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Lachman's test:前十字靱帯(ACL)損傷の検査

Lachman's test(ラックマンテスト)は、お馴染みのテストかと思います。
改めて、その方法や診断制度をみてみましょう。


結果からなにが考えられるのか?

前十字靱帯(ACL)損傷の検査(特に後外側線維束)。

陽性の場合,次の構成体になんらかの損傷の可能性がある可能性が高いです。
・前十字靱帯
・後斜走靱帯
・弓状靱帯一膝窩筋複合体

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー社.

ACL損傷やその他の構成組織の損傷を判別できるそうです。具体的にどの組織かの判別は難しそうです。

検査方法

1患者さんは背臥位。
2検査側の膝関節は約15〜25°屈曲位。
3大腿骨を手で外側から固定、他方の手は脛骨の近位部を内側から把持。
4脛骨を軽度外旋させる。
5脛骨に前方へ移動させる力を加える。

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー社.

ポイントは軽度屈曲位で脛骨を外旋させながら力を加えるところでしょうか。なぜ、外旋が必要となるのでしょうか…

陽性時の所見

・エンドポイントが不明瞭。
・非検査側と比較して可動性が大きい。

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー社.

健側との比較は基本的にどの整形外科的テストでも必要でしょうか。

注意点

ACL断裂後に、ACLの断端が、後十字靱帯(PCL)や大腿骨に癒着し,あたかもエンドポイントが明瞭であるかのように感じることがある。

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー社.

なんか最近、ACL損傷が自然治癒するみたいな論文を見たような見てないような…。癒着などで判断は難しくなりそうです。

評価の精度

感度85-87%
特異度91-94%
陽性尤度比7.7-10.2
陰性尤度比0.17-0.2

松村 将司, 三木 貴弘. 適切な判断を導くための整形外科徒手検査法.メジカルビュー社.

診断精度に関してはこちら

感度・特異度が共に高く、検査として有用な可能性が高いですね。

関連する文献

Lachman's testに関する文献を探してみました。

Sokal, P.A., Norris, R., Maddox, T.W. et al. The diagnostic accuracy of clinical tests for anterior cruciate ligament tears are comparable but the Lachman test has been previously overestimated: a systematic review and meta-analysis. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc 30, 3287–3303 (2022).
https://doi.org/10.1007/s00167-022-06898-4

こちらのシステマティックレビューでは、Lachman's testの診断精度がやや過大評価されている可能性があるそうです。特に、急性期や完全断裂症例に対しての診断精度は、以前報告されているものより低かったそうです。
しかし文献内では、感度・特異度ともに約70%を示していたり、文献内の参考文献からは、Lachman's testが他のACL損傷への評価と比較し最も有効な評価であると報告しているものもありました。

Benjaminse A, Gokeler A, van der Schans CP (2006) Clinical diagnosis of an anterior cruciate ligament rupture: a meta-analy- sis. J Orthop Sports Phys Ther 36(5):267–288

他の整形外科的評価やMRIなどを使用し、総合的な判断が必要であると改めて思いました。

ではでは。

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