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【第95回】ギター・スリム/ザ・シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ

私だけのような気もするが、その芸名からどうしても「ギター侍」を連想してしまう「ギター・スリム」について今回は書いていきたいと思う。この人はスペシャルティというレーベルに在籍していた頃が、音楽的に充実していた時期らしいのだが、私が今回聴いてみたLPは、その頃の選曲集と思われる「ザ・シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ」というLPだ。ギタスリさんの良いとこばかりを集めたLPというわけである。
このLPのジャケットに写るギタスリさんはなんだかとっても眠たそうな顔をしている。そしてデザイン的にも田舎の、のどかでゆったりとした雰囲気を感じる。このジャケットから漂ってくるのは「ジミー・リード」のようなのんびりとした、良い意味で力の抜けたブルースという感じである。
そんなイメージを持って聴いたギタスリさんなのだが、それはまったく間違ったイメージであった。収録されている曲の多くはスロー・ブルースなのだが、ギタスリさんのボーカルはかなり気合が入っている。感情が込もっていて、かなりロックな歌い方なのだ。そのためか最初聴いたとき、「ローリング・ストーンズ」が演奏していても似合いそうだなと思った。「ボー・ディドリー」は自分の名前を連呼していたけど、この人は「ギター・スリム」という自己紹介のような歌を歌っているので、ロックンロール寄りの人だったのかもしれないね(ロックンローラーは自分大好きという私の勝手な先入観)。
聴きどころはやはりギタスリさんのヒット曲であり、このLPのタイトル曲でもある「ザ・シングス・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ドゥ」になるだろう。渋くて泥臭いカッコよいスロー・ブルースだ。ただこのLPにはこれ系の曲が多く収録されていて、どれも良いとは思うのだが、雰囲気も似ているので聴いていて飽きてしまうかもしれない。私はA面はまだ良いとして、B面になるといまいちどんな曲だったかが曖昧になる。多分「ザ・シングス〜」系の曲を演っているのだろうとは思うのだが。まあ、ギタスリさんの良いとこ取りみたいなLPなのでどの曲もカッコよいですけどね。たまにロックンロール風味の曲が聴けたりもして楽しめます。
それからギタスリさんはブルースマンにしては珍しくギターにエフェクトをかけている。このエフェクトに加えて、ギターソロもガンガン弾いていたりするので、それもあってこの人のブルースにはロックを強く感じるのかもしれない。やはり私にとってギタスリさんは、聴けば聴くほどロックンローラーというイメージなんだよなぁ。
そういえばこの人、早くに亡くなったこともあり活動期間が短めで、更に音楽的なピークも1953〜55年頃だと言われている。太く短い人生だったようでそういった部分でもロックンローラーをイメージさせる人である。因みに和製「ギター・スリム」こと我らが「ギター・侍」も音楽的(?)ピークは短めであったが、その後の活動もしぶとく長いので、ロックンローラーという感じは全くしない。残念。

ブルースに
ゴマすり(ギタスリ)不要
太く短く

季語はブルース。

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