マガジン一覧

ビジネス歳時記「武士のおもてなし」

その昔、戦いに明け暮れていた戦国武将ですが、季節感を取り入れた「もてなしの心」を大切にしていました。その知恵や教えを季節の歳時記に寄せて、ビジネスで戦う現代の戦士たちにご紹介していきたいと思います。

ビジネス歳時記 武士のおもてなし 第60話「火鉢」

互いの距離を縮めた、温かなおもてなし「客去って撫でる火鉢やひとり言」(嘯山:しょうざん)※──師走の12月に入ると、そろそろ暖房器具を本格的に使い出します。部屋の模様替えを兼ねて、早めの大掃除をする家庭も多くなることでしょう。 現在は、室内全体を暖める暖房器具や、人の動きに合わせて暖房が働くシステムもあるようです。しかし、江戸時代は冒頭の俳句にもあるように、室内の要所要所に火鉢を置き、客人のもてなしにも気を遣いました。 今回は、幕末の時代を生きた武蔵国忍(おし)藩(現在の

6

ビジネス歳時記 武士のおもてなし 第59話「沢庵」

将軍に口福を教えた、 沢庵和尚11月の霜月(しもつき)は、その名の通り北国では霜がおり、初雪が降るほどの寒さになり、そろそろ冬支度を始める季節となります。最近は沢庵(たくあん)などの漬物は購入することが多くなりましたが、かつてはこの時期に各家庭で保存食として大量に漬け込まれていました。 11月11日は、漢数字で書くと十と一が大根を軒下につなげて下げたように並ぶことから、「沢庵の日」とされています。 漬物の中でも代表的な沢庵は、“沢庵和尚”こと江戸時代初期の禅僧である沢庵宗彭

4

ビジネス歳時記 武士のおもてなし 第58話「江戸散歩」

嘉陵が歩いた、江戸人情に触れる旅10月の神無月(かんなづき)には、各地の神様が出雲大社に一堂に集まり留守がちになることから、この異称がついたといわれています。神々も色づき始めた紅葉を愛でながら、日本の秋を旅したのかもしれません。 江戸時代、長い戦乱から泰平の世に入ると、人々は旅をする楽しみを見つけました。物見遊山で名所旧跡を訪ねたり、「講(こう)」というツアーを組んで「伊勢参り」※など信仰の旅に出たり、余暇を堪能しました。 しかし、人気の「伊勢参り」などに出掛けたのは町人

9

ビジネス歳時記 武士のおもてなし 第57話「松茸狩り」

太閤や黄門様をも虜にした、香り立つ茸 「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるように、9月も下旬になると気候も落ち着き、秋の味覚の王者である松茸※が旬になります。 「松茸や食ふにもおしい遣るもおし」と、絶妙な一句を詠んだのは江戸時代中期の俳人、与謝蕪村。これは、蕪村が日本画家の池大雅(いけのたいが)から贈られた松茸に対する礼状の一節にしたためられていた句。初物の大きな松茸を前にして、一人占めにするのは後ろめたいけれど、さりとて客人を招いて振る舞うのも惜しいというところでしょうか。

6
もっとみる