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【第106回】ハウリン・ウルフ/ザ・リアル・フォーク・ブルース

最近の映画館って完全予約制で席が埋まった時点で入れなくなっているけれども、確か私が中学生か高校生位までは立ち観というものがあって、人気の映画だと映画館の1番後ろとか左右の端っこに立ち観のお客さんがいっぱいいた。私もその頃何度か立ち観を経験しているけれど、今でも1番覚えている立ち観映画は「ケヴィン・コスナー」主演の「ダンス・ウィズ・ウルブズ」という映画だ。この映画は南北戦争時代のネイティブ・アメリカンとある白人との交流を描いた作品で、凄く良い作品なのだけれども、上映時間が180分あって立ち観がホントにしんどかったのを覚えている。立っているのがしんどいのだけれども映画は観たいというジレンマ。観終わると足はパンパン、感動の涙で顔はダクダクとよく分からん状況である。かなり有名な作品ですので、観ている方も多いかと思いますが、まだ観たことない方いらしたら是非ご試聴ください。180分立ちっぱなしでも観る価値のある映画です。
そんなわけで今回は「狼と踊る男」の話ではなく、「吠える狼」こと「ハウリン・ウルフ」のLPを聴いてみた。前回は「ジョン・リー・フッカー」の「ザ・リアル・フォーク・ブルース(LP名は「マッド・マン・ブルース」」だったけれど)、今回はウルフ氏の「ザ・リアル・フォーク・ブルース」である。ウルフ氏がチェス・レコードで出した3枚目のLPだ。録音時期は1956〜1965年、ちなみに1stの「モーニン・イン・ザ・ムーンライト」(第51回参照)が1951〜1958年で、2ndの「ハウリン・ウルフ(ロッキン・チェア)」(第13回参照)が1957〜1961年の録音となり、このLPはウルフ氏のブルース人生のより後半の時期を網羅している。
さて、このLPを聴いてまず印象に残るのは「300・パウンズ・オブ・ジョイ」という曲である。この曲はロックンロールになるのだろうか、「ジョン・トラボルタ」と「ユマ・サーマン」が踊り出すようなリズムに、頭に残るキャッチーなボーカルと、とてもお茶目なウルフ氏である。ウルフ氏のキャラクターとはイメージが違うけれど、実はウルフ氏ってポップな曲を結構演っていて、この曲はその中でもポップさが際立っている。この曲だけでなく、「モーニン〜」や「ロッキン・チェア」に比べても、このLPはとっつきやすい曲が多いと思う。ウルフ氏の特徴的なダミ声は、当然ズブズブのブルースを歌うとカッコ良いけれど、こういったポップな曲でも妙にマッチするから不思議だ。
ちなみにこのLPも「モーニン〜」も「ロッキン・チェア」も、この時期のウルフ氏(に限らず)のLPはシングルで発売されたものを寄せ集めて編集されたものだ。人によっては纏まりがないとか、録音の質が違うという風に感じる人もいるようだけど、私はあまり気にならない。私のブルース・スキルではウルフ氏のダミ声を聴くだけで、もうウルフ氏の世界だなとなってしまうからだ。このLPではサックスが入っていたりもするけれども、ウルフ氏のダミ声の前にはそんなの関係ないぜという感じだ。
こんなこと書くと、またどのLPも同じ様に聴こえるとか言い出すんじないかと思われそうだけれど、ウルフ氏の場合は不思議と全くそんなふうには感じない。どのLPもそれぞれ特色があって面白い。ウルフ氏はこれ聴いとけばもういいよねと言うのが全くないのだ。しかも私が聴いた3枚のLPはどれもカッコ良くて、聴きごたえがあって全てオススメだ。
今まで私はウルフ氏は名盤と名高い「モーニン〜」と「ロッキン・チェア」さえ聴いておけば十分でしょなんて思っていたのだけれど、この「ザ・リアル・フォーク・ブルース」で久々にウルフ氏を聴いて考えを改めた。そしてウルフ氏にはもう1枚、同じ時期の録音を集めたLPで「モア・リアル・フォーク・ブルース」というのがあるので、これもまたいずれ聴くべきだなと決意した私である。

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ブルースの世界
ウルフン紀行(聴こう)

季語はブルース。

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