OWCモノローグ)貧者のモノローグ by 花緒

社会に馴染めず生きてきました。
いじめを受けたこともありました。
いじめについて語りたいとは思いません。
いまだに思い出すと、心臓が締め付けられて、身体が石のように重くなってしまうからです。
 
親には相談できませんでした。
先生は、いじめられる側にも問題がある、と言いました。
 
いじめられる側の問題…。
何度言われたか分かりません。
 
確かにいじめられる側の問題は明白でした。
 
私は生まれつき数学が得意で、
小学生の時から、微積分や行列を理解することが出来ました。
差分方程式を解くことも出来たし、
ヴァリアンやマスコレルといった数理経済学の教科書を読みこなすことも出来ました。
 
同級生から勉強を教えてくれとせがまれることもありました。
そんな時、私は「何が分からないのかが分からない」と口走ることがよくあったのです。
 
 
ファッションの面でも目立っていました。
小さい時からモデルをやっていて、
かなりの額を稼いでいたので
マルタンマルジェラとか、ルシアンペラフィネといった
他の子供とは明らかに違うのをよく着ていました。
 
イオンでまとめ買いしたような服を着た子供達からよく石を投げられました。
でも私はルシアンペラフィネを辞めて、イオンの服を着たいとはどうにも思えなかったのです。
子供ながらに、第一線で活躍するデザイナーやアーティストとの交流があって、
私には着たいものを着る権利があると信じるようになっていたからです。
 
 
社会でうまくやれる気はしませんでしたよ。
だから、ブロックチェーンを活用したDAO(ダオ)と呼ばれる新しいタイプのオンラインコミュニティを立ち上げました。
一定の条件を満たせば、誰もが共有財産の所有権を主張できて、
じぶんのものはみんなのものであり、みんなのものはじぶんのものでもある、というような新しいタイプのコミュニティです。
しかし、そのプロジェクトは上手くいきませんでした。
なぜなら、後からやってきた貧しい人たち、思想を理解しようともしない不勉強な人たちが、只々、自分の権利主張ばかりをするようになったからです。
 
 
私はコミュニティを捨て、普通にファッション関係で起業して、普通にIPOして、普通に巨万の富を得ました。
すごい資産を作ってしまいましたから、寄付しないんですかって、よく言われますよ。
 
貴方の能力は貴方だけのものじゃないはずですよね?
社会からの様々なかたちでの支援があって成立したものですよね?
だったら、社会に還元したらどうですか?、とよく言われるのです。
 
私だって、そうありたいと思っています。
しかしね、私に悪意を向けた人たち、石を投げてきた人たちのために、
どうして私が還元しなければいけないのか、感情的にうまく折り合いがつかないのです。
 
 
私の存在が、持たざる者たちの心を意図せず傷つけてきたことは理解しています。
ある意味では、私は誰よりも加害者だったのでしょう。
でもその報いは、悪意というかたちでもう十分すぎるくらい受けてきましたし、許しを請わなきゃいけない立場とも思っていません。
 
 
私はこれからお金を配りたいと思います。
私のお金は生まれつき恵まれた人たち、生まれつき豊かな人たちの支援に充てたいと思っています。
生まれつき恵まれた豊かな人たちだけが、私に石を投げず、時として手を差し伸べてくれたからです。
そして生まれつき恵まれた豊かな人たちは、私がそうだったように、きっと今でも困っていることがあるだろうと思うのです。
 
私は自分が正しいとは思っていません。
しかし、何がどう間違っているか、私を納得させることのできる豊かさが貴方にはあるのですか?
 
 

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