見出し画像

コロナ倒産した僕が紹介したい、ちょっと元気が出るフィリピンごはん【3話】

※この物語はコロナの影響を受けて都内6件目の倒産をした老舗風船やさんの実話をもとに再構成した物語です。1話目はこちら「コロナ倒産した僕が、破産を決意した日のこと

 風船の新規市場を求めて日本を発った僕は、フィリピンで現地との仲介をしてくれるエージェントを探していた。ツテを頼って出会ったのがイルカさんだった。

 イルカさんは、フィリピンの首都マニラにある、ポートボニファシオという新興開発地域にあるショッピングモールに、僕を連れて行ってくれた。

 巨大なショッピングモールはとてもおしゃれで、人の活気もすごかった。僕は、イルカさんがお勧めするフィリピン料理のレストランで一緒に食事をした。フィリピン料理の味付けはちょっと甘くて脂っこいのが多いんだけど、その中でも僕が好きなのはパイナップルに入ったチャーハンと、牛のテールスープだ。

イラスト10

 チャーハンは、パイナップルを器にしたものに入っていて、見た目はパイナップルそのものなんだ。蓋になってる頭を取ると、いい匂いのチャーハンがパイナップルの中にぎっしり詰まっている。

 同じ料理でもお皿に乗って出てくるのと、こうしてパイナップルに入ってるのとでは全然違う気持ちになる。パイナップルチャーハンには、宝箱を開けるみたいな喜びがあるんだ。人生は何が起こるか分からない。でもだからこそ魅力的だし、宝箱を開ける時みたいにいつもワクワクしてたいじゃないか。

 もう一つ、お勧めしたいのは牛のテールスープ。濃厚な塩味のスープで、野菜と肉がトロットロになるまで煮込まれている。ブラロって名前の料理なので、フィリピンに来たらぜひ試してみてください。身体の中に元気がいっぱい湧いてくると思うよ。

 他にフィリピンでおもしろかった調味料は、バナナケチャップ。戦争中のトマトがなかった時に、フィリピンでよく採れるバナナを使って作られたケチャップなんだ。フィリピンでは一般的で、ちょっと甘いんだよ。

 タイミングがよかったことに、イルカさんは子どもが生まれたばかりで、子ども向けのグッズ販売をやりたいと考えてたところだったんだ。

「子どもは人類の宝です。いっぱい遊んで、いっぱい楽しいものに触れて、世界の子どもたちが生まれてきてよかったって思える世界にしたいんです」

 世界のどこで生まれてきても、子どもたちが風船で遊べるくらいの余裕があるといい。僕は席を立ってイルカさんに手を差し出す。イルカさんも同じように立ち上がり、僕の手を両手でしっかりと握りしめた。

コロナ父さん

===

ここまで読んでいただきありがとうございます!
この物語は連載形式でつづいていくので、ぜひマガジンをフォローしていただけると嬉しいです。

1話目「コロナ倒産した僕が、破産を決意した日のこと」はこちらから。

このお話は、実在するゴム風船屋さんからお話を伺い、小説風に読みやすく脚色した物語です。

▼コロナ父さんご本人のnoteはこちらです。

父さんの次のチャレンジが気になったら、ぜひフォローとサポートをお願いします!

ここまで読んでくださってありがとうございます! スキしたりフォローしたり、シェアしてくれることが、とてもとても励みになっています!