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週末を溶かすということ

社会人になってすぐの5月に、一人暮らしを始めた。

念願の、ひとりぐらし。

自分だけの王国。

こんな部屋にしたい、と長年構想を練って練って、ようやく形になった、大切な空間。

(部屋に対する想いは異常なので後日また書くとして)

でも、一人暮らしを始めてからも、毎週毎週、欠かさず実家に帰った。

一人暮らしの最寄駅から実家の最寄り駅は乗り換えなしで25分。全然遠くない。遠くないからって毎週帰るものではない。きっと普通は。

実家に帰るいちばんの理由は犬だった。

世界で最も愛していて、一緒に暮らし始めた小6の頃から、いつかいなくなってしまうことを想像して何度も何度も泣いた。

だからさいごに、きっと後悔しないように、溢れるほど愛情を注いできた。わたしなりに。

生きることに忙しくなって、一緒にいる時間が短くなった時期もあるけど、それでもやっぱりわたしにとって何よりも(文字どおり、何よりも)愛おしく、大切な存在だった。

心臓が弱っていたり、皮膚に癌が見つかったり、腎機能が一気に悪くなったり、この4年間で、たくさん苦しんで、それでもがんばって一生懸命に生きていた小さな小さな家族に会うために、わたしは毎週欠かさず、実家に帰っていた。

ごくたまに帰れない週もあったけど、2週連続で帰らないことはなかった。

わたしが来ない週末も、ベッドの上を探しにきてくれる、愛おしい犬。


社会人4年目の7月に、遠くへ行ってしまった。

実家に帰るいちばんの理由がなくなったあとも、なんとなくの使命感で、実家に帰ることはやめなかった。

土日は基本的にこう過ごす。

土曜日

9:00 起床 ベッドでゴロゴロ
10:30 ようやくベッドから降りて、ひととおり掃除を始める
12:00 昼ごはんを適当に食べる
13:00 昼寝をする
14:00 絵を描いたり粘土をこねたり趣味の時間
16:30 家を出る
17:00 実家到着、割とすぐにおばあちゃんの夜ご飯
19:00 実家でお風呂(週末だけ入れる湯船最高)
20:00 ドラマ消化(1シーズン15本程度見てた)
0:00 就寝

日曜日

10:00 起床 ベッドでゴロゴロ
11:00 ようやくベッドから降りて、お母さんの昼ごはん
12:00 ドラマ消化orネトフリで映画
15:00 昼寝
17:00 お風呂
18:00 おばあちゃんの夜ご飯
19:30 家を出る
20:00 一人暮らしの家に帰還、ゴロゴロ
23:00 日曜夜の絶望を抱きしめながら就寝

改めて見て、えぐい。

週末を溶かすとはこのこと。

でも全然物足りなさとかはなかった。だってもう染みついた当たり前の過ごし方だから。

家族は、わたしが帰るとみんな嬉しそうで、普段それぞれがそれぞれに持つ小さな不満をわたしにぶちまけて楽しそうに昇華して、空気があったかくて、ああここがわたしの帰る場所だなって思うことが多かった(もちろんそうじゃない日もある)。

犬ちゃんが生きていた、さいごの冬から夏にかけてはそんな和やかな雰囲気じゃなくて、みんな笑うことがまるで禁忌みたいに、苦くて辛い顔をしていることが多かったけど、それを支えないと、とか、平日はその空気の重みを共有できない分、ちゃんと土日はわたしも加わらないと、とか、本当にそんなおかしな使命感で、必死に実家に帰っていた日々が、今となっては懐かしい。そしてその過ごし方に、後悔はしていない。

ごく稀に土曜日友達と飲みに行くこともあったけど、そういう時は夜そのまま実家に帰って日曜日はやっぱりいつもどおりの時間を過ごしてた。

週末何してる?と聞かれると、困る。

だって何もしてないから。

でもそれでよかった。何もしないことに、罪悪感とかもなかった。

そんなルーティーンはこの前の2月くらいまで続いてた。

変わろう、と思ったのがちょうどその時で、ただその決心と実家に帰る帰らないは別につながっていなくて、それに多分そんな重要なことじゃなかったけど、でも、いざ、帰ることに義務感がなくなったとき、やっとわたしは前に進むことができたんだって思った。もちろんそれは全く悲しい意味じゃなくて。

帰ってきてって言われてた訳じゃない。

でも帰らないといけないって心のどこかでずっと思ってた。

実家に帰りすぎ(笑)って友達に言われることも多かった。

そうやって笑ってくれる方がありがたかった。

週末の過ごし方を、これからは自分で決めることができる。

少しずつ、自分は変われてる。

本当は先週過ごした完璧な週末について書きたかったけど、前段が長すぎたので、タイトルを変えてこのまま投稿します。

今週末はどうやって過ごそうかな。

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