母恋譚

映画「臍帯」は言葉の代わりに沈黙が支配する作品である。
言葉を憶える以前、いや、それどころか出生前の臍帯による繋がりこそが親子の関係性を決定しまうと断言したくなる誘惑に駆られる。

結果として主人公は母に一度だけ抱きしめてもらうために自分の命を差し出すことになる。

母に対する復讐は「復讐」に至る直前で「臍帯」の関係性に敗北する。

雨の中、「妹」と親子三人の団欒を感情を押しころし見つめる主人公。既に凝視ではない視線は直接的な沈黙を維持する。

自分とって大切な物事を眼前にした時、世界は無音になる。
そして言葉の暴力性を思い知らされる。

見ることの野蛮さが静謐な「自然」に還元される。