見出し画像

うまい概念はまだ先のようです

 原材料とか燃料とかが高騰し、いろんな製品が値上げする類のニュースがずっと報じられています。値上げで多くの人に打撃を与えるものの筆頭は食料品でしょう。何しろ人は食べないと生きていけない。生活の根底に揺さぶりをかける値上げに違いありません。食料品は値段を上げるか、値段据え置きで量を減らすかされ、ちょっとずつ我々の胃袋をしぼりにかかります。

 私、考えたんです。商品である限り、値上げはどんなものにも起きる。当然、安いものにも訪れます。もちろん、うまい棒もです。

 このまま原材料や燃料が高騰し続けると、うまい棒だって内容量が削られに削られ、いつかは棒状に保つのが難しい段階に来ると思うんです。「もうプリッツくらい細くなってるのに、まだうまい『棒』として売るのか」と社内で幹部会議が開かれるに違いありません。そして、きっと名前を変える決断に至ると思うんです。例えば「うまい枝」に。

 名前を変えたからって原材料と燃料の高騰が収まるとは限りません。むしろ、一層バリバリ高騰する可能性もある。そうなれば、やがて袋にお菓子を入れて販売するのを諦める日が来るかもしれない。どうするか。もうパッケージに空気を入れて売るしかない。「うまい空気」誕生の瞬間です。

 空気に変えて安泰と言えるほど世の中は甘くありません。パッケージを作るのにも材料が要りますし、機械を動かすには燃料がなければならない。袋に空気をプーッと吹き込むだけでもお金がかかるんです。そのうち、空気を売るのにも限界が訪れるかもしれない。もう物を売るのは止めだ。社長の鶴の一声で決定します。今後は「うまい概念」の販売でやっていくと。

 というような小噺を、食料品値上げのニュースを聞いて考えたんです。でも、思いついたのが10年以上前なんです。その間もいろんな値上げニュースがバンバン報じられてきました。

 そんな値上げラッシュの中、うまい棒はどうなったのか。検索すると、うまい棒もまた中身がじんわり減っているという話が結構出てきます。値上げにも踏み切ったらしい。でも、買って中を見てみると、まだまだ十二分に棒なんです。枝にすらなってない。概念なんて夢のまた夢です。

 企業努力と言えば確かにそうです。棒を枝なんかにしてしまった暁には、企業的には大打撃でしょう。ブランドイメージが崩壊する危険もあります。企業が棒を保とうと頑張った結果、まだ概念のだいぶ手前で踏み止まっているわけです。

 そうなんですよね。いろんなものが値上がりしまくり、食料品が同じ重さの金で取引されるとか、一握りの種もみを乱暴なモヒカン大男が奪い合うとか、そんな日は誰も望んでいないんです。だから訪れないようみんな頑張っているんです。でも、うまい概念が売られている世界はどんなものなのか、ちょっとだけ見てみたい気がするんです。とりあえず、うまい概念にビッグビジネスを感じた方、一度でいいので私の近所で販売してみてください。そのうち様子をチェックしに参りますので。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?