見出し画像

目的地。

僕は一本道を歩いていた。
筈だった。
この道は、細く険しい獣道だった。
いつの間にか僕は国道の大きな道を外れていた。
歩く気力はまだまだある。
有り余る程に、体力も残っている。
只、歩く理由が思い出せなかった。
僕は家路に向かっている・・のだったっけ?。
それとも友人の家に呼ばれて、その帰り道だったろうか。
友人と久しぶりに喋って楽しかったのは、覚えてる。
友人が最後に言った言葉も覚えている。
「じゃあ、また近いうちにな」
その言葉を聞いたのは、いつの事だったっけ・・・。
あれからどれだけ時間が経ったのだろうか?
あの時は昨日のようにも感じるが、明日の出来事かも知れないようにも思える。
「ただいま」
僕は僕の住むアパートのドアを開けて、玄関に上がり、靴を脱いで部屋に入った。
誰も居ないのに、只僕のただいまの言葉だけが、そんなに広くもないのに、部屋に響いた。
僕はいつから人を避けるようになった。
頭に浮かぶのは、疑問ばかり。
誰に問いかける訳でもなく・・。
と、部屋のドアが開いた。
「あ、帰ってたんだ。友達どうだった?」
僕はまだ人嫌いにはなっていなかったようだ。
愛する人とまだ繋がっていた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?