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【第120回】スピッツ/インディゴ地平線

女性とセックスをしたことない殿方、いわゆる童貞さんのことを「チェリー・ボーイ」と言うけれど、なんで「チェリー」なのか気になったので調べてみたら、「「チェリー」は、「処女」「処女膜」を意味する。 これは、処女を失った時に出る血を、さくらんぼの色に見立てたと考えられている。「処女」の意味から派生し、アメリカの俗語では「童貞」の意味でも用いられる。」ということで、何故「チェリー」なのかというのははっきりわからなかった。血の色をさくらんぼに見立てるなら、「アップル・ボーイ」でも「トマト・ボーイ」でも、「ストロベリー・ボーイ」なんて可愛くて良いじゃないなんて思ったり。そもそも見立てる必要なんてなくて、そのまま「ブラッディ・ボーイ」としたほうが響き的にもカッコ良いじゃないか、なんて思ったりもしたけれど、アメリカ人からしたら生々しい表現だったりするのかな。やっぱりちょっと可愛げのある呼び名のほうが良いか。というわけで「チェリー・ボーイ」が正解という結論に達した。
なんてくだらないことを、スピッツさんの「チェリー」を聴きながら考えていた。私の中で「チェリー」は「チェリー・ボーイの恋の歌」という解釈をしている。「チェリー」は「ロビンソン」に次いで売れた曲らしいのだが、確かにメロディーは明るくて聴きやすいし、アレンジもストリングスとかホーン系の楽器を織り交ぜて手間をかけているし、「愛してる〜」なんて歌っちゃってるしで、まさに売るための曲を作ってみましたという感じだ。実際どうなのかは知らないけれど、狙って作れちゃうっていうのがカッコよいところ。逆に「ロビンソン」はあまり肉付けしている感じがしないので、そのままのスピッツさんのほうが、魅力が伝わると判断したのかもしれない。売り上げ枚数を見ると、どちらの曲もその判断は間違っていないわけで、プロデューサーってやっぱりスゴいなぁと思ってしまう。
今回はそんな売れまくり「チェリー」が収録されている「インディゴ地平線」を聴いてみた。これはスピッツさん7枚目のアルバムで、「ハチミツ」でブレイクした後のアルバムだ。私のようにハートの弱い人間だと、ブレイクした後なんてプレッシャーに押し潰されて、気合が空回りしてしまいそうだけれど、スピッツさんに限らず第一線で活躍している人達は、そんなプレッシャーをも力に変えちゃうんだろうね。
さて、アルバムは「花泥棒」からスタートする。とても短いパンク調の曲なのだが、私はパンクがあまり好きではない。この曲もあまり好きとは言えないのだけれど、「花泥棒」の後に流れる「初恋クレイジー」がスゴく良い。実際「初恋クレイジー」は大好きな曲であるのだけれども、「花泥棒」の後だとより際立って聴こえる。これは「花泥棒」が悪いということではなく、この2曲の相性が抜群に良いという意味である。この曲順ナイスだ。そういった意味で「花泥棒」は良い働きをしている。「初恋クレイジー」は爽やかポップ・ソングという感じの可愛い曲で、歌のメロディーからバックの演奏まで全てが大好き。途中のハーモニカも超良い味を出している。個人的にこのアルバムで1番のお気に入りだ。
そしてこのアルバムには、こんな感じの可愛い爽やかポップ・ソングが他にも3曲「ナナへの気持ち」「バニーガール」「夕陽が笑う、君も笑う」が収録されていて、私はどれもが好きな曲だ。この辺の曲って聴きやすいし、スピッツ・ファンさんの間で人気のある曲なのではなかろうか。知る人ぞ知る的な。「バニーガール」なんかは曲名がエロそうなのに、全然爽やかな曲なのだよね。エロスを期待していた人にはちと残念。ちなみに「ナナへの気持ち」は最初に女性の話し声からの笑い声が収録されている。夜散歩しながら聴くと一瞬ビビるので注意が必要だ。
他の好きな曲をあげると、アルバムの表題曲である「インディゴ地平線」、シングルにもなった「渚」がお気に入り。どちらもゆったりとした染みる曲だ。「初恋クレイジー」達爽やかポップ・ソングが可愛い表情を見せているのとは対象的に、この2曲の表情はちょっと分かりにくいのだが、聴いていてとても心地が良い。淡々と演奏しているようだけれどとても味のある曲で、スピッツさんの懐の深さを感じる。そして「渚」では自分のことを「ぼやけた六等星」なんて言っちゃう、弱気な草野さんも健在でステキだ。ちなみにこのアルバムの2〜4曲目に「初恋クレイジー」「インディゴ地平線」「渚」が並ぶ。私のこのアルバムにおけるゴールデン・タイムである。
逆にあまり理解できなかったのが「ほうき星」「マフラーマン」の2曲。「マフラーマン」は歌詞が少し面白いけど、やっぱりこの2曲は聴いていてちょっと退屈かなぁ。そして残る「ハヤテ」「虹を越えて」はあまり印象に残ってない。聴くと普通に良いと思うのだけれど、聴いた後どんな曲だったかいまいち思い出せないのよね。退屈な曲と、記憶に残らない曲、果たしてどちらが曲として良いのかね。実際この4曲だと、1番印象に残っている曲は「マフラーマン」ではある。
実は感想文を書く前のこのアルバムの印象はとても地味なものだった。改めて聴きなおしてみて、「初恋クレイジー」を始め爽やかポップ・ソングが多く収録されていた事に驚いた。さらには売れまくり「チェリー」も収録されているのに、なぜ地味な印象を持っていたのだろう。それに「インディゴ地平線」「渚」の良さには全く気づいてなかったし。改めてこのアルバムを聴いて、つくづく私の耳は節穴だなぁと思った次第である。

改めて
スピッツ良い音(インディゴ)
聴けんねん(地平線)

季語はスピッツ。

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