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敗金主義者の借金

敗金主義者は借金まみれである。家のローン、車のローン、奨学金の返済、日々の生活費もクレジット決済なのでローンであって、稼いできたって次から次へと借金の返済で消えてしまう。それで残ったマネーの少なさに愕然とするわけだ。貯金などできない悲しき敗金主義者。

 しかし、今回は、今私は借金まみれである事をなげいているのだ、と言いたいわけではない。主題はそこにはないのである。本題は、この高度貨幣社会、いわゆる資本主義社会において、世を回るマネーは概ね借金から生まれているという事実があり、マネーを持っているだけでそれは「誰かの借金」なのだから、必然的に誰もが(誰かの)借金まみれなのである、ということなのだ。(もちろん、比喩表現である)
 要するに、信用創造の話である。

 誰かが銀行に借金を申し込む。そこで、銀行が「数字」を打ち込む。数字が誰かの通帳に記載される。その数字がマネーなのは言うまでもない。銀行は数字を打ち込むだけでマネーを「創造」できる。そこでマネーは生まれ、そのマネーが市中に回っていくという仕組みだ。日本銀行券(最近デザインが変更される一万円とかの紙幣である)も、日本国政府の借金たる「国債」を引き受けることで、代わりに発行される借用書なわけで、手間はかかるが仕組みは同じようなものである。
 資本主義の本質とは「誰かが借金して金を生み出す」というところにある。その借金で投資をして、利益を得て、それでまた投資(設備投資など)をして、それで利益をさらに得て、という循環で経済のパイを増やしていくのが資本主義の(概ね健全な)姿であって、借金が前提になっているのである。もちろん、返すことが前提である(利子を上乗せするのはいうまでもない)。
 これが返せないほどの借金をして、ただ利潤目的で投資すること「投機」というわけで、これがいわゆるバブルを生み出すことになる。好景気時に借金して投資(株、土地、チューリップなんか)してすぐに売り払えばもちろん儲けが出る。誰もが儲けたいから誰もが投機する。投機先の価値が上がり必然的に価格が上がる(誰もが欲しがり値段を釣り上げるから。だって儲けられるのだから)。すると、投機目的の借金額が増える。
 ここで、銀行が貸し出さなければ、借金出来ないのだから買えない、だからバブルは防がれるわけだが、銀行も儲けたいから貸し出してしまう。だから投機に拍車がかかる。そう、リーマンショックである(マネーショート)。
 価格が上がり続けるが砂糖の山が高くなりすぎると重力に負けて崩れるように、何事にも限界が来る。物の価値や値段もそう。山の頂に登れるのはごく少数になるのは必然なのだから、それ以外の人は振り落とされるわけだ。そうなると、投機先の人気が下がり、価値が下がり、値段が下がる。山を持っていた人は買った値段よりもどんどん価値が下がる山に不安を覚える。だって、それは借金で買ったのだから。返済期限が迫る。だから売り出す。売り出すたびに価値が下がる、だから値段も下がる。すると、みんなが売り出す。さらに値段が下がる。それはすなわち、当初の借金額よりも手に入れられるマネーとマイナスの差が出来るわけだ。
 すると、返済期限が来たらどこかでその差額を埋めなくてはならない。小遣いで埋まる程度ならまだいいが、この段階でその程度で済むはずがない。家を手放す、財産を手放す、それもまだマシで、返せないなら破綻である。「自己破産」するしかなくなる。
そこまできて銀行は回収できない借金に愕然として(そう、遅すぎるのだ)、信用が失われる(ここで信用創造の「信用」登場である、もちろん比喩表現である)。信用がない銀行は潰れていく(なぜか潰れないし、守られる不思議を感じる諸君もおられるだろう。銀行だけではなく保険会社とか)。
 これがいわゆるバブル崩壊である。日本でも、リーマンショックでも、チューリップでも歴史的に何度も起きてきた(マネー現象は人為的なものだというならば、起こされてきた)ことである。

 さて、これは本題ではあるが、実は主題は別のところにあった。
 そう、多くの問題はこの簡単な歴史的事実が「マネーの教科書」例えばコンビニで売られている「お金の本」に書かれていないことなのだ。お金はどうやらこうやらこうして生まれた云々カンヌン、物々交換が大変だからうんぬんカンヌン、お金の要素は云々カンヌン、なるほどもっともらしいことが書かれているし、嘘ではないと思う。
 しかし、この資本主義、拝金主義、高度貨幣経済において、それは本質だろうか?もう21世紀だぜ?学校で教える、世間に普通に生きる人が知っているべきことが、それでいいのかな?
 これからを生きる子供達が知っておくべきことはそれでいいのだろうか?
 我が子が?
 そこを考えていきたいと、敗金主義者は思うのであった。
 今回はここまで。

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