複数いらっしゃいます。ただ、小猪木さんと春さんは「形態模写」と「声帯模写」の違いがある。つまり、動きを真似るか、声を真似るかの差があるわけです。また、ひたすら模写に専念するふたりに対し、アントキの猪木さんは「もしもアントニオ猪木が○○だったら」というネタをする。更に、小猪木さんとアントキの猪木さんはどちらも猪木さんの決めセリフ「1、2、3ダァーッ!」に因んだ日に婚姻届を提出していますが、アントキの猪木さんの1月23日に対し、小猪木さんは12月3日と徹底しています。

 「アントニオ猪木のモノマネ芸人」という狭い範囲にひしめいているからこそ、不必要な争いを避ける知恵のひとつとし棲み分けを活用してきたのだと考えられます。

 私が知らないだけで、このジャンルをもっと詳細に調べたら、興味深い棲み分け戦略がいくらでも出てきそうですね。

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