安全すぎる城でだって泣くつまんない姫もいるだろうし

 
 
青い壁があるといいと思った、そんなに広くなくていいし、部屋もたくさんなくていいから、自分が信用できるものだけ置いておけたらいいと思った、
花なんか飾ってやんないぞと思ってたけど、赤い花を一輪くらいなら背負えるかもしれないと思った、きれいな花瓶なんかいらないから、ラムネの空き瓶や100円のシンプルなグラスでいいから。

小説の『キッチン』が好きだから、いつかひとりつめたいキッチンで眠りについてみたい、そういう、ちいさな夢を叶えている間だけ、だれかに依存したりしなくてすむような気がするのだ、
やっぱりまだ、どうぶつと暮らす気にはなれない。

 
 
こんなの大抵がただの理想で、現実なんてわかんないんだけど、とにかく、お城があった方がいい、
年始にたわむれに見た占いで何度も、帰る場所、住処について考える、見つける年だよと言われていたのをたまに思い出す、たぶん、物理的にも、精神的にものはなし、
生活、欲望の境目が曖昧になっていくほど、怠惰と諦観が壁に、床に、染み付いていくほど、疎かになる、身体まで手放したみたいに、放棄したくなる、居候の気分なんだよねって何度か冗談めかして言ったことがある、あながち冗談なんかじゃなかった、
夜ふかしするたびこの家に縫い付けられた身体を、間借りしている気分になる。
わたしみたいなやつは、きっとどこにいても、理想通りの家で寝転がっていても、時々そんな気分になったりするんだろうから、大して気に病むことでもないんだけど。

 
 
それでもシャンプーの香りが好きだとか、本棚を整理したとか、着ない服を捨てたとか、そういう密やかさを愛してしまうから、平凡(以下かもしれないけど)に、ぎりぎりを、暮らしている、
そんなものを愛するくらいならめちゃくちゃになってしまえと言うあいつが、同居人なのだとしたら、結婚でもして、家族になって、おだやかにふたりこの身体で生活をしてやりたい。






生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。