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バーチャルアイドル

- デジタルマーケティングにおけるバーチャル活用事例 - 


 バーチャルアイドル 

 デジタルマーケティングのトレンドとして、バーチャル技術の活用が多くなってきている。その中でも、企業の新しい取り組みとして「バーチャルアイドル」が次々起用されていることに注目した。

 PRADAの事例 

 女性高級ファッションブランドを手がけるPRADAグループ傘下のPRADAとMIUMIU(ミュウミュウ)が今年3月、中国最大手のBtoCプラットフォームである「Tモール(天猫国際)」に参入した。オンラインストアへの参入については、「デジタル革新を進め、より若い層へとアピールするため」であり、「顧客への幅広い商品と多彩なオンラインサービスの提供を目指す」と述べている。
 そこで注目したいのが、両ブランドとコラボすることになった新たなバーチャルアイドル「エイミー(Aimee)」だ。現実に近いスタイルをしていて、「豪華でトレンディ」なエイミーは「Z世代へのリーチや顧客の購買体験向上の促進に貢献」することが期待されている。

(掲載元:https://www.wwdjapan.com/articles/1063014)

 GUの事例 

 大手ファッションブランドGUも今年3月9日にバーチャルヒューマン「ユウ」を公開した。ユウは身長が159cmで、GUユーザーの「自分に近い体型のモデルを参考に購入したい」という声を反映させたものだ。ランダムに選ばれた200人の顧客の身体を測定し、その平均データから作成された。「YOU」は「あなたの意見から作られた」という意味が込められている。GU公式サイトでは細かいキャラクター情報が書かれ、実在する設定だ。また、サイト内には水川あさみや中条あやみと共演するムービーも用意されている。
( 掲載元:https://www.gu-japan.com/jp/feature/virtual-model-YU/women/pc/)


 二つの事例を通しての見解 

 デジタルトレンドニュースを見ていて、プラダがバーチャルアイドルを起用したというのが衝撃的だったので取り上げて見た。プラダといえば、とにかく老舗で高級なイメージがあり、若者に向けてアプローチするイメージがなかったからだ。実際のバーチャルアイドルを見ても、中国人向けだからか、とても幼い顔立ちのモデルとなっていて、今までのイメージが覆された。また、GUの例でも20歳に設定されたキャラクターがどのような目的で起用されたのかとても興味があったので調べて見た。

 このようにバーチャルアイドルが起用され始めた背景としては、

1.ファッション業界全体のオンラインショップへの移行が進んでいる
2.オンラインと現実の壁を取り除くために仮想現実が必要
3.今までのブランドイメージを押し出すより、より消費者に寄り添い「共感」してもらえるマーケティングが若い世代に受ける

があると考えられる。

 1. まず、ファッション業界において今までは実店舗での販売が主流だった。しかし、Amazonや楽天の通販サイトが一般的になり、ZOZOTOWNなどのオンラインショップが参入し、低価格で従来のブランドの服を家にいながら手に入れることができるようになった。これにより、服を実店舗まで買いに行く人が少なくなり、老舗高級ブランドなど裕福な層をターゲットにした企業もデジタルに移行せざるを得なくなった。
 2. オンライン上で問題になるのが、実店舗でなされていた声かけやDMによるサービスのような、消費者との「繋がり」だ。実店舗ではスタッフが営業の役割を担い、自身の魅力でお客様を獲得することも珍しくない。WEB上では、そのような人の温もりを感じることは難しかった。しかし、GUの例のようにいかにも実在するようなバーチャルアイドルを起用することで消費者にリアルな共感をしてもらえる演出が可能となった。
 3. PRADAのように今までオンラインとは無縁だった高級ブランドはそのイメージを保ち、他のブランドとの差をつけることが考えられそうだ。しかし、今回はオンラインショップを利用する消費者の共感を優先したモデルとなっている。

 また、人型のバーチャル「アイドル」を起用するのはファッション業界と親和性が高いからと言える。今までの主なバーチャル活用では、「店舗」や「街」が多かった。例えば、IKEAがリリースしている「IKEAPlace」ではスマホアプリに自分の部屋を写し、家具を配置することができる。このように、バーチャルは簡単に商品を体験できることが利点として利用されてきたように思える。
 しかし、今回の事例のように、消費者の「共感性」に注目するのであれば「アイドル」はファッション業界のみならず他業界においても効果が高く、継続的なファンの獲得が見込めるだろう。これは、バーチャル技術の新しい利用方法だと考えられる。


 バーチャル技術 

 デジタルマーケティングに取り入れられるバーチャル技術の種類は現実との関係性で四分される。

VR:仮想現実
仮想空間の中での体験。現実空間との関係性なし。
例:VRゴーグルを用いたゲーム

AR:拡張現実
現実空間の映像を取り込み、仮想空間の情報を重ねる。主体が仮想空間で、現実空間に影響される。
例:ポケモンGO


MR:複合現実
現実空間に仮想空間を重ねる。ARとは違って、主体は現実空間。現実空間に仮想空間は影響されない。
例:チームラボ


SR:代替現実
過去の映像や音声を使って現実に起きていることだと思わせる。現実をバーチャルに置き換えると言える。
例:現在なし


 バーチャル技術に関しての見解 

 上にあげたファッションモデルを務めるバーチャルアイドルの例は、現実空間との関係性がないという点でVR(仮想現実)の分類に入るだろう。これらのリアルなアニメーションはCG技術で作られる。今までの技術だと、バーチャルアイドルを作ること自体に大きなコストがかかってしまっていた。さらに、ARやMRはVRよりもっとコストがかかるものなので参入障壁は更に高かった。例えばチームラボは、人の動きに合わせて映像が変化するMR演出など没入型のアート空間を提供している。その維持費はとても高く、森ビルやDMMなどの大手企業とタッグを組んで作品を作っていた。だが、その斬新な「体験」は、私の記憶にずっと残っている。五感を使った体験というのが今までどれだけ少なかったのか思い知らされた。つまり、コストは高くとも、人の心に残る体験を提供するという意味においてはバーチャルに挑戦する意味はあると考えられる。
 また、近年は技術力向上によるコストの低下がみられるし、バーチャルを活用したデジタルマーケティングの成功事例が多く見られ始めた。バーチャルアイドルについて言えば、「Vtuber」など、生配信を行いながらファンと交流する参加型のアイドルが誕生し、支持され始めている。

 ジャニーズのバーチャル参入事例 

 2019年2月に発表された「バーチャルジャニーズプロジェクト」はエンターテイメントを提供するジャニーズ事務所とライブ配信のプラットフォームであるSHOWROOMがタッグを組んだものだ。高い技術力により、ライブ配信でキャラクターを動かすことに成功した。ボディスーツなどを装着しなくとも、現実世界のジャニーズメンバーの動きがスムーズに反映される。2019年12月には SHOWROOMが「VR/ARライブ」を配信する新たなサービス「SHOWSTAGE」を発表。一体型VRヘッドセットでのVRアプリに加えてスマホ用のARアプリがリリースされた。これによって移動コストや会場のキャパシティ問題も解決される。

掲載元:https://www.cinra.net/news/gallery/149651/0/  
掲載元 : https://www.moguravr.com/showroom-entertainment-technology-conference-2019/


 ジャニーズの事例を通した見解 

 ジャニーズのファンが二次元のアイドルを受け入れることができるかどうかは一種の賭けだったと言える。成功した理由としてはデジタルだからこそ「身近さ」と「非現実性」を両立できたからだろう。私はアイドルファンではないが、友達にアイドルオタクが多いため、「繋がり」を求める姿を間近で見てきた。その熱量は、その人の人生で一番といっていいほど大事なもののように思える。
 デジタル時代への移行に伴い、人間関係の希薄化などから「寂しさ」を感じる人が増えると前田社長がインタビューに応じていた。アイドル本体についても、「テレビの向こうの遠い存在」ではなく、地下アイドルなどの「会いに行ける近い存在」を求めるファンが増えてきている。確かに、エンタメ業界全体で見ても芸能人などの憧れの存在からYoutberなど近い存在へと消費の場が移行しているように感じる。私自身、SNSなどで好きな漫画の作者に応援メッセージを送ったり、返事が返ってきたりすると嬉しくてもっと応援しよう、という気持ちになる。
 ライブ配信はこれからさらに増えていき、企業のPRとしても人型にとどまらない多くのバーチャルキャラクターが生まれると予測できる。デジタル世代の若い人にアプローチするのであれば、テレビCMよりもこちらの方がコスト対効果は高いだろう。

 まとめ 

 これらの事例を通して、デジタルマーケティングでバーチャルを活用する一番大きなメリットは利用者とのコミュニケーションだと考えた。PRADAやGUでも、若い世代を取り込もうと親近感を持てるバーチャルアイドルを起用している。それは、実際の人間よりも身近に感じる効果さえあると感じた。
 そして、VRよりもARやMRなど、現実世界との繋がりがより濃い手法の活用が盛んになりそうだ。それには技術の向上と成功事例が必要だが、すでに取り組んでいる企業は増えている。これからは、いかにユーザーに寄り添い、「心」に入っていけるかがこれからのマーケティングの肝だと感じた。
 最近自分の周りでもVRなどバーチャル技術を活用したマーケティングを行っていることが増えたと感じている。例えば以前ディズニーが行なった、スマホを繋げてエレクトリカルパレードを見ることができるという施策は自分がターゲットに入っていたからか、とてもワクワクした。また、Youtuberが当たり前になり、Vtuberが出てきたところでデジタルの流れについていけなくなりそうだったので、自分の感度を上げるためにも最新技術について知っておきたいと思った。
 どれだけ技術が向上しようとも、大切なのはユーザーを理解して、その潜在しているニーズを引き出して叶えることだと思う。そういった意味でバーチャルが必ずしも必要になるとは思わないが、これから先それを活用して行くことが「当たり前」になると考えると、積極的に取り入れて行く意味があるのではないかと思う。「どこでも」や「身近さ」を感じることができるバーチャルならではの特性をいかに活かすことができるのか、私も考えてみたい。コロナがこのまま長引くのであれば、その需要は十分にあり、バーチャルを通じて幸せになる人は多いのではないかと思う。


 参考サイト 

https://www.wwdjapan.com/articles/1054517
https://www.wwdjapan.com/articles/1063014
https://service.plan-b.co.jp/blog/marketing/2467/
https://www.gu-japan.com/jp/feature/virtual-model-YU/women/pc/
https://ferret-plus.com/13597
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000271.000026205.html
https://www.moguravr.com/showroom-entertainment-technology-conference-2019/
https://www.cinra.net/news/20190219-vjp
https://realsound.jp/tech/2020/01/post-472061.html