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【朝倉祐介さん×CEO鈴木】新しい働き方─雇用形態にとらわれない─

グロースキャピタル「THE FUND」を運営するシニフィアンの朝倉 祐介さんとCEO鈴木(@yutosuzuki)の対談を前編・後編に分けてお送りします。

朝倉さんが運営されているVoicy「論語と算盤と私とボイシー」にお招きいただき、「新しい働き方」をテーマに1時間たっぷりとお話しさせていただきました。本記事はVoicyの内容に沿って作成した【後編】です。雇用形態にとらわれない働き方について、ディスカッションいたしました。

業務委託が100名以上稼働する、overflowの組織形態

朝倉:
人材循環型社会のロールモデルで、働き方を一番に取り入れて実践しているのがoverflowじゃないですか。なのでoverflowの働き方そのものについてちょっと聞いてみたいんですけど。今社員の方はどれぐらいいて、どういう雇用形態なんですか?

鈴木:
メンバーというくくりでは、全体で130名くらいです。そのうち正社員が30名弱。それ以外のメンバーをフレキシブルやパートナーって呼んでいます。大前提、正社員とか業務委託という雇用形態でラベリングしてないんですね。フル・フレキシブル・パートナーっていう三つのラベリングをしていて、その中でやっている仕事の量であるとか、渡している領域だとか、そういったものが若干変わっています。

朝倉:
フルはなんとなくイメージできますが、フルタイムの人たちっていうのは、基本的に複業はありなしで言うと?

鈴木:
ありです。

朝倉:
大きい会社にお勤めのビジネスパーソンの方と同じような。でも、一般的にはあまり複業OKって多くないのか。

鈴木:
そんなに多くはないし、しづらいっていうのはまだあるみたいです。

朝倉:
フルタイムだけど複業OKなのがフル。フレキシブルとパートナーの違いはなんですか?

鈴木:
フレキシブルが大体週に2〜3回ぐらいのコミット、というか時間を割いてくれるような方々で。パートナーになってくると期限が有期になっていて、プロジェクト的な動きをするのが最初から決まってる人です。

朝倉:
じゃあ必殺仕事人じゃないけど、プロジェクトでワーって集まって、終わって目的達成したら、解散と。

鈴木:
そうですそうです。

朝倉:
なるほど。次また同じようなプロジェクトが立ち上がったら、お互い面白いと思ったらまたやるかもしれないし、やらないかもしれないし。だけどそれはそれで、お互い納得の上でっていう。

鈴木:
はい。コンサル企業出身の方とかに入ってもらった時は、三ヶ月で資本政策から事業計画までいろいろばーっと立ち上げて、また半年後ぐらいにお願いするかもしれないです、みたいな形で。

朝倉:
へえ、面白い。確かにコンサルの仕事ってこういう感じですよね。

鈴木:
メリットだなと思うのが、考え方やフレームワークを僕らは学べるので、どちらかと言えば二回目は自分たちでやれるような状態にはなってるっていう。

朝倉:
なるほどね。経営コンサルティングファームの主要な要素の一つとして、クライアントの若手や中堅の方に対する、技術や考え方やプロジェクトの進め方の伝承、っていうのも結構あったり。だから絶対若い方入れるんですよね、そういう大手クライアントの方って。実際それを受けられたってことですね、意図的に。

今の話を聞くと、例えば横軸にフルタイム・フレキシブル・パートナーという三つの要素があると。縦軸に、いわゆるその雇用形態として正社員と非正規社員という一般的にそう呼ばれる人たちがいる。こういうマトリックスができるじゃないですか、3×2の。そう考えたときに、今までの常識的に考えるとフルタイムの人ってのはイコール正社員なのかなっていうふうに思ってしまうんだけども。そうでもないんですか?

鈴木:
業務委託でフルの人もいますね。

朝倉:
フレキシブル・パートナーの人たちってのは基本全部非正規の人たち?

鈴木:
そうです。

朝倉:
フレキシブルとパートナーってどれぐらいの比率なんですか?

鈴木:
フレキシブルが全体の6,7割でパートナーが1,2割くらいです。

朝倉:
なるほどね。普通に考えると、本当にこれ回るの?ってみんな思うと思うんですけど。どうなんですか?ずっとoverflowはこういう働き方を実践してきて、案外できるよって話なのか、ここら辺結構大変なんだよねって話なのか。

鈴木:
みんなが活躍できる場、各々の背景、各々の持ち場でパフォーマンスが発揮しやすい環境設定などの、仕組みに対する投資っていうのは絶対に必要だなとは思ってます。それをもし創業初期から疎かにしていたら、この方針はやめていた可能性があるかなと思ってます。

例えば我々は、フレキシブルな組織でフルリモートで会社運営しているので、世界中で繋がっているパートナーの方、フレキシブルな方がいるんです。そういった物理的距離や時間的距離があっても全員が働きやすい環境を作ろうとすると、オンライン上での働く環境設定、仕組みを作り込まないといけません。みんなが能動的に動けなかったり、コンフリクトが起きてしまったりするので。改善をしながらつくり込んでいく、プロダクトみたいな感覚です。会社をどんどんアップデートしていかなきゃいけないなって思っています。


リモート×多様な雇用形態においては、情報開示が重要

朝倉:
リモートに寄せていく会社も多いと思うのですが、何か参考になりそうなことはありませんか?

鈴木:
あります。前提を一つと、あとちょっと仕組みの紹介をしたいなと思います。前提でいうと、まず情報権限というものにあまり固執しすぎない方がいいっていうのがありまして。これは私の思想も入ってるんですけども、フル・フレキシブル・パートナーで見れるデータをここまで!と、やりすぎない。人は経験や情報で正しい判断をしていくものなので、情報開示を積極的にしていこうと。

情報にゲートを作ってしまうと、発想や化学反応みたいなものが全然起きないんですね。せっかく130人もいるのに、そのリソースを活用できているとはいえない状態になってしまうと思うので、事業計画もそうだし、週1定例とかそういうのも全部録画して、みんなが見れるような状態にするとか。フルとの情報ギャップってのはなくなるっていう状態をまずつくる。

朝倉:
パートナーの人たちも見れるんですか?

鈴木:
パートナーさんだけは結構特化型でやってるので、許可制になっています。見ることもできますが、最初はその領域だけの情報開示になっています。

朝倉:
なるほどね。フレキシブルは労働日数こそフルに比べると限られているけれども、原則としては長期的にコミットすることを前提としている人たちだから、そこに情報の差を設けてはいけないと。ましてや正社員か非正規っていうのは本質じゃないっていうことなんですかね。

鈴木:
はい、まさにおっしゃる通りで。フルタイムは約30名の正社員なんですけど、彼らの78%は複業転職、複業から転職してきた人なんですね。

なので、今いるフレキシブルの約100名の方っていうのは、我々の中では、将来正社員になってくれる方であろうというような前提でコミュニケーションをとっています。事業全体とか、ミッションビジョンバリューとかそういった価値観の部分もどんどん共有していくような形でやっていますね。

朝倉:
overflowとしては、そういうフレキシブル・パートナーの人たちに対しては、ゆくゆくみんなフルタイムになってほしい、正社員になってほしいという気持ちでいるんですか?それとも別にそんなこと別にどっちでもいいっていう感じ?

鈴木:
それは結構、その方とのケースによるかなと思っていて。入っていただいて、1ヶ月くらい働くと「この人すごいな」とか、やっぱわかるじゃないですか。そこから相互の理解が深まっていって、自然と「overflowどう?」っていうのを我々の方から言わせていただくときもあります。最近は、相手方から言っていただくケースも多くて。「ちょっと転職考えていてoverflow入りたいんですけど、選考どうやって受けたらいいんですか」と。それをきっかけに選考に進むケースも最近多いです。


正社員のメリット、業務委託のメリット

朝倉:
フルタイムの人で、正社員じゃない業務委託の形態で働くのは、そもそも難しいことなんでしょうか。フルタイムかつ業務委託でいいというケースは全然あるんじゃないかなと思うんですけどどうですか。

鈴木:
それは候補者側に権限があると思っているのでお任せしています。業務委託だと税制的なメリットがあったりするので、あえて選択されている方もいます。

正社員を選ぶ理由としては、一つはストックオプション。最近ストックオプションのルールは是正され始めていて、業務委託の方にも出せるようになってると思うんですけども、まだちょっとルールが曖昧だったりするので。基本的には正社員になってほしいなっていう話をしています。

朝倉:
そうだよね。税制適格が駄目だったりするんだよね、場合によっては。

鈴木:
あとは雇用関係に絡んでくるんですけども、いわゆる指揮命令みたいなところが制限されることになってくるので、そういった感覚でも正社員になると、僕らの評価制度に乗るっていうのはありますね。業務委託の場合でも、契約更新という形で、金額とか報酬条件が変わることもあるんですけども。基本的にはアウトプットベースで変わってくる。

正社員になってくると、OKRとか、MBOなどの評価制度が走ります。合わせてコンピテンシーでパフォーマンス評価もします。正社員になるとキャリアロードマップも上司が一緒に考えたり、僕らも一緒に考えていくっていうことが違いとしてあります。


主体性を持った、プロ野球選手のような働き方

朝倉:
僕がいつも思ってることなんですが、社員の人も、わざわざ正社員の雇用形態をとらずとも、みんな業務委託でいいんじゃないかなと思うところがあって。会社側からしてみたら労務管理などのコストが大幅に削減できて楽ですよねっていう話が一つと。シンプルにもうもう一つは業務委託契約ですと、準委任契約にまとめてしまった方が楽なんじゃないかなって話。

あとやっぱり、さっきおっしゃっていただいた通り、働く人からすると、税制面のメリットが全然違うじゃないですか。同じ額面であったとしても、手取りって全然違うと思うんですよね。っていうことを考えたときに、正社員化することによって失ってるものってすごくたくさんあるんじゃないかなっていう気がしていて。みんながマイクロカンパニーじゃないけれども、「株式会社自分」というか、業務委託的に働いてる方が実はいいんじゃないかな。

そうなったときに正社員ではできて、業務委託ではできないことって何があるのかなあと思ったんですよね。さっきおっしゃっていただいたSOってのは確かにそうだなって思いました。思ったんだけれども、これってある程度制度の歪みみたいな問題じゃないすか。ってなったときに本質的に働くってなんだろう、雇用ってなんだろうと思ったりするわけですよ。なんで業務委託じゃ駄目なんだっけ、なんで正社員じゃないと駄目なんだっけとか。そっちの方がお互い自由なんじゃないのという気が少ししますよね。

鈴木:
本質的にはジョブ型雇用という考え方だと思うんですよね。自分のパフォーマンスに対して報酬というフィードバックをもらう、ということだと思うんですけど。時間をアロケーションする感覚になっていくんだろうなと思っていて。今は正社員が固定概念としてあるので、おのずと100%の時間をその会社に使いますという感覚なんですけど。

フレキシブルになってくると、ここの会社に50%、ここの会社に40%とか、どんどん流動的に動いていくようになって。ライフプランの中では、人によって優先度も変わってくると思うんですよね。今ある100のうち、この会社にこういう理由で何%使うんだっていうことを自分で決めていく、主体性を求められるなと思っていて。なので主体性がないと、そういった働き方はまだ難しいかなと思ってます。

朝倉:
なるほどね。本来的には、みんなプロ野球選手みたいな。自分の腕に物を言わせて。

今年はマリナーズじゃなくてヤンキースと契約だ、みたいになっていいと思うし。そうした方がもっともっと自由なんじゃないかなぁと。正社員でいることの方がロイヤリティ高いことになりそうな気がするんだけど、正社員だから即座にロイヤリティ上がるとか、会社に対するコミットメントが増すっておかしな話だなと思いますよ。

鈴木:
本当におっしゃる通りです。いろんな側面からその会社に時間を使おうとか、自分の経験を使おうとかって判断すると思います。自分の意思や自分のやりたいことといった自発的・内発的な動機以上に、その人のパフォーマンスが上がることってないと思うので。内発的動機を候補者側、人材側は見つめ直すべきだなと思います。さらに、企業側が内発的動機をどうやって作り出せるかっていうのが、採用やエンゲージメント、離職率の低下などにも繋がってくるかなと思いますね。

朝倉:
あくまでこれは僕の考えですが、企業年金、退職金、年功序列ってほとんど人質みたいなものだと思うし、人口ピラミッドなどの観点から、絶対持続できない仕組みがあるじゃないですか。どっちが非道徳的なんだろうっていう話ですよね。それよりはもっと自由な働き方で、お互いそのときの価値に応じた分配を得られる方がいいんじゃないかなって気がします。直感的にそう思ってる人たちがたくさんいるから、どんどんスタートアップに人が流れてきているんじゃないかなっていう気はしますよね。

鈴木:
確かに。言語化できないけどそういうニュアンスを持っている方は非常に多いなと思います。

朝倉:
なんとなく思ってるよね。どこまで言語化しているかわかんないけど。

鈴木:
はい、思います。特に一定の実力をつけた方とかは、そういう感覚に入ってくると思います。


目指すのは、嘘がなくなる世界

朝倉:
最後に伺いたいんですけど、この人材循環型社会って、これからどうなっていくんですか?それは働いてる人にとってハッピーな発展なんですか?

鈴木:
はい、ありがとうございます。誰かがハッピーだと誰かがハッピーじゃない、みたいな側面があるかもしれませんが、私が思うには少なくともオープンな世界になるとべきだとは思っています。

どういうことかっていうと、人材循環型社会になると、企業側としては人にたくさん来てもらわなくちゃいけなくなるので、人に魅力的に思ってもらわなきゃいけなくなります。これって従来は広報活動・IR活動で魅力的に伝える、ある種一方的な情報発信によって、作られたと思うんですけども。

今ってSNSとかglassdoorやオープンワークとか、いろんなものがあるので、社内の情報って誰かに聞けば一次情報にアクセスできるっていう世界になってきたときに、表面だけの情報発信をすることの方がリスクになりやすい状態です。

朝倉:
それで現実と違うじゃんって言われるのが一番怖いってことですね。

鈴木:
まさに。しかもそれで入ってしまって退職するっていうのが、今多く行われている非効率な部分。企業はありのままをちゃんと伝えた方が、メリットを享受しやすくなる。候補者からも、そういった情報をキャッチしながら、一回複業させてくれと。そういう交渉が一つのレバーとして使えるようになると。

その中でより深く知りあうことによってその会社に自分の時間を何%使うかなって判断していくような、そういった世界観をイメージしているので。嘘がなくなる世界になるっていうのが、私が人材循環型社会においてメリットだなと思っているところです。

朝倉:
なるほど。伺っていて思うのは、こうなった方がいいよねっていう要素ももちろんあるんだけど、そういう主義主張の問題というよりはもう自然現象としてそうならざるを得ない構造になってるよね、っていう気はしますよね。

鈴木:
そうですね。

朝倉:
はい。ありがとうございます。以上overflowの鈴木さんに、非正規に該当するような業務形態の方々がたくさんいる職場って、どんな感じで機能してるの?というようなお話を伺いました。

僕自身もやっぱり正社員・非正規社員みたいな区分けって法律上仕方ないところあるんですけど、なんかちょっとナンセンスなんじゃないかなって思ったりするところもあって。新しい業務形態や雇用形態を、チャレンジできるんじゃないかなと思ったりしていますし、そのチャレンジに結構意味があるんじゃないかなと。その意味があるというのは別に雇用主側だけではなくて、むしろ被雇用者の側にメリットがあるんじゃないのって思ったりもして。色々と実験できないかなというふうに思ったりしてる今日この頃です。



以上、「新しい働き方」についての朝倉祐介さんとCEO鈴木のVoicy対談でした。

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