口臭対策のコピー

なぜ、フッ素入り歯磨き粉に悪影響があると思われるのか?

”フッ素は体に良くない”という言葉に罠が仕掛けられている理由。

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前回の記事で”フッ素配合の歯磨きなどありますが実は身体にはよくないといわれているが、よくわからない”というコメントをいただきました。

私は、虫歯を予防する効果が明らかなので、歯磨き粉にはフッ素入りのものを使用しています。さらに、友人や仲のいい方にはフッ素入りの歯磨き粉を推奨します。

でも確かに、化学物質としてのフッ素には健康を害する側面もあるのです。

なぜ、そんなフクザツなことが起こるのか?

それを実際の科学や統計を使った報告から明らかにしていきます。


■フッ素を考えるときは3つに分けて考えよう

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まず、フッ素を考えるときに全部ごっちゃにして考えるのはやめた方が良いでしょう。私たちの周りにはさまざまなフッ素製品が販売・利用されていますが、その形態や濃度によって危険性は全く異なるものです。

水を尖った形に凍らせて人を刺せば、ヒトは死んでしまうでしょう。
水を大量に飲ませたら、体液バランスは崩壊し、ヒトは死んでしまいます
でも、ヒトは水を飲まなくては生きていけませんよね。

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IAEAの資料によると、ヒトの体(70kg)の中に含まれるフッ素の量は2.6g。フッ素も体を構成する立派な元素なんです。

何が有害で、どこからが有益なのか。

それを理解する必要があります。

■化学物質としてのフッ素

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化学物質としてのフッ素は危険性があります。注意して扱うべきです。私は絶対に口に入れません。

たとえば、フッ化水素は工業用に使われます。電線の電線被覆や絶縁材料、フライパン・眼鏡レンズのコーティングなどに使われるフッ素樹脂や、エアコンや冷蔵庫の冷媒として使われるフロン類の原料などになります。

フッ化水素には骨に蓄積して痛みを発生させるなどの毒性があるので、これは摂取してはいけません。過去にフッ化”水素”を間違って使用する事故が歯科で事故が起こったことが、フッ素に伴う誤解の一つとなっています。


歯磨きに利用されるフッ化”ナトリウム”は、フッ化水素とは異なります。

フッ化水素に比べて、フッ化ナトリウムは安全性が高く、多くの歯磨き粉に添加され、広く使われています。しかし、フッ化ナトリウムにも大量に摂れば毒性があります。

ラットの実験では、体重1キロあたり100mgのフッ化ナトリウムを食べると、半分のラットが死ぬというデータが得られています。

これをそのまま人間(60kg)の大きさで計算してみましょう。

・100mg  × 60kg = 6000mg

6000mgのフッ化ナトリウムを食べると、半分のヒト(60kg)が死んでしまうと計算できます。

したがって、フッ化ナトリウムを”大量に”摂るのは、確かに避けるべきです。


■歯磨きとしてのフッ素

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それでも、フッ素入り歯磨き粉を私は推奨します。


歯磨き粉に含まれるフッ素の量は?計算してみましょう。

・市販のフッ素濃度最高クラスの歯磨き=1450ppm
・歯科推奨量:0.5gを1回に使用したとします。
 (歯ブラシの半分くらい)
・すると、フッ素量は0.725mgとなります。

たった0.725mgでは致死量には全く届きません。

60kgの人間の半分を殺す量=6000mgの、わずか0.0001%です。

しかも、歯磨きの場合は口をすすぐので、はるかにこれよりも少ない量になると考えられます。

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とはいえ、わずかでも有害な可能性あるじゃん!と思われる方もいると思うので、人間を対象にした大規模研究をいくつか紹介します。

・998人を2年追跡した研究:有害イベントは0件。
・195人を1年追跡した研究:有害イベントは0件。味が悪いという人も

これだけの人数を1年~2年と比較的長くフォローしても、実際にフッ素入り歯磨きで歯にダメージが出たことを示す研究はないんですよね。


■メモ
全く別の研究では、”フッ化第一スズ”というタイプのフッ素では歯が白くなることがあったようなんですが、市販のフッ素入り歯磨き粉のうち、”フッ化第一スズ”を含む歯磨き粉は日本ではあまり見かけません。

商品の裏に”フッ化ナトリウム”と書いてあればセーフですので、商品選びはそこからはじめてみてはいかがでしょうか?


■フッ素を含む歯磨き粉には、明らかなメリットがある。

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1955-2014年に行われた96件のフッ素を含む歯磨き粉に関する優れたフッ素歯磨き粉研究をご紹介します。

フッ素を含む歯磨き粉には、統計的に優位に虫歯を抑制する効果が示されました。特に、1450-1500ppmのフッ素入り歯磨き粉には強い虫歯の抑制作用があることが示されています。

したがって、フッ素入り歯磨き粉を使って歯磨きをすることは、虫歯を減らすために非常に有効な手段であることは、ほぼ間違いありません。

歯磨きをする一番の理由は虫歯を減らすためだと思うので、私はフッ素入り歯磨き粉の使用を推奨しています。

■メモ
*乳児でも虫歯の予防効果が高いことが研究内では示されているのですが、体が小さく、フッ素症のリスクが大人よりは高いので、6歳以下については高濃度のフッ素入り歯磨き粉は使わないよう推奨されています。


■水道水としてのフッ素

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水道水にフッ素入れるのは、安全っぽいけど急ぐ必要はないかなぁ。というのが私の考えです。

フッ素入り水道水の一番のヤバそうな問題は、ダウン症との関連です。フッ素入り水道水を飲むとダウン症の確率が高くなるんじゃないか?という研究がいくつかされていることが問題なのです。

しかし、2001年にBMC Public Healthによって公開された、過去6件のダウン症×フッ素入り水道水の研究のレビューによると、ダウン症との関連はかなり弱いという結果です。

フッ化入り水道水をとったグループとそうでないグループを比較した研究はいずれも、ダウン症の確率を高めませんでした。

ダウン症の確率を高める!と結論していた研究は、フッ化入り水道水を飲んでいないグループを同時に測定しない、きわめて著者の希望的観測が含まれた研究だったのです。

さらに、ダウン症の子どもの虫歯予防に、あえてフッ素入り歯磨き粉を推奨するような研究もあります。あまりフッ素に過敏になりすぎる必要はないように思います。

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しかし、水道水にフッ素を入れるということは、歯磨きとは違って飲み込むことが前提なので、体に蓄積する可能性は確かに捨てきれません。

虫歯予防効果と、副作用のバランスを考えると、歯磨きにフッ素入りを使えばそれで充分。水道水にわざわざ入れる必要はないのかな?というのが私の立場です。

水道水は生活の中でどのくらい使用しているかわかりにくいものです。いつの間にかたくさんフッ素を摂取していた!という状況は望ましいものではありません。できるだけピュアな水を飲みたい気もしますし、水道水にわざわざ入れる必要性は感じません。


■各国の水道水にはフッ素が含まれている?

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「ヨーロッパでは水道水にフッ素を入れるのは禁止されている」
という内容が検索上位で上がってくるのですが、これは間違いです。

■フッ素を添加した水道水を摂取している人たち
アメリカ:2億4千万人以上が摂取
イギリス:人口の10%=600万人が摂取
アイルランド:人口の3/4が摂取
ブラジル:人口の2/3が摂取
ニュージーランド:政府推奨だが、一部地域で中止
カナダ:州により異なり、一部地域では3/4

一方でフランス、ドイツ、中国などでは使用されていません。


つまり、水道水へのフッ素の添加は国によってバラバラ。ヨーロッパでも導入している地域もあれば、そうでない地域もあるというのが正解です。

あそこの国では禁止されているから危険!という意見はそもそも理屈が通っていません。安全なのに禁止されているという可能性を全く否定できていないのです。


■フッ素入り水道水で経皮毒が引き起こされる?

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フッ素入り水道水による経皮毒については詳しくは不明です。

しかし、アメリカ人は肌が汚かったり、傷んでいたりするのでしょうか?
もしくは、他の水道水へのフッ化物添加国では?

私の知り合いのアメリカ人の中で、肌が痛むからミネラルウォーターで体を洗うんだよね...という人は聞いたことありませんが、中にはいるのでしょうか?この辺は情報あれば教えていただきたいところです。

おそらく、フッ化水素を高濃度で使用したことによる死亡例が、経皮毒への強い感情を生み出していると思うのですが、十分に薄めて使ったとき同じような効果が出るとは言えません。歯磨き粉に含まれるフッ素はフッ化ナトリウムがほとんど。極端に考えすぎる必要はありませんよ。


■まとめ

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・フッ素入り歯磨き粉は積極的に使って虫歯を防ごう!
 *6歳以下除く
・水道水へのフッ素添加は大丈夫と思われるが、急ぎ導入する必要性ナシ?
・経皮毒については不明。しかし、経験的には問題なし。


ふちあつこさん、コメントいただきありがとうございました!
今後も要望に合わせて記事を考えていこうと思います!



引用

Walsh, Tanya, et al. "Fluoride toothpastes of different concentrations for preventing dental caries." Cochrane Database of Systematic Reviews 3 (2019).

Whiting, Penny, Marian McDonagh, and Jos Kleijnen. "Association of Down's syndrome and water fluoride level: a systematic review of the evidence." BMC public health 1.1 (2001): 6.

Jones, David, and Joanna Morrison. "Preventative therapies and periodontal interventions for Down syndrome patients." Evidence-based dentistry 17.4 (2016): 101-102.

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