(公開シナリオ)実録:老害系男子の日常:オンライン投票編

Online Writers' Clubの名物キャラとなった色彩の強い老害系男子シリーズの記念すべき第1作です。ご案内の通り、撮影中に台本は多少手直ししているので、台本と動画は微妙に異なります。


○オペレーターと自宅
   
   山田(70)は自宅の自室。
   繭子(25)は白壁が背景。   

繭子「こちらはオンライン投票システム、ヘルプ
  デスクの鈴木繭子と申します。投票うまく行
  っておられませんかね?」

山田「うまく行ってないから電話しとんの。何言
  ってんのあんた?」

繭子「すいません。あの投票システムにはログイ
  ンできておられますか?」

山田「ログインて何?」

繭子「いえそのログインというのは…。あのログ
  インがお分かりになられないんですか?」

山田「だから分からんから聞いとるの」

繭子「投票システムのURLはご存知ですか」

山田「URLて何?」

繭子「えっとそうしましたら、まずグーグルなど
  の検索エンジンで…」

山田「だからURLて何?」

繭子「それはうまく説明できませんので、まずは
  検索エンジンで」

山田「なんや説明できん言葉使うてからにアホた
  れが。で、検索エンジンて何?」

繭子「検索エンジンをご存知ない。あの、パソコ
  ンやスマートフォンをお使いになったことは
  ないんですか?」

山田「一度もないねえ」

繭子「それでしたら、ちょっと、今回の投票は厳
  しいかもしれませんね…」

山田「はあ?ワシ、投票できんて言うとるの、あ
  んた」

繭子「はい…。大変申し訳ないんですが、今回の
  選挙からオンライン投票のみとなりましたの
  で、パソコンがお使いなれないのでしたら…」

山田「何言っとるのあんた!パソコンが使えない
  と投票できんてあんたそれ憲法違反よ!自分
  が何言うとるか分かっとるの」

繭子「そう言われましても、今回の選挙からは…」

山田「おい小娘!ワシが投票できん言うとるの?
  こんなこと許されてええんかいな?あんた自
  身としてはどう思っとるのよ!」

繭子「私自身ですか…」

山田「そうよ、あんた自身の考えよ!」

繭子「私自身としては…しょうがないかなと思い
  ますね」

山田「はあ?」

繭子「だって、このご時世にパソコンを一切使え
  ないわけですよね。そんな方に投票する資格
  あるのかなって」

山田「あんた、ワシはパソコンは使えんか知らん
  けども、あんたよりも遥かに経験や判断力が
  優れとるのよ!その人生の先輩に向かってケ
  ツの青い小娘が…」

繭子「でもパソコンが一切触れないってことは今
  の時代、社会参加してないってことですよね。
  それだったら投票する資格が」

山田「バカモン!パソコンが社会とでも思っとる
  のか!これだから最近の若造は!」

繭子「す、すいません。大きい声を出される方の
  お相手は致しかねます」
  
 繭子、唐突に画面から落ちる。

山田「ふう。逃げよったか。意気地なしが」
   
 山田、ニンマリと笑い、急にキーボードをカタ
 カタ打ち始める。

山田「いや〜。良い時代になったモンだねえ。タ
  ダで女の子の顔を見ながら説教が楽しめる。
  さてさて、お次はYouTubeで由美かおるの入
  浴シーンでも見ますか」
 
 山田、キーボードを打ち続ける。

          (了)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?