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最近注目の芸人、ヨネダ2000を違った視点で見てしまった


 知人女性の話です。仮に澤田さんとしておきましょう。

 以前、澤田さんは数ヶ月に一度だけ、とある部署に行っていました。その部署にしかない機材を使わせてもらうためです。

 よその職場で働く人から見れば、各部署に置けばいいじゃんと思いかねないのですが、そんなにしょっちゅう使うような機材ではなく、また各部署に置けるほど安くもない、わざわざ違う部署へ行ってでも使ったほうがマシ、といった状態だったようです。

 定期的に同じ部署へ行けば、そこで知り合いができることもある。澤田さんもまた、知り合いができました。澤田さん曰く、かなりガタイのいい女性だったそうです。特に二の腕の触感がたまらなかったようで、その部署へ行くたびに澤田さんは知り合いの女性と鉄砲稽古をしていたそうです。鉄砲稽古、力士がやるあれですね

 もちろん、私は尋ねました。要するにそれはふたりでじゃれあっていたということですね、と。しかし、澤田さんは「違います。鉄砲稽古です」と頑なに譲りません。何故そんなところを譲らないのかと問いかけても、「あの二の腕が鉄砲稽古に合ってたんです」と意味不明な答えが返ってきます。「仕事中に相撲を取ってたの?」「鉄砲稽古と言ってるだろうが」。もう謎しかありません。

 それから月日は流れ、例の機材は過去のテクノロジーとなった上に、澤田さん自身が違う部署へ移ってしまったこともあり、澤田さんは女性と鉄砲稽古する機会がなくなってしまいました。澤田さんは今でもたまに鉄砲稽古を思い出して懐かしんでいるようです。

 別に澤田さんとは鉄砲稽古の話ばかりしているわけではありません。彼女とは「お笑い」という共通の趣味がありまして、日々情報交換をしている仲でございます。

 最近ではヨネダ2000という女性お笑いコンビが突如として注目を浴び始めています。今年のTHE Wでは初の決勝進出、M-1では敗者復活に回ったものの、2020年結成の組では初の準決勝進出を果たしています。調べたところ、以前にも同じメンバーで「ギンヤンマ」というコンビを2018年に結成していましたが、2018年以降結成の組でもヨネダ2000はくらげ、おいでやすこが、タイムキーパーに次ぐ準決勝進出であり、かなり早い部類に入ります。

 特徴としては身長差もさることながら、漫才の形をそれなりに取ってはいるものの、ボケとツッコミの役割分担がない点がまず挙げられます。特にツッコミが不在で、ボケとツッコミの応酬というよりは、ふたりして変なことをやって終わってる印象です。あとは背の小さいほうである清水さんのイントネーションが独特で、これもまた他ではなかなか見られない形になっています。

 物珍しいこともあって私、早速、澤田さんにヨネダ2000の動画を見せました。澤田さんは真剣な面持ちでヨネダ2000のネタを視聴しまして、開口一番、こんな感想が飛び出しました。

「大きい子の手がちゃんとした突っ張りの形になってない」

 動画を見た方はお分かりでしょうが、背の大きいほうである愛さんはネタの大半はずっと「どすこいどすこい」やってます。その間、両手は突っ張りの形を取っているように見えるのですが、澤田さんに言わせればこれは突っ張りではないと言うのです。でも、重要なのは面白かったかどうかであり、突っ張りの型ではありません。私は澤田さんにヨネダ2000が面白かったのか尋ねました。返ってきた答えが次の通りです。

「鉄砲稽古に一家言ある私としては、突っ張りの形が気になって笑うどころではなかった」

 違った視点でものを見れる、という言葉は普通、いい意味で使われるものです。しかし、今回の澤田さんに限って言えば、違った視点でものを見た結果、ネタに集中できなくなってしまいました。個人的には鉄砲稽古に一家言なければ、ちゃんと楽しめると思います。


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