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【Kozapetti’s Splash Culture Guide】号外特別編!!VR音楽映画、特別解説!!!

VRオワリズム弁慶の企画・監督(美術・ギター)を担当した小澤です。
遂に【全天球映画 オワリズム弁慶 幻夢大演舞 -(un)ExtraVERSE-】が完成。上映終了しました。ご鑑賞頂き、本当に有難う御座いました。
完成したのは上映前日。当日も技術面の検証やトラブルあり、ばたばたの毎日でした。
本当は会場にこのブログの内容のフリーペーパーを置きたかったのですが、直前及び当日もスタッフ稼働しており作成できなかった為、こちらのブログを公開といたします。

1.制作の経緯

このプロジェクトは、コロナ禍で八方塞がりになった3密バンド、「オワリズム弁慶」が、同じく苦境に立たされるライブハウスでの表現を、VRを用いて達成することを目的としたプロジェクトです。詳しくは、Forbesにてインタビューがありますのでこちらご覧ください。

今回、技術面と演出面(ネタバレ含む)について、ご紹介いたします!!

2.技術面での挑戦 実写×CGのクロスオーバーと上映システムの構築

制作メンバーはそれぞれ畑違いの20代後半〜30代前半のクリエイター。
各々の知見を活かし、完成と上映に向けて切磋琢磨しました。

①VR映像の制作

実写パートはInsta360 TITANで撮影。カメラマンと編集はsawanofromhellが担当。
CGパートはUnityで空間とアニメーションを構築し、グリーンバックで撮影したメンバー演奏素材を組み合わせ、CG空間内に360カメラを設置し撮影→MP4書き出しを行いました。ここは天才三日坊主さんの素晴らしい空間ですね。

CGパートのテックについては、テクニカルバイザーのこたうちさんさんのコラムにて詳しい記述があります。この記事は累計2万近いPV数を獲得しています!

②上映システムの構築

今回、20台のオキュラスを同時再生し、音声のみ5.1chスピーカーで鳴らすシステムを構築する必要がありました。
HMD(オキュラス)にMP4データを保存し、マザーのPCからHMDへ再生信号を送り、マザーPCに5.1chのオーディオインターフェースをつけ、そこからライブハウスPA卓に音声信号を送り、スピーカーへ出力される仕組みとなります。再生ボタン一つで、20台のオキュラスと5.1chスピーカーの出力が対応可能となりました。
どうしても動画と音のズレが発生してしまいましたが、PA側でズレの補正作業をアナログ操作で粘り強く行いました。音声MixのKazuaki Kondo氏は本当に頑張ってくれました。ライブハウスでの轟音上映を醍醐味とし、目標達成の為に様々な方の力を借りて、このシステムを構築しました。

メンバー上映会の様子
オキュラス20台
5.1chの音響チューニング

3.VR音楽映画としての演出プラン:VRの特性を生かした演出の構築~没入感と主観へのアプローチ~

このプロジェクトをスタートさせようと思った時、VR映像の演出と2D映像との演出とは全く違うプランが必要であることがわかりました。
以下、3つの項目をクリアする事を目標としました。

①いかに顧客を没入させるか
 →カット割を極力減らす
 →現実から徐々に異空間へとシフトさせる
(いきなりCG等の異空間だと没入感が減ると考えた)

②過度なカメラ演出はVR酔いが起きる
 →カメラ移動は極力しない。してもかなりゆっくり行う。
(25分の本番で、体調不良者は0人であった)

③VRでしか出来ないアプローチの作品をつくる
 →ライブそのままの映像では生ライブに勝てない。絶対にVRでしか出来ない映像パフォーマンスを行う。

この3点を考慮し、「VR音楽映画」と銘打った作品の演出プランを構築しました。

以下ネタバレ含む!!!




①イントロダクション

ここでのテーマは「実写VRの中で、2Dの映像を見せる」です。
会場のライブハウスでも、スクリーンを下ろした状態で上映。本編のスタートは、同じライブハウスに設置されたスクリーンにプロジェクター投影のように2D映像を流すことで、「会場のプロジェクターが始まった」と現実とのリンクを導入のアプローチとして図りました。また、テスト上映時に意外と正面以外見ないことがわかり、視線と音の誘導のガイダンスを急遽作成しました。

※こちら技術的に諸所問題があり、3日目のみの上映となりました。誠に申し訳御座いません。希望者にはYouTube等でお見せする手段を考えますので、改めてお知らせください。

②百鬼夜行

ここでのテーマは「実写VRで実写パフォーマンスを1カットで行う」です。
①のアプローチから続く空間内で、没入感とVR酔いを起こさない為に、カメラ移動無し、カット割り無しの演出。立ち位置は5.1chのMixを考慮しながら丁寧に割り振り、演者の動きと照明プランを平面図とスタジオ練習で検証を繰り返し行い、演出を構築しました。
また、主観(視聴者)に対するアプローチ(目線やアクション)を徹底して行いました。次の曲でも同じような検証を繰り返し行いました。

③酒呑童子

ここでのテーマは「実写での非日常。時間と空間の変化」です。
寺でのロケを行い、寺内外を出入りするごとに時間と空間に変化を与える、映画の世界に入ったようなアプローチを目指しました。

導入の寺内のシーンは白黒に(非日常)。寺の外では、画面に少しエフェクトをかけて彩度を落とし、次の寺内のビビットな照明との緩急をつけています。最後のオチメロ部分からは一気に生な画質に持っていき、次の夜になった寺外シーンの白色の照明へ導入しています。

またカメラ移動の際、お神輿に担がれているような感覚にしたく、カメラ用のお神輿を手作りで作成しました。

④七転八万起

ここでのテーマは「重力のあるCG空間の中で、2D画面メインでの演出」です。わかりやすくThis is VRを表現する為に、サイバーパンクな空間を構築。
実写のような演者からのアプローチは出来ない為、VJを空間内に多数配置することで、画作りと演出を行いました。

最初は狭い空間で、小さい画面を見ていますが、メカの手に乗り上に上がると視界が抜けて、大画面が四方に配置されたステージへと案内されます。遠近感と奥行きの変化の演出を行なっており、最後は花火の光と共に宇宙空間へといざないます。
また、VJとは別に反射の光や、水の揺れを動かし続け、空間に細かい変化を与え続けることで、映像にリアリティと視聴者の没入感が増す効果を演出しています。この「些細なものが動き続ける」という変化は次の曲のCG空間にも採用しています。
CG空間は三日坊主氏(阿修羅共)、メインVJは奥山太貴氏、ビルのプロジェクションマッピング風VJは私が担当。
弁慶號のデザインは井上駿希が担当。(奥山くんと井上はオワリズム弁慶に入る前からの友人です。)

⑤阿修羅

ここでのテーマは「空間の変化、3Dの無重力(浮遊感)」です。
導入のワープのような映像がまさにテーマ。様々な空間へと視聴者をいざないます。
前段階まで散々1カットで空間の変化を極力無くすことで視聴者はVR空間に没入した状態である為、過度な変化があるこの演出でも没入感を維持して視聴することが出来ると考えました。
また、「重力の無い空間=地面の無い世界」を宇宙空間やワープ空間を通して表現。実写では絶対に出来ないこととしてこのシーンを入れました。そして、イマジネーションの象徴として曼荼羅をイメージした空間でラストを迎えます。

⑥エンディング

元のライブハウスに帰還し、HMDを外しても同じライブハウス空間となり、異世界から帰還します。
そしてコロナ禍の回復とオワリズム弁慶の復活を「幕が開く」という象徴的な映像で締めくくりました。

このような多大なる試行錯誤を得て、やっとの思いで完成させた作品なのです!!
現地で、予想の何十倍も凄かった!もっと沢山の人に見てもらいたい!そんな声を多くいただき、VR関係の仕事をしている人からもかなり好評だったことは、本当に感無量です。ちょっとだけVRの普及にも役立てたかな?と思っております。

そんなところで、こちらを読んでいただき、ご視聴いただき本当に有難うございました!!!

YouTubeの動画を見て、余韻に浸ってもらえれば幸いです!!(阿修羅は6000再生突破!)

インスタには撮影中の写真がいっぱい上がってるし、これからもあげます!!(是非フォローしてね!)

https://www.instagram.com/owarhythm_benkei/

それでは本当にご鑑賞有難うございました!!!
今後ともオワリズム弁慶を宜しくお願いいたします!!!!

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