卵巣がんと痛み

はじめに

卵巣がん体験者の会スマイリーでは2021年1月1日から7月25日までの間に540件余りの相談がありました。

スクリーンショット 2021-07-29 9.25.40

スマイリーへの相談ですが、
1)がんが再発・増悪したらどうしたらいいかという相談
2)現在の治療で副作用が辛い・効果が思う通りにでないという相談
3)治療の変更に伴いその治療に関する情報が欲しいという相談
という治療に関連する相談がとても多いです。

しかし上記のグラフの範囲(およそ7ヶ月間)を詳細に調べると、主訴は治療に関する相談であっても、その相談に加えて心の痛みに関する相談をしてくるかたがとても多く、患者さんやご家族にとって心の痛みは避けて通れない問題なのだと感じています。

がんと痛み

「痛み」にはさまざまな痛みが存在します。
●身体的な痛み
体が痛い、体に以前と違う症状がある、日常動作に支障がある など
●精神的な痛み
不安、いらだち、怒り、恐れ、孤独感、うつ症状 など
●社会的な痛み
仕事上の問題、経済上の問題、家庭内の問題、人間関係 など
●スピリチュアルの痛み
人生の意味の問いかけ、価値体系の変化、苦しみの意味、死への恐怖 など

心の痛みがある患者さんは身体的苦痛を感じやすいなど、これらの痛みは複雑に絡み合い・影響をしあって一人の患者さんの辛さ・苦しみに繋がっています。

これまでのさまざまな癌に関連する研究で、がん患者さんに鬱や適応障害などの症状が見られることは珍しくないことがわかっています。

スマイリーへの相談では妊孕性温存ができないことで自分の存在意義を否定してしまう辛さ、自分ががんになったことで職場に迷惑をかけているのではという辛さの相談がとても多いです。

しかし患者さんやご家族は「がんになったのだから不安なのは仕方がない」「命を助けてもらったのに、こうした辛さを訴えるのは申し訳ない」などとして、こうした辛さを医療者に伝えない、いつか回復するだろうとして見過ごしがちです。

生活に支障が出るほどの辛さが2週間以上続いたら相談

大きなショックを受けた時にドーンと落ち込むことは誰もが経験あると思います。
しかし、その多くは2週間ほどの時間をかけて徐々に徐々に回復をしてきます。

だけど2週間以上も不安で不安で仕方がない状態が続く。
泣いてばかりいて何もやる気が起きない。
これまで楽しめていた仕事や趣味が苦痛になった。
自分が生きていて良いのだろうかと思ってしまう。
他人に迷惑ばかりかけていると思い辛い。
そうした状況が続くようであれば、主治医に相談をしてください。

婦人科の主治医が相談に載ってくれないようであれば、院内に緩和ケア外来や精神腫瘍科(精神科)があればそちらに繋いでもらうことも検討してみてください。
また、社会的痛みに関しては病院のソーシャルワーカーさんや、民間でがんと向き合いながら働く患者さんを応援しているような団体が相談支援サービスを提供している場合もあります。そうしたサービスを利用することも検討してみてください。

誰かに話をして支援してもらうこと、医療的なケアが必要であれば受けることで痛みが和らぐ場合があります。
体の痛みだけではなく心や社会的な痛みにも支援が必要です。

患者さんのなかには精神的な痛みが強く、それによりまだ治療に期待が持てるにもかかわらず「治療を受けたくない」と訴えられる患者さんもおられます。
そうした患者さんがケアを受けることで再び積極的な治療を再開できることもあります。

ご家族も心のケアを大切に

がん患者を支える家族も「患者本人の辛さをわかってあげられない」「親族にがんになったのはお前のせいだと責められた」「これからどうすればいいのだろう」といった悩みや苦しみがあります。

患者さん同様、ご家族もそうした思いを吐き出せる場所が必要かと感じます。
もちろん私たち患者会でも伺うことはできますし、同じ立場のご家族同士の交流の場も存在します。
また癌研究会有明病院では家族ケア外来遺族ケア外来を行っておりご家族を支えています。

気持ちに余裕がないと思わぬ形で大切な人に辛く当たってしまったり、意思決定をしなければいけない際に正確な判断ができないなど問題が起きる場合もあります。

こうした痛みはあなたが決して弱いから感じるのではなく、多くの卵巣がん患者さんやご家族が同様に感じています。
決してあなたが弱いからというわけではなく、その痛みは、色々な要因から起きていて医療的ケアが必要な場合もあります。
どうか患者さんもご家族も痛みを我慢しすぎないでください。

もしどこに相談をしていいかわからない・・・そんなときは患者会にお問い合わせをいただけましたら幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?