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「ウェディング映像の作り方」

ウェディング映像制作を生業にしたいと思うのなら、まず自分が進むべき方向の指針であるフィロソフィを確立する必要がある。自分のブランドや屋号を持って持続可能な事業を立ち上げたていきたいのなら、この点を曖昧にしてスタートしないほうがいい。浅く広くいきたい、もしくはただの副業としてアルバイト感覚でやりたいと思っているのならその限りではない。映像制作の世界でも特にニッチなこの分野で生き残り、少しでも頭角を現したい、上を目指して上達したいと思うのならば哲学を持つことは必要不可欠だと思う。ここで言う哲学とはつまりクリエイターの想い、すなわち「映像で何を表現し、何を伝えたいのか」。

感動させたいのか、笑わせたいのか、和ませたいのか、思い出させたいのか、共感させたいのか、実感させたいのか、覚悟させたいのか。

フィロソフィはものを作る上でのコアの部分であり、これが欠損していると主題がブレてしまい、中途半端で深みのない「どこかで見たようなもの」を撒き散らすだけになる。フィロソフィを考える上で、自分の作るものがどういったカタチで社会の役に立つのかを常に考え、この仕事の意義や立ち位置を探求するのがプロである。

我々が作るものは、クライアントがお金を出して買ってくれて初めてビジネスとして成り立つ。逆に言えば、クライアントがいなければ我々の仕事は成立たない。そんなことは当たり前だろと思うかもしれないが、忘れている人は結構多い。「そのフィロソフィはクライアントのニーズに合致し、かつ独創的であるのか?」クリエイターとして常に追い求める姿勢があるかないか。明確な答えが存在しない世界で、それは自分を導く指針となる。

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自分だけのフィロソフィがある程度クリアになってきたら、次はそれを具体的にどうやって表現していくのか(具現化のプロセス)を考える段階に入る。このプロセスを考える上で色々と実験し、実践して検証していくことが必要になる。ある程度の量をこなして現場で経験を積み重ねない限り、自分にとって腑に落ちるクリアなイメージには絞り込まれない。実験と検証を繰り返すうちに、プロセスの全体像が段々と見えてくるはずだ。

白いキャンバスにどんなメディアを使って自分のフィロソフィを具現化していくのか。写実主義(リアリティー)なのか、象徴主義(イメージ重視)なのか。ミニマリズム(情報を極限まで削る)なのか、ポップアート(大量生産、大量消費)なのか。方法論を考える上では自分の強みをよく理解し、時代のトレンドを読み解いていく能力も非常に大切になる。映像的センスがなくても、トレンドと上手く合致させていければこの業界で生き残るチャンスも大いにあると思っている。

そして、それらを通して作り上げたプロセス全体を付加価値にしていく。もちろん、最初から付加価値をつけることは難しい。「世にアイデアが出尽くしているから、もうこれ以上独自性なんか出せない」と思うかもしれないが、そういう人はまだまだ研究、実践、検証の作業が足りないと思われる。自分のプロセスをある程度構築してしまえば、あとは現場で実際にカメラを持って単純肉体労働をするだけ。

フィロソフィ(指針)とプロセス(工程)が出来上がったら、それらを実際に具体化した場合に最大限の効果を発揮できるよう可能な限り言語化する必要がある。将来一人ではできないような大量の仕事を効率的に行う場合、チームを作ることになるかもしれない。そこでフィロソフィ(指針)に共感できる仲間を集い、チームを作り上げていく準備をしなければならなくなる。もしチームを作った場合には必ずその方向性や戦略、ターゲットにするべきクライアントのニーズ、その市場のマーケティングまでも考えていかなければならない。成果物のクオリティというある意味狭い専門的な範疇だけしか考えていないと、チームとして効果的に結果を残していくことは難しいだろう。どんなカメラや機材を使っているのかなど戦術的な部分しか見ていないのであれば、将来的にこの業界でチームを作っていくことは難しいかもしれない。

ほとんどの人間は年齢を重ねるごとに体力が衰え、クリエイティビティは確実に劣化していく。そして、一人の人間で全ての作業をカバーすることも難しいのが現実。それぞれの強みを生かすことのできるチームを作り、斬新なアイデアと才能のある新しい人達を取り込まない限り、持続可能な未来は切り開けない。自分のノウハウや技術、知識なんてどうせすぐに陳腐化する。そんなものを誰にも教えず墓場まで持っていくのが賢いのか、チームの将来のために常にオープンにしていくのが賢明なのか。答えは存在しない。これからの時代は個人にしろチームにしろ柔軟性と多様性が必要であり、本質に沿って共有できる確固としたフィロソフィという指針がないと生き残るのが難しいかもしれない。

※この記事は2012年6月に書かれ、2021年11月に加筆したものです。

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