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ライターの事(RONSON) ・煙と共に/その2

喫煙者としては、着火道具が必携の道具である。
この点についての好み拘りは千差万別であるため、個人的な好みの話をする。

RONSONライター

RONSONは個人的にも好きなブランドで、何しろ創業が古く、ZIPPO以前に世界初の全自動式ライターを発表し、他にも生活に根差したユニークなライターを多く製造したバリエーションの多さと、当時の構造のライターが現在でも受け継がれている点に魅力を感じている。

ライターの歴史

一般的に「片手で着火/消化できる形式のライター、または全自動型」は1920年頃の発明と言われており、上の写真の「バンジョー」が発表されたのは1927年。ZIPPO社は1932年創業なので、それ以前に確立していた形式の一つである。オイルライター自体はバンジョー以前にも存在していたが、ワンタッチ開閉できる機構という意味では世界初なのだという。

20世紀前半のライター開発の歴史を調べていると、大きく分けて3つのスタイルに気付いた。
一つは、上記RONSONの「バンジョー」を初め後継の「スタンダード」やと卓上ライターなど。現代でも「コリブリ」等を含め、100円ライターに至る「全自動(着火消化がワンアクション)」タイプ。
ZIPPO、Dupont、Dunhillに代表される高級ブランドライターにわたる開閉が手動の「手動(蓋開け、着火、消火が全て別動作)」タイプ。
IMCO、とごく一部だろうと思われる半自動(着火はワンアクションで、消火が動作が別)タイプ。ガス式へ移行しても、この着火アクションは3種類がそれぞれ進化しているのを眺めているのも興味深い。
特に全/半自動タイプはアクションの機構がユニークなものが多くみられたので、熱心な収集家が存在するのも頷ける。

話を戻し、1920年頃からライターという着火道具が開発考案されて以降、各種メーカー/ブランドが独自の機構、独自のデザインのライターを切磋琢磨し開発し続けている。
ガスライターは1941年フランスで発明、1958年頃から世界的に広まり、RONSONをはじめ、Dunhill、Dhupontなど有名ブランドもこぞってガスライターを展開。今より60年程前なので現存するものも多く、現代とも変わらぬデザインが確立した頃ともいえると思う。
日本では吉永プリンス株式会社が国産初のガスライターを1961年に開発した。

RONSONの魅力

RONSONの魅力を語る場合、それは個々のライターの「密度」にあると感じている。
まずは上記の歴史に裏付けられた100年経っても揺るがないデザインを今も維持していること。そしてそのデザインも、金属の曲線で完結した造作なので、異素材が無い分シンプルで無駄がない。
ぎゅっと締まった姿の外側に、緩やかなカーブを描く自動機構部分。ZIPPOの堅牢なスクエアも、IMCOの簡素な円柱も良さはあるけれど、RONSONの優美かつ機械的な造形は独特の存在感がある。
RONSONブランドといえば「BANJO」「STANDARD」「VALA FLAME」の3種類が現在にも残るタイプであるが、これ以外にもおよそ網羅できないほどのバリエーションを持っている。自分で追えた範囲で紹介したい。

・卓上ライター
応接のローテーブルにクリスタルの灰皿と共に置かれたり、重工木製のエグゼクティブデスクの脇に鎮座する、拳ほどのサイズの大型ライターである。構造はシンプルで、全自動の機構にふくよかな胴体を持つ。胴にも曲線を用いた意匠が彫り込まれており、アールデコ調と呼ばれるデザインが多くみられる。サイズ感と調度品としての役割どおり、携帯するものではない。
RONSONでは「CROWN」といったシリーズ化したタイプもあるが、それ以上に多様なデザインが見られる。
船、車、戦車、バイクも見たことがある。素材も木材の胴、銀メッキ、真鍮メッキ等々、表面の刻印も一様ではない。1930~50年代に多く製造されたので、現存するものが少なく、画像も散見されるのでまとまった資料やカタログを探す楽しみもある。

・多機能ライター
RONSONのライターでも特に有名なのが「Pencil ligter」だ。ボールペンの頭にライターを組み込んでいて、ペンの機能を備えたライターである。現代でも見かけない造りだろう。デザインもアールデコ調の流れる曲線のデザインで、持ち運ぶよりも長めていたくなる姿をしている。
このほかに、煙草ケースの頭にライター、時計をお腹に抱えたライター、また「STANDARD」の外観でアトマイザー(ライターではない)も販売していた様子。

多彩なバリエーション

多機能以上に膨大なのが、そのデザインの多彩さです。主要3タイプを基に外装の多様性は果てしなさを感じるほどです。
革巻きは当たり前として、彫金、樹脂塗装、企業ノベルティ。あまりデザインの名称を知りませんが、それこそ洋服のデザインパターンの数程ある様子で、その日の衣装に合わせられる程のバリエーションは持っていたと思われる。
現在でも、企業コラボなどの素体としても使われているようで、100年前の躯体に現代の意匠がなされていることに感動を覚えた。

おわりに

結局RONOSONライター紹介記事になってしまったが、「良さを伝える」という語彙に詰まること多々あり、良い勉強となった。

またライター自体、「BANJO」の古いシンプルな機械感がコンパクトに掌に納まる感覚が快感でもある。「STANDARD」の落ち着いた佇まい。「VALA FLAME」の重工かつ曲線美を備えた姿。そのどれもがポケットに納まり、煙草と共に過ごせるという贅沢。今はRONSONによって満たされている。



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