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困ったらプロに頼む

 世の中には自宅を自分の手で建ててしまう人がいます。絵になるせいか、そういう動画もボチボチ見かけます。どこからともなく重機を呼び出してダイナミックにやる人もいれば、木や石など原始的なものだけを用いて家を組み立てる人もいます。

こちらは原始的なほう(出典:Primitive Technology

 こういう動画は見ているだけで楽しいです。だから、こういう動画が世の中にあふれているんでしょう。探せば結構出てきます。もちろん、実際にやるとなると間違いなく大変です。でも、それ以上に楽しそう。いや、やっぱり大変そう。というわけで、私はそういうのを見る専門に留まっています。

 しかし、近所には実際に動き出した人がいました。と言っても、私はその人と知り合いではありませんし、なんなら姿を見たこともありません。ただ、家を囲う壁がどう考えても作っている途中の段階で、近くを通るたびにちょっとずつ壁が高くなっている。業者が入っている様子はない。それどころか、よく見ると庭と思しきスペースには工具や木材が積みあがっている。この家の方は自分でいろいろ作ろうとしてるんだと思いました。

 まことに勝手ながら、私はこの家のそばを通るのが楽しみになりました。ちょっとずつではありますが、壁が出来上がっているんです。また、ちょうどいいことに、その家の前を2か月に1回くらいしか通らない。そのペースだとちょっとずつの変化でも分かるんです。

 ところが、ある時期から壁の建設がぴたりと止まってしまいました。何度見ても進行状況が変わらない。おかしいなあと思い始めて1年ほど経ったある日、家は更地になっていました。その時点で充分に驚きましたが、更に数か月後、同じ道を通りますと、更地に立派な家が建っていました。表札は以前と同じでした。

 つまりこういうことでしょう。お金を節約するために自分で家のリフォームを試み、とりあえず壁の建設から着手した。しかし、あまりの面倒くささに心が折れてDIYを放棄、業者に頼むという大胆な方針転換を図りました。もともと家を改造しようと考えるくらいですから、家を建て直す資金は余裕であった。何だったらこれまで面倒な思いを受け続けたDIYの恨みを晴らすかのように立派な家を建てた。

 完全にDIYへの逆恨みといった状況ですが、気持ちはよく分かります。家を建てるのが簡単だったら、みんな自分で自分の家を建ててるはずなんです。なかなかそれができないからみんな業者に頼むわけであり、そしてみんなDIY動画を見て「すげー」と喜ぶわけです。何だったら、いい方針転換をした感すらある。後に引けなくなって新築なのにあばら家みたいなものを建ててしまっては目も当てられません。

 下手に格好つけず、理想と現実の折り合いをつけたいい判断だったと思います。我ながら、誰目線の意見だ、と思いました。

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