OUWN is : 何だ?五感で楽しめるデザインって。前編
石黒:前の記事では、なぜデザインが料理と似ているのか?
OUWNをなぜ星付きレストランと称したのか?
そういった切り口から、デザイナーが今の世の中で気を付けるべきだと感じていることを投稿をさせて頂きました。
OUWNがなぜ星付きレストランなのか
さらに、「わかるなぁ」と思った記事もあったので、下記に貼り付けさせていただきます。(ちょうど一昨日食べたMr.CHEESECAKEの田村さんの記事です)
先日OUWNみんなで食べたMr.CHEESECAKE。Mr.CHEESECAKEは日曜日、朝の10時からライン友達になってれば予約しやすいです。美味しいはもちろん、デザインの佇まいも良いのでオススメです! https://mr-cheesecake.com/ 売り切れるのでお早めに。
今回は、OUWNがビジュアルを制作する上で大事にしているもの・意識をしていることをなぞりながら、デザイン上達のヒントをお伝えします。
一つ前の記事で紹介した「レストランのようなデザイン事務所」の内容と合わせて、私が発信しているあるコトをSNS Profileにも掲げています。
それが、私たちは「五感で楽しめるデザイン」を提供する。ということです。OUWNのデザインを見て感動した!という視覚の伝達だけの話ではありません。
オンラインミーティングになる前は、対面のミーティングが基本でした。OUWNの事務所で行うミーティングでは、お客様におしぼりとちょっとしたお菓子・飲み物を出すようにしています。
おしぼりには、アロマオイルでほのかに香り付けをするのですが、その香りも定期的に変えたりお菓子や飲み物も季節によって変える工夫をしています。合わせて、器も作家さんの湯呑みや、伝統的な製法でつくられたグラスなど、その時の内容に合わせて選ぶようにしてきました。どんな作家さんの作品なのか、その器にはどんな背景があるのか。知識を入れておくと、お茶を出す前に、会話が弾むかもしれません。
インスタグラムより抜粋:@takayoshiseko さんより
「打ち合わせに行ったら、お茶と羊羹、おしぼりまで頂いた…。こんなの初めて!」#OUWN #ほれてまうやろー #羊羹 #おぐら #むちゃくちゃおいしいんですけど
*この日は幸兵衛窯 八代目 @kobeigama の陶芸家 加藤亮太郎さん @ryotarokato の湯呑みと、@sodaterutowel のおしぼりでした。
こういったこともレストランの接客から学んだことで、リンクしているところだと思います。
どんな風におしぼりを渡すか、渡す前の所作はどうしたらスムーズか。そんなことまで定期的に皆と話したりしています。ただ、器の知識を増やすことや、人との会話を弾ませること、良いものと常に触れ続けることが重要なのではなく、それらは心地よい空間づくりとプレゼンテーションの要素の一つにしか過ぎません。
知識を入れ、良いものに触れ続けることで、自分の感性や気づきのベースはどんどん上がっていきます。結果的にデザインの向上に繋るので、全てが一本で繋がっているんです。
以前、こんな話がありました。
使い勝手悪いものは悪じゃない
OUWNには、愛用している、職人の手で作られた日ノ出化学製作所の耐熱ガラスのポットがあります。
スタッフが一度それを割ってしまったのですが、同じもの再度購入しました。
その時スタッフは、また割ってしまうリスクがあるのに、なぜもっと使い勝手の良いものにしないのか?と質問がありました。壊すことを繰り返すことはもちろん良くないけれど、物なのでいつかは壊れます。しょうがないことです。
ただ、利便性だけを重視して頑丈なものにするということは、私たちの環境では少し違うと思っています。繊細だとしてもクオリティの高いもの。美しいものに私たちは触れ続ける必要があると思っていて、それがデザインの本質と繋がっていると考えています。
本質は何か?その本質を見失わないために
美しい基準を常に上げていくことで、ポットに付いた汚れが気になったり、そもそも丁寧に扱います。結果、ポットの置いてあるテーブル汚れが気になったり、整頓されていない箇所が気になったりと、たった一つのセレクトが他のことにも連動します。
鉄ポットにしたから全体のクオリティが落ちるということではありませんが、言ってしまうと少し乱暴に扱っても大丈夫なので、そこからクオリティが落ちるリスクの方を避けたのです。
常に本物・本質に触れるということは、「全体のクオリティをあげる可能性がある」。これはデザインを生業とする私たちにとって、本質を突く一つの答えだと思います。
並んでいる棚があるとして、棚に入っているものを外側に表記する場合も同じ考えがいえます。「わかりにくいからシールを貼ってわかりやすくする」は、違います。
中は覚えればわかるので、「シールを貼ることで見栄えが悪くなるのであれば、その選択はとらない」が正解です。あくまでも家ではないデザインと触れる環境の話だからですし、覚えるといっても棚の数にもよります。
ただし、棚が覚えられないほど増えたとしてもシールを貼るなどの対処はせずに、クラウドで管理するなど、できるだけスマートな見え方を意識し選択をすると思います。
付け加えると、ルールに縛られてはいけません。こうゆうルールだからやる。という思考はよくなくて、その時々で考え、ベスト方法を自らが更新していくマインドがとても大切です。
更新は大事、でも本当の大事は更新に共有が組み合わさった時
OUWNでいえば、前段で話したおしぼりの話なども、ベースやルールを日々自身で更新して周りの仲間に共有していくことが大切で、どんな職業でもどんな環境でも、その行いを続ければ一目置かれると思います。注意点としては、正解不正解はあるはずなので、一人で判断はしないで「発見」や「更新」する箇所が見つかれば、常に「共有」すること。それがポイントです。
現に良いレストランはボスもスタッフもソムリエもホールも、枠組みを超えて、こっちが良いあっちが良いと、柔軟なディスカッションができていると思います。
OUWNでも、私がベースを提案することが多いですが「こうしたほうが綺麗だと思う。」「この方が使いやすい。」と意見をもらい、ブラッシュアップされることがとても良い循環になっていると感じています。
もし、あなたが言われたこと以上の行動ができないのであれば、手っ取り早いのが近くの気が利く方を見つけ、真似することです。美意識がちょっと足りないと思っているのであれば、整理することや物の知識を深めること。そうすれば愛着も沸き、丁寧な所作が身につき、必然的に「美」を理解していけるはずです。ほとんどのセンスは知識と経験でカバーできるのです。
新鮮さはミスを減らしマンネリはミスすら起きない
話はミーティングについての内容に戻りますが、毎日来社していただかない限り、同じお菓子や同じ器に当たることはないはずなので、毎回お客様は何かしらの新鮮さを感じていただけると思います。
慣れた場所だったとしても、新鮮さが加われば、それが起爆剤となり、アイデアが出るかもしれません。このように直接的なデザイン作業以外の部分も含めて、デザインは始まっているのです。これらを踏まえるとOUWNが「五感で楽しむデザインを提供している」といった話も分かって頂けるのではないでしょうか。
改めてですが、五感とは感覚の総称であり、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五つの感覚です。まずは、視覚についてお話しさせて頂きます。
001:「視覚」
視覚はとてもわかりやすいですね。
制作したデザインを見ていただき、感動を届けたいという想いがあります。
デザイン以外であれば、所作に気をつけ、身なりを整えることでプレゼン等で違和感を与えないようにすることも大切だと思います。
目から入る情報は、デザイナーにとって一番直接的で、判断されやすい部分なので気をつけるべきポイントです。逆にいえば、解りやすい分簡単に気をつけられるポイントだと思います。
ただ、デザイナーであれば視覚は専門分野なので、この感覚を疎かにする方は少ないと思うので、差が付きにくいポイントとも言えます。
002:「聴覚」
モーショングラフィックや、映像、WEBなどは音楽を使うことがあります。
音楽で仕上がりイメージ、受けての気持ちは大きく変わるので、聴覚もデザインにおいてとても重要です。
打ち合わせでは、邪魔にならない程度に音楽を流すことで、緊張感をほぐすなどの役目もありますし、一つの音楽が場の空気を作ることも少なくないので、もう少しコロナが落ち着いたらMTGの内容によって、音楽のジャンルを選定し変更していくなどもチャレンジしていきたいと思っています。人の声も重要ですね。話し方一つで印象は変わります。
意識するだけの効果も抜群
私も、あまり強い意見を発信するタイプではありません。現にOUWNは物腰柔らかい人が多いので、お客様に寄り添い足並み揃えるようなメンバーかと思います。時と場合で、自分の声にも意識をむかせるということは、大切なポイントかと思います。
そんなところまで意識できるのか?という問題もありますが、一気に全部をやろうとはせず、自分ができるポイントから順に意識するだけでも効果は出てくると思っています。
残りは「触覚」「嗅覚」「味覚」。
特に「嗅覚」「味覚」の二つの感覚はデザインにとって、少し遠いいのでは?と、思う方も多いと思いますが、実はとても重要な要素です。
なので、次回は五感で楽しむデザインの「触覚・嗅覚・味覚」について、
書いていこうと思っています。
後半へ続く。
Profile
石黒 篤史 ( Atsushi Ishiguro )
OUWNのクリエイティブディレクター。東京生まれ。佐野研二郎主宰のMR_DESIGNを経て、 2013年に「OUWN株式会社」を設立。アートディレクションから、グラフィックデザイン、サイン計画、web設計など多角的に企画立案製作に携わり、設立当初より継続的に国内外でデザイン賞を多数受賞。Design Workの他に「People and Thought.」といった、デザインを基軸に置きつつ、人の思考や現代の当たり前の感覚など、ベーシックとされてしまった思考に対して「疑問を見い出す」を、テーマにした芸術活動・展示・作品製作も精力的に行う。
Instagram : https://www.instagram.com/ai_ouwn/
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