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【第128回】スピッツ/ハヤブサ

以前毎年のように沖縄方面へ旅行していることを書かせていただいたけれど(第125回参照)、その旅行メンバー(以下、「愉快な仲間たち」と呼ぶ)にはテーマ曲があって、旅行に行くたびに旅先で流している。その曲というのはオープニング・テーマが「渡辺真知子/かもめが飛んだ日」、そしてエンディング・テーマが「渡辺真知子/迷い道」である。まあ、別に明確にオープニングとエンディングを聴き分けているわけではないのだけれど。きっかけは愉快な仲間たちと小旅行で伊豆に訪れた帰りの車で、調子にのってずっと上記2曲をリピート再生して帰ったことになる。旅行が終わってからしばらくは、頭の中でメロディーがぐるぐると流れ続けていた。それ以来我々にとっては欠かせない曲となっている。
どちらも哀愁漂う歌謡名曲だ。そしてどちらも別れた男への未練を歌っていて、絶妙な古臭さが旅行時のBGMにピッタリとハマる。「迷い道」は昔カーナビのCMで使われていた記憶がある。「1つ曲がり角、1つ間違えて、迷い道クネクネ」って歌詞が愉快な仲間たちのお気に入り。「かもめが飛んだ日」は曲の力強さがスゴい。真知子さんの迫力のボーカルと、良い意味でクサい歌詞が最高だ。「あなたが本気で、愛したものは、絵になる港の、景色だけ」という部分が、歌詞もメロディーもたまらない。皆様も真知子さんのこの2曲、旅のお供にいかがですか。
というわけで今回は、もうひとつのかもめの名曲、「放浪カモメはどこまでも」が収録されている「スピッツ/ハヤブサ」について書いていきたいと思う。このアルバムはスピッツさん通算9枚目のオリジナル・アルバムで発売は2000年、「フェイクファー」の次の作品だ。スピッツさんって明るいイメージが強いのだけれど、このアルバムは暗いというかシリアスな印象で、ちょっと別の顔のスピッツさんという感じがする。最初に聴いたときは少々面食らった。
特に顕著に感じたのは例えば「甘い手」。甘ったるい感じのバラードで6分超えという大作。さらには途中で何かの映画のワンシーンの音を挿し込んでいて、こういうのって今までのスピッツさんには無い演出な気がする。「宇宙虫」からの「ハートが帰らない」なんかもそうだ。「宇宙虫」がインストで「ハートが帰らない」の前奏みたいな作りになっていて、こういう手法も珍しい。そして「ハートが帰らない」もシリアスにバラードを歌い上げていて、それも含めて余りスピッツさんっぽくないなという感じがした。他にも「さらばユニヴァース」「Holiday」「俺の赤い星」なんかもシリアスだったり暗かったりで、ちょっと違和感があったかな。
ただ違和感は感じつつも「8823 」と「ホタル」はかなり好きな曲だ。「8823」は「ハヤブサ」と読むアルバムタイトル曲で、おとなし目の入りから、サビに入ると一気に疾走感が増して盛り上がるカッコよい曲。「トロピコ」とか「ガンダーラ」とかちょっと不思議な単語も魅力だ。「ホタル」は「小田和正」風のバラード曲。メロディーも歌詞もストレートに泣かせにきてる感じ。「生まれてから死ぬまでのノルマ」なんてネガティブな表現、今までのスピッツさんにあったかしらという感じ。この頃のスピッツさん若干病んでいたのかしら。
他の好きな曲としては、やはりかもめの名曲「放浪かもめはどこまでも」は良い。このアルバムで1番好きかな。この曲はスピッツさんらしい明るいパワーポップという感じの曲で、サビなんか聴いていて気持ち良くて流石だなぁと思う。後、明るい曲繋がりだとこのアルバムのシメの「アカネ」も爽やかな曲で良い。「ゴミに見えても捨てられず」ってパートのリズムが気持ちよくて好き。この歌詞も素敵よね。
激しめの曲では「いろは」が好きだ。この曲はギターが目立つ曲で、ギター・ソロがとてもカッコよい。どこがと言われると困るけれど、なんとなく「U2」のかほりを感じた。それから激しめの曲でもう一曲「メモリーズ・カスタム」。この曲は「色色衣」に違うバージョンで収録されていて、チャラいロックと表現させていただいた(第124回参照)。雰囲気はさほど変わらないけれど、「ハヤブサ」のバージョンはメロディー・パートが1つ追加されている。この追加パート、個人的には蛇足な気がしていて、「色色衣」バージョンのようにシンプルなほうが良いなと感じている。でもこのチャラめのロックは結構好きな部類だ。
それから「ジュテーム?」という曲、弾き語りの静かな曲なのだけれど、胡弓という珍しい楽器が使われていて、これが結構良い味を出してる。「ジュテーム」という情熱的な言葉をあっさりと歌い上げる草野さんも魅力だ。
以上がこのアルバムの感想になるけれど、初めにに書いたとおり、最初に聴いたときはスピッツさんらしさを感じなくて少々戸惑った。なんか大人で気取った感じがしてしまったのよね。ただ聴き慣れてくると、そこはやはりスピッツさん、良い曲をたくさん発見できて楽しめた。特に「放浪かもめはどこまでも」「8823」「ホタル」「メモリーズ・カスタム」はなかなかのお気に入りだ。ちょっと大人なスピッツさんもオモシロイなと。ただ、難しいのが8曲目の「宇宙虫」の存在で、個人的には曲というよりは効果音レベルの存在だ。この曲は聴いていて飽きてしまうのよね。これがないだけでかなり聴きやすくなりそうなのになぁと、自分勝手に思った次第である。

スピッツさん
大人になったね
8823(やや兄さん)

季語はスピッツ。

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