カレーは味噌汁である、サラダは漬物である ―食の比較文化的エッセイ―
私は、フランス留学中の20歳代、食の「コペルニクス的転回」を経験した。それまで、ただお腹が一杯になればいいとしか思っていなかった私が、ある深夜、自室で食べたカップヌードルのおかげで、以来、食べるものすべてがマンダラのように、あるいは交響曲のように、口の中で展開するようになった。ちょうど、音楽の世界で「絶対音感」があるように、私の舌はいつのまにか「絶対味覚」を身につけ、いかなる情報や刷り込みにも影響されることなく、食の中に、時として常識をくつがえすような経験・発見をしていった。