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【第61回】ベスト・オブ・ジョン・リー・フッカー

ベスト盤と聞くと安易な編集盤というイメージがあって、人によっては拒否反応を起こすという方もいらっしゃるのではないかと思う。その人の代表曲を手軽に聴けるという点では便利ではあるが、なんか上っ面しか知ろうとしていないかのような後ろめたがある。手軽に編集盤で金儲けに走っているような気もするし、あまり良いイメージはない。
しかし昔のブルース(に限らず?)のLPってSP(今でいうシングル盤みたいなもの)で発売されたものを寄せ集めて作られるのが普通だったので、LP用に録音したものってあまりなかったようだ。ベストと銘打っている「ザ・ベスト・オブ・マディ・ウォーターズ」や「ザ・ベスト・オブ・リトル・ウォルター」なんかはまさしくそれで、「ジミー・ロジャース/シカゴ・バウンド」や「アイム・ジミー・リード」みたいに「ベスト」と銘打っていないものでも、SPで発売された曲をかき集めて作られたものだったりする。当時のLPはそういった編集盤が多かったわけで、今でいうベスト盤とはちょっと趣が違うのかなと思う。
最近の所謂ベスト盤に話が戻るけれど、私はそこまでベスト盤に対する拒否反応があるわけではなくて、結構好きだったりする。例えば私が洋楽にハマるキッカケとなった「ザ・ベリー・ベスト・オブ・エルビス・コステロ」なんかはとてもバランス良く選曲されていて、今だに聴き飽きない名盤だと思う。ビートルズの赤盤・青盤なんかは今では歴史の教科書的な趣がある。
今回は古いブルースではあるけれど、そういった所謂ベスト盤について書きたいと思う。「シングス」「ブギー・チレン」に続いて3枚目のご紹介となる、ジョリ・深男のヴィー・ジェイ時代のベスト盤、「ベスト・オブ・ジョン・リー・フッカー」である。このLPは1956〜64年の間にジョリ様がヴィー・ジェイに残した曲から厳選した正真正銘の正にのベスト盤である。
ジョリ様と言えば唸るような弾き語りによるブルースが持ち味で、ディープなジョリ様ファンにとってはこの不気味ともとれるブルースが堪らないようだ。しかし、ヴィー・ジェイ時代のジョリ様はバンドを従えての演奏で、ディープなジョリ様ファンの中にはこの時代のジョリ様を好まないという話もちらほら耳にする。深いジョリ様愛。。
そんなジョリ様のヴィー・ジェイ時代でしかもベスト盤であることを考えると、このLPはあまりよく思われないのではないかと不安になるが、聴いてみるとこんなジョリ様も全然悪くないと私は思った。むしろ今までのジョリ様の中では1番聴きやすいし、入門編には最適なんじゃないかと思ったほどである。「ブギー・チレン」や「アイム・イン・ザ・ムード」「ホー・ボー・ブルース」といった過去のヒット曲の再録音のものや、「ディンプルズ」や「ブーン・ブーン」といった後に多くの人にカバーされた名曲が収録されており、まさに入門編に最適といった内容だ。
ちなみに以前聴いた「ブギー・チレン」はシャウト気味に「ボギチレン!」だったけれど、このLPでは「ブギチレン」とクールにキメるジョリ様である。さらに余談だけれども、「ブギー・チレン」のギターのイントロに歌詞をつけるなら「ワッチュ・ワナ・ドゥ、ワッチュ・ワナ・ドゥ」である。
さて、バンド編成になったことでジョリ様の不気味さ加減は若干薄味になった感じはするが、その分とっつきやすさは増して、私にはちょうど良い味付け具合かもなんて感じている。というわけでジョリ様の入門編として皆様にもオススメしたいLPである。
ちなみにどうしてもベスト盤に抵抗があるようでしたら、「アイム・ジョン・リー・フッカー(私はジョン・リー・フッカーです)」というヴィー・ジェイに移籍して最初のLPもオススメ。今回紹介したベスト盤と6曲ほどダブっていますが、その分ベストに近い内容のオリジナルLPである。

バンドでも
深い(フッカー)ブルース
オンリー(ジョンリー)ワン

季語はブルース。

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