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【第84回】エルモア・ジェイムス/サムシング・インサイド・オブ・ミー

ここで何度か書かせていただいているけれど、私は集中力が続かないこともあり、LPは収録時間が短めのほうが楽しめる。あまりに長いと最後のほうグダグダになってしまう。2枚組とか言われると聴く前から気後れしてしまうという程のハートの弱さだ。そんな軟弱者の私が今回なんと3枚組のLPに挑戦してみた。しかもベスト盤の「ダスト・マイ・ブルース(以下「ダスマイ」)」(第14回参照)で、これでもかというほど聴かされたブルーム調に辟易してしまったあの「エルモア・ジェイムス」である。LP名は「サムシング・インサイド・オブ・ミー」、エルモアさんの後期(59〜63年)のファイア/エンジョイに吹き込まれた全46曲、3枚組のLPだ。
「ダスマイ」のこともあり、最初は全然興味はなかったのだけれど、「エディ・テイラー」とのカップリング盤「サウス・サイド・ブルース」(第40回参照)のエルモアさんがなかなかカッコよかったので、もう少し突っ込んで聴いてみたいなと思っていた。そんなときに結構安く(2,700円!)この3枚組のLPを見つけたので、思い切って購入したというわけである。
3枚合わせて150分近くあるので、「あっという間に聴けちゃった」とは口が裂けても言えないが、でもエルモアさんを「ダスマイ」だけで済まさなくて良かったなと思える内容である。ブルーム調を使っている曲はやはり多いのだけれど(それだけブルーム調の影響力って大きかったのだろうね)、「ダスマイ」のときほどそればっかりと言うわけではない。結構いろいろな曲調のエルモアさんを聴くことができる。私としてはやはり「スカイ・イズ・クライング」のようなスロー・ブルースに惹かれるけれど、「ストレンジャー・ブルース」なんかは後に「ビートルズ」や「ローリング・ストーンズ」に繋がっていくのではと思わせる曲で興味深かった。アーバン・ブルースのような曲も結構あって、ブルーム調だけじゃないぜという感じだ。
と、ここまでは1枚目と2枚目までの感想だ。3枚目に入ると若干様子が変わってくる。「サウス・サイド・ブルース」で気づいたことだけれど、エルモアさんって叫ぶようなボーカルと力強いボトルネック・ギターがとても魅力的でカッコよい。そういった意味でも1枚目と2枚目についてはそんなエルモアさんを十分に堪能することができる。しかし3枚目に入るとギターが控えめになってしまい、なんかエルモアさんがおとなしくなって、迫力がなくなってしまった気がするのだ。
しかも3枚目って録音風景をそのまま収録していて、話し声とかもガンガン収録されている。さらにLPの最後には淡々と会話をしているだけの模様(たまに大きい声が聴こえてビックリする)が収録されているのだ。エルモマニアからしたら貴重な音源になるかもしれないけれど、私としてはぶっちゃけ曲だけ聴ければ良いのになぁ、なんてことを思ってしまった。まあこのLPって録音順に収録されていて、3枚目に収録されているセッションの後、程なくしてエルモアさんは亡くなってしまっている。それもあって、最後のセッションはそのまま収録しましょうよ、というプロデューサーの心意気という感じなのかもしれないね。
そんなわけで3枚目はオマケと考えても、1枚目と2枚目はエルモアさんのとても充実した録音が聴けて、長くはあるけれどその分聴き応えのあるLPであった。「ダスマイ」を聴いたときは、エルモアさんてなんでこんなに人気があるのだろうと不思議に思っていたけれど、このLPと「サウス・サイド・ブルース」を聴いてなんとなくその理由がわかった気がした今日この頃である。

エルモアの
ブルース・ブルーム
だけじゃない

季語はブルース。

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