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【第81回】ザ・ブルース・ワールド・オブ・リトル・ウォルター

LP名には「リトル・ウォルター」の名前、そしてジャケットには「リトル・ウォルター」の顔のアップということで、どこからどう見ても「リトル・ウォルター」のLPにしか見えないのだが、実は違う。このLPは「マディ・ウォーターズ」「リトル・ウォルター」「ベイビー・フェイス・リロイ」という1950年当時のマディ・バンドによるセッションが8曲(ボーカルはリトル氏とリロイ氏が4曲づつ歌い、マディ親分は契約上の関係で歌っていない。が、たまに唸り声が聴こえる)と、そして「J・B・ルノアー」の1950年の初レコーディング・セッションが3曲、「サニーランド・スリム」というピアニストの曲が2曲(こちらは1950年のセッション)という構成のLPとなっている。
そしてライナーノーツやガイドブックによると、このLPに収録されているマディ・バンドの吹込みは、それまでマディ親分の、バンドによるレコーディングに前向きでなかったチェス・レコードが、これを聴いてからバンドによるレコーディングをすることを決心したという、貴重なキッカケを作ったセッションであるということらしい。つまりこのLPでのマディ・バンドは、マディ親分が歌っていないのは残念であるのだが、初期の頃のマディ・バンドのブルースが聴けるということで、とても貴重なLPであるというわけだ。
そんなわけでマディ・バンドがカッコよいのは当然のこと、ルノアーさんはハイトーン・ボイスに渋いブルースが絡み合ってカッコよいし、サニーランドさんは聴いたことがなかったけれども、彼もマディ・バンドで活動していたことがあるうえに、バックのギターはまたまた登場の「ロバート・ジュニア・ロックウッド」であるので、安定して聴くことのできる安心のLPである。
正直に言ってしまうと、A面2〜3曲目に収録されているマディ・バンドの「ローリン&タンブリン」のパート1とパート2は、ちょっと聴いていて飽きてしまったけれど(パート2は唸り声だけだし)、その他は全体的にスロー・ブルースが多くて、じっとりと聴ける渋いブルースを楽しめる、期待通りの好盤である。
ちなみにサニーランドさんのボーカルはハリ艶があって、まるで20代のお肌のような声質をしている。「メンフィス・スリム」もそんな感じのボーカルだったんだけれども、ブルース・ピアニストってそういう声質の人が多いのだろうか。あまり泥臭さは感じ無いのだけれども、芯の詰まったとても力強い良い声だ。
そんなわけで初期のマディ・バンドの貴重なセッションを聴けるということも含めて、それなりに楽しめたLPではあったのだが、しかしルノアー3曲、サニーランド2曲というのはやはり、その人のブルースを堪能するという意味では曲数が少なすぎるね。堪能する前に終わってしまい消化不良に感じてしまう。やはり私にはオムニバス的ものは肌に合わないようだ。せめてカップリング盤くらいの曲数は欲しいなと思ってしまった。ルノアーさんは「ア・メモアー・フォー・ルノアー」(第56回参照)で堪能するとして、そのうちサニーランドさんオンリーのLPも購入して堪能してみたいなぁ。

ブルースを
バンドで表現
まず(マディ)やろう

季語はブルース。

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