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【第58回】マジック・サム・ライブ!

ライブの雰囲気を味わえるという意味でライブ盤はとても便利なものだ。特に私が最近よく聴くようになった音楽は古めのブルースが多く、大概の方が亡くなってるので生音で聴くことができない。まあそもそも私は人混みが嫌いなのでライブ会場とか苦手だし。それに私は人見知りをしちゃうので、よく知らない不特定多数の人たちと喜びとか悲しみを分かち合うということが苦手なタイプである。よくテレビでスポーツ・バーの映像が流れていたりするけれど、知らない人たち同士が盛り上がってる姿を見ると「ハードル高ぇ〜」と思ってしまう。
音楽から話は逸れるけれど、私はサッカーが好きで、一時期よく会場に足を運んでサッカー観戦をしていた。特に贔屓のチームがあるわけではなかったので、近場で観れるいろいろなチームの試合を観戦するというスタイルだ。
ある試合でホーム・チームがアウェイ・チームに2点をビハインドという苦しい展開の試合があった。後半になってホーム・チームが1点を返してすぐさま同点、試合終了間際には逆転ゴールを決めて試合をひっくり返してしまった。「こんな劇的な試合観れてラッキーだなぁ」なんて思っていたら、隣に座っていたホーム・チームのユニホームを着たおっさんが興奮して、あろうことかこの私にハイタッチを求めてきた。
「え〜〜、おっさんとハイタッチとかありえないんですけど〜」と思いながらも、おっさんの喜びに水を指すのも可愛そうだなと思い、顔を背けながらハイタッチをしてあげた。その時も「ハードル高ぇ〜」と感じてしまった。
今回はそんな壁ありな私に便利なライブ盤「マジック・サム・ライブ!」を聴いてみた。このライブ盤は2枚組となっており、1枚目は1963/64年の「アレックス」というクラブでのライブ、2枚目は1969年の「アン・アーバー・ブルース・フェスティバル」でのライブで構成されている。元は観客が録音したカセット・テープが出回っていて、それをレコード化したものらしく、確かに聴いてみると音が良いとは言い難い。ギターの音とかギンギラギンで、割れちゃってたりしている。聴きにくいっちゃあ聴きにくいが、熱気が伝わってくるっちゃあそうとも言える。
ちなみに2枚目の「アン・アーバー」の方は大半が「ウェスト・サイド・ソウル」に収録されている曲を演っている。そして1枚目の「アレックス」のほうはほとんどが未経験の曲達であった。なので知っている曲の多い「アン・アーバー」のほうが良いかなと思いきや(私はライブ盤は知っている曲が多いほうが楽しめるという持論がある)、実際聴いてみると意外に「アレックス」のほうがなにかクールな感じがして好みだった。「アン・アーバー」のほうは勢いは感じれたんだけれど、気合が入り過ぎているのか忙しない感じがして、これなら「ウェスト・サイド・ソウル」を聴いたほうが良いかもなと思ってしまった。「アレックス」のほうはリラックスしているのか、余裕が感じられて落ち着いた演奏を聴くことができたかなと。知らない曲の中にも「ユー・ワー・ロング」などカッコいい曲も発見できたし。そのためどちらかというと「アレックス」のほうをよく聴いている。
まあライブ盤を聴く意味ってライブの雰囲気を味わうというのがあるわけだから、「アン・アーバー」の荒々しさは全然ありなんだけどね。それに「アン・アーバー」のときのドラムって、その場で助っ人をお願いして叩いてもらったらしく、そんなエピソードを聞くと一度はそのライブを、LPでとはいえ体験してみたくもなるってもんだ。そんなわけでマジックさんを好きな方は是非一度は体験してみてください。結構有名なライブ盤なのでマジックさんを好きな方は皆さん試聴済だと思うけれど。

さり気なく
ブルース・ギターが
ギンギラギン

季語はブルース。

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