夢幻の所在地
夢は手を伸ばした一寸先にある。
そんなようなことを誰か偉い人が言っていた。
文脈もあってなんとなく納得した記憶がある。
これは将来的に叶えたい理想、
所謂、将来の夢という意味合いで語られたのであろうが、
寝ている間に眺める夢についても、
体感があるようでいて、絶妙に自身を思い通りに動かせぬ感覚は、
僅かに手の届かぬ感じに喩えられよう。
話は変わって、
先日、街を往きながら音楽でも聴こうと思って、soundcloudでvaporwaveと検索して流していた。
ぼやけた電子音に、chillい、emoい感傷に浸り、
過ぎ行く街も何処か幻想的に映る。
dreamyな夢心地に包容される。
vaporwaveというと、
パソコンが誕生し一般的に用いられるようになった時代、
つまり、80年代後半〜90年代前半のデジタル原初の時代、
その当時に生まれたオブジェクトを現代に再現した芸術
というイメージである。
97年産まれの僕には、ぎりぎり体験し得なかった時代である。
僕は、その時代の名残を残した世界をしか生きることが出来なかった。
即ち、vaporwaveの再現する時代とは、
正に、僕の手が届きそうで届かぬ、そんな時代である。
現に体験していないものを追体験する、
そこに夢幻の所在地があるような気がする。
手の届かぬ一寸先の世界を体験する、
これこそ、夢心地の正体だったのだろう。
【日日是考日 2020/11/05 #023 】
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