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自動運転バスで町おこし!

人口約2万4000人の小さな町・茨城県境町は、2020年11月26日に自動運転バスの定常運転を開始した。導入されたバスは、フランスのナビヤ社製「ナビヤ アルマ(NAVYA ARMA)」3台。1台の外装には、境町とソフトバンクの子会社・BOLDLY(ボードリー)が、近隣を流れる利根川をテーマに一般公募したデザインを採用。ほかの2台の外装や座席のカバーには、境町出身のアーティスト・内海聖史氏が制作したキービジュアルが採用された。同時に2台を運行し、その間に他1台の充電やメンテナンスなどを行なう。

境町は地域内の公共交通インフラが脆弱で、住民が高齢になっても運転免許の返納ができないという課題を抱えていた。2020年1月に町議会で自動運転バス導入に向けた予算が承認され、同年11月26日に利用料金が無料のバスの公道での定常運転が始まった。運行体制の構築業務はボードリーが、運行管理はセネック、車両のメンテナンスはマクニカが受託した。2021年11月末の時点で、累計の利用者は約5300人、運行距離は約1万4525キロ、自動走行比率は公道で平均73.5%に達した。2021年10月に駐車場で接触事故が発生したが、自動運転システムに起因するものではなかった。

ナビヤ アルマの最大乗車定員は15人だが、境町では定員を11人と定めて運行(新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、2021年11月時点では9人)。運行をサポートするオペレーターが常に1人同乗する(はじめは、監視員も乗っていた)。緊急時には、ゲーム機に使用されるコントローラーでバスを操作する。バスは、登録された地図情報とGPSによりバスの位置を把握し、指定されたルートに沿って走る。運行状況をリアルタイムで監視する遠隔監視センターも設置され、2台のバスの状況を、自動運転車両運行プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」でチェックしている。バスが走る路線は2系統あり、「道の駅さかい」をターミナルとしている。1つは、東京への直行バスが発着する「高速バスターミナル」を結ぶ約8キロのルートで、ショッピングセンターや高校などを経由する。もう1つは「猿島コミュニティセンター」を結ぶ約7キロのルートで、医療施設や育児施設を通っている。どちらの路線も、銀行や町役場、小学校を経由する(運行開始当初は、「河岸の駅さかい」から「シンパシーホール(勤労青少年ホーム)」までの片道約2.5キロの1路線を1日8便、時速18キロで運行していた)。最高速度20キロで運用されているバスは、交通量の多い町内を南北に走る県道17号線や、東西に走る県道137号線は走行しない。渋滞が発生し後続の自動車が無理に追い越すこともあったが、バス停の間隔を狭めて停車時に追い越しやすくするなどの工夫を重ねた。バスの通るルートが認知されることで、急ぐクルマは別の道路を使い渋滞を回避するようになった。

自動運転バスがメディアに取り上げられることで、境町のブランド力は向上。ふるさと納税の伸びや移住促進にも貢献している。バスの運用にかかる費用は、準備期間を含む2020年4月から2025年3月までの5年間で約5.2億円。2021年度からは、事業費の2分の1に地方創生推進交付金を充てられるようになり、残りは境町の予算でまかなっている。ボードリーは、広告効果や視察、寄付の増加などを金銭換算すると、開始からの2年間で約7億円になると試算している。境町は、スマートフォンで乗車の予約を可能にするなどして、運行路線を拡大していくことを計画している。観光スポットの1つ「河岸の駅さかい」では、バスをモチーフにしたお土産品が売られるようになった。

NAVYA - モビリティソリューション - マクニカ

※ 見出し画像にはPixabayのフリー素材を利用しています。

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