キラキラキラー
僕は今、僕にも手に届きそうなアイドルに夢中だ。彼女は、真っ白な衣装を身に纏い、僕に笑顔を振りまいてくれる。
その笑顔の眩しい事限りなし。
仲間内では、誰推しかで言い争う事もしばしばあったりもする。
僕の推しの子は、笑顔が素敵でコロコロと声を挙げて笑う可愛らしい女の子だ。
そのくせ、アイドルオーラはちゃんと身に付けていて、手が届きそうで届かない、それも彼女たちの魅力でもある。
僕達は、風呂にも入らず、油でベタベタになった髪の毛を霧吹きのシャンプーで洗い流す。
別に風呂が嫌いなわけじゃない。
その証拠に、歯だって毎日磨いている。
彼女たちに逢う為に、パジャマだって毎日着替えている。
そう、彼女は白衣の天使、ナイチンゲールなのだ。彼女は僕達入院患者のアイドルなのだ。
彼女は僕らの名前を憶えてくれている。
彼女が優しくくすぐるように撫でるように、僕の名前を呼ぶ。それだけでもう僕は彼女を好きになってしまう。
そっと手が触れた時など、天にも昇る気持ちになれる。
だけど、彼女は手の届かない存在だ。
彼女の笑顔は、僕だけに向けられたものではないからだ。
だけど、僕は彼女の笑顔を毎日楽しみにしている。
足の一本でも折って、入院期間を伸ばそうかしら。
でも、そんな事したら彼女はきっと、僕の事を怒るだろうな。
だって彼女の仕事は、僕たちの病気を治すお仕事だから。だから、僕は退院しなければいけない。それが悲しい。