血の芳香は蜜の味

近所の公園のベンチに座る初老の男は唯休息をとっているわけではない。
素性など誰に分かるというのか。

楽しげにリフティングを教える男が親なのか外見で判断ができるはずもない。

体罰は躾だと理性で判断する人がいる。拳に痛みが疾走ってもそれを愛情と見做す神経回路は更に拳を握り締める。痛みと愛情の深さは比例するのだと拳の傷を舐め上げる。

退屈で馬鹿にされ騙される。冷血な雑踏でも秩序正しく生きることを慫慂するのは狂人に頭を撫でられて有頂天になったから。

全てが幻だったら赦して欲しいのに錆びた鉄の芳香にサイレンが大きくなってくる。